今日はこの話題です。
小笠原諸島沖での中国漁船によるサンゴ密漁問題が俄かにクローズアップされてきた。当初、9月の中頃までは、小笠原諸島周辺に出没する中国漁船は20隻足らずだったのだけれど、その後急増。10月1日に40隻、30日には200隻を突破した。
珊瑚は、植物ではなくサンゴ虫という動物が集まったもの。サンゴ虫の固い骨格が積もり、海の中で樹の枝のように形成されて出来上がるのだけれど、その成長には100年以上要すると言われ、非常に貴重とされている。
珊瑚の歴史は地中海に始まる。紀元前から武器の装飾等に用いられ、イタリアでは地中海の珊瑚を使った工芸が発達し、妊婦の厄除けとして珍重されてきた。中でも、赤い珊瑚で角を象った「コルノ」という護符は厄除けとして現在でもよく好まれるそうだ。
日本では、奈良時代以来、シルクロードを渡ってきた地中海産珊瑚を「古渡り珊瑚」と呼んで輸入し、貴重な細工物として使用していた。
ところが近世になると、地中海珊瑚は乱獲により絶滅に近い状態に陥り代替品が求められるようになったのだけれど、19世紀、土佐沖で白珊瑚が発見され、次いで、土佐沖で赤珊瑚、桃色珊瑚が発見され、日本の開国後、イタリアの珊瑚商人が自ら買い付けに土佐に乗り込むようになった。
その後、1965年にミッドウェイ近海、1967年に南シナ海でそれぞれ珊瑚の大漁場が発見されたのだけれど、それ以降大漁場の発見は無く、1975年辺りをピークにその採取量は、年々減少している。
現在、世界的に珊瑚の水揚げが多いのは、日本近海で、土佐沖で良質の珊瑚が採れるとされる。
珊瑚は、超音波反射波の時間差を利用する魚群探知機で見つけられないため、水深100メートル位の海底に錘をつけたロープを降ろし、その先に網をつけて根こそぎ浚って採取する。
一度取れば、育つまでまた100年待たないといけないから、乱獲すると直ぐに絶滅の危機に瀕するのが珊瑚。
特に赤色の珊瑚は、水揚量が少ない上に大きな原木も少なく、とても貴重。日本産珊瑚で、深みのある赤珊瑚は、アメリカでは「オックスブラッド」、ヨーロッパでは「トサ」などの名称で呼ばれることもあり、最高ランクに位置づけられている。
赤珊瑚は、台湾や中国の富裕層に人気が高く、高級品は1グラム1万元(約18万円)以上と5年前の約5倍に高騰しているという。
福建省寧徳では、2012年5月以降、10以上の珊瑚の密漁団が摘発されているのだけれど、約38キロの赤サンゴが押収されたケースでは、評価額2240万元(約4億円)に登るケースもあったという。
これら密漁は、中国国内で、サンゴの採取が禁止されていることが原因となっているとの指摘もある。
中国の「環球時報」は、福建省の漁民の話として「20数年前から中国の漁民は日本海域でサンゴをとっていた」と報じ、習近平政権による腐敗撲滅運動の影響を受け、海鮮食材が高値で売れなくなり、魚をとるだけでは生計が成り立たないことを密漁の背景に挙げている。
中国政府は赤珊瑚をパンダと同じ国家1級重点保護動物に指定し、国内での漁や売買を禁じている。
11月3日、中国外務省は、「我々は一貫して漁民に法に基づき、海上の生産活動を行うよう要求し、赤珊瑚の違法漁獲を禁じている」と赤珊瑚の保護に積極的に取り組んでいる姿勢を強調しているけれど、そこはそれ、中国のこと、取り締まりと見せかけて、小笠原近海の海洋調査をしかけてくることあって考えられる。
東海大海洋学部の山田吉彦教授は、「数十隻ならまだしも、200隻以上に増えれば単なる密漁目的とは考えにくい。…当局、あるいは密漁組織によって、日本側がどこまで対応できるか、海上警備力を試す挑戦ではないか。よく見ると、漁船員のいない船もある。密漁しているのはごくわずかで、あとはオトリ船の可能性もある」、と、密漁漁船の中に中国軍の便衣船まで混じっているのではないかと指摘している。
また、評論家の宮崎正弘氏も「彼らは海上民兵と見るべきだ。中国漁船は遠洋航海用のレーダーを装備している。中国ではレーダーを装備した船はすべて海軍の管理下にある。…中国海軍は事実上、第1列島線を突破した。次は、第2列島線を突破し、西太平洋の覇権を握ろうと狙っている。その下準備の可能性が高い」と述べている。
これに対する日本側の警備体制は心許ない。
これまで小笠原に常駐する海保職員は4人しかおらず、配備されている船も5トンの小型ボート1隻だけ。中国漁船が多数確認された9月以降は、7000トンクラスの最大クラスの巡視船「しきしま」を小笠原に派遣、水産庁の取締船2隻とあわせ、小笠原と伊豆諸島で5隻程度で警戒にあたっている。
このように、海上保安庁は水産庁と連携して周辺海域での取り締まり態勢を強化してはいるのだけれど、200隻を超える船を相手に、たった5隻で対応できるのか。
11月4日、江渡防衛相は「一義的には海上保安庁と警察で対応することだ。今の状況で自衛隊がどうのこうのするという思いは一切ない。…その後、どうしてもということがあれば今後の検討課題になる」と述べるにとどめ、現時点では、自衛隊を投入する考えのないことを明らかにしているけれど、菅官房長官は5日の記者会見で、「大型巡視船や航空機を集中的に投入し、特別態勢をとっている。やりくりをして対応しているが非常に無理があることは事実だ」と述べ、は警戒態勢の強化のため平成26年度補正予算で
対応する考えを明らかにした。
こうした現状について、山田教授は「現状を国際世論に訴え、中国側にサンゴ密漁を止めさせるよう圧力をかけるべきだ」とし、宮崎氏は「中国政府は『悪い中国人がいる。直ちに取り締まる』と言うだろうが、それだけだろう。普通の国家なら、自国の領海で他国の漁船が違法操業をしていたら、銃撃を加えて、すべて拿捕する。ロシアも韓国もフィリピンも、世界中がそうだ。日本だけができない。この現実を国民が知ることが重要だ」と語っている。
哀しい現実だけれど、世界は性善説ではできていない。現実を直視した対応を取ることが必要だろう。
小笠原諸島沖での中国漁船によるサンゴ密漁問題が俄かにクローズアップされてきた。当初、9月の中頃までは、小笠原諸島周辺に出没する中国漁船は20隻足らずだったのだけれど、その後急増。10月1日に40隻、30日には200隻を突破した。
珊瑚は、植物ではなくサンゴ虫という動物が集まったもの。サンゴ虫の固い骨格が積もり、海の中で樹の枝のように形成されて出来上がるのだけれど、その成長には100年以上要すると言われ、非常に貴重とされている。
珊瑚の歴史は地中海に始まる。紀元前から武器の装飾等に用いられ、イタリアでは地中海の珊瑚を使った工芸が発達し、妊婦の厄除けとして珍重されてきた。中でも、赤い珊瑚で角を象った「コルノ」という護符は厄除けとして現在でもよく好まれるそうだ。
日本では、奈良時代以来、シルクロードを渡ってきた地中海産珊瑚を「古渡り珊瑚」と呼んで輸入し、貴重な細工物として使用していた。
ところが近世になると、地中海珊瑚は乱獲により絶滅に近い状態に陥り代替品が求められるようになったのだけれど、19世紀、土佐沖で白珊瑚が発見され、次いで、土佐沖で赤珊瑚、桃色珊瑚が発見され、日本の開国後、イタリアの珊瑚商人が自ら買い付けに土佐に乗り込むようになった。
その後、1965年にミッドウェイ近海、1967年に南シナ海でそれぞれ珊瑚の大漁場が発見されたのだけれど、それ以降大漁場の発見は無く、1975年辺りをピークにその採取量は、年々減少している。
現在、世界的に珊瑚の水揚げが多いのは、日本近海で、土佐沖で良質の珊瑚が採れるとされる。
珊瑚は、超音波反射波の時間差を利用する魚群探知機で見つけられないため、水深100メートル位の海底に錘をつけたロープを降ろし、その先に網をつけて根こそぎ浚って採取する。
一度取れば、育つまでまた100年待たないといけないから、乱獲すると直ぐに絶滅の危機に瀕するのが珊瑚。
特に赤色の珊瑚は、水揚量が少ない上に大きな原木も少なく、とても貴重。日本産珊瑚で、深みのある赤珊瑚は、アメリカでは「オックスブラッド」、ヨーロッパでは「トサ」などの名称で呼ばれることもあり、最高ランクに位置づけられている。
赤珊瑚は、台湾や中国の富裕層に人気が高く、高級品は1グラム1万元(約18万円)以上と5年前の約5倍に高騰しているという。
福建省寧徳では、2012年5月以降、10以上の珊瑚の密漁団が摘発されているのだけれど、約38キロの赤サンゴが押収されたケースでは、評価額2240万元(約4億円)に登るケースもあったという。
これら密漁は、中国国内で、サンゴの採取が禁止されていることが原因となっているとの指摘もある。
中国の「環球時報」は、福建省の漁民の話として「20数年前から中国の漁民は日本海域でサンゴをとっていた」と報じ、習近平政権による腐敗撲滅運動の影響を受け、海鮮食材が高値で売れなくなり、魚をとるだけでは生計が成り立たないことを密漁の背景に挙げている。
中国政府は赤珊瑚をパンダと同じ国家1級重点保護動物に指定し、国内での漁や売買を禁じている。
11月3日、中国外務省は、「我々は一貫して漁民に法に基づき、海上の生産活動を行うよう要求し、赤珊瑚の違法漁獲を禁じている」と赤珊瑚の保護に積極的に取り組んでいる姿勢を強調しているけれど、そこはそれ、中国のこと、取り締まりと見せかけて、小笠原近海の海洋調査をしかけてくることあって考えられる。
東海大海洋学部の山田吉彦教授は、「数十隻ならまだしも、200隻以上に増えれば単なる密漁目的とは考えにくい。…当局、あるいは密漁組織によって、日本側がどこまで対応できるか、海上警備力を試す挑戦ではないか。よく見ると、漁船員のいない船もある。密漁しているのはごくわずかで、あとはオトリ船の可能性もある」、と、密漁漁船の中に中国軍の便衣船まで混じっているのではないかと指摘している。
また、評論家の宮崎正弘氏も「彼らは海上民兵と見るべきだ。中国漁船は遠洋航海用のレーダーを装備している。中国ではレーダーを装備した船はすべて海軍の管理下にある。…中国海軍は事実上、第1列島線を突破した。次は、第2列島線を突破し、西太平洋の覇権を握ろうと狙っている。その下準備の可能性が高い」と述べている。
これに対する日本側の警備体制は心許ない。
これまで小笠原に常駐する海保職員は4人しかおらず、配備されている船も5トンの小型ボート1隻だけ。中国漁船が多数確認された9月以降は、7000トンクラスの最大クラスの巡視船「しきしま」を小笠原に派遣、水産庁の取締船2隻とあわせ、小笠原と伊豆諸島で5隻程度で警戒にあたっている。
このように、海上保安庁は水産庁と連携して周辺海域での取り締まり態勢を強化してはいるのだけれど、200隻を超える船を相手に、たった5隻で対応できるのか。
11月4日、江渡防衛相は「一義的には海上保安庁と警察で対応することだ。今の状況で自衛隊がどうのこうのするという思いは一切ない。…その後、どうしてもということがあれば今後の検討課題になる」と述べるにとどめ、現時点では、自衛隊を投入する考えのないことを明らかにしているけれど、菅官房長官は5日の記者会見で、「大型巡視船や航空機を集中的に投入し、特別態勢をとっている。やりくりをして対応しているが非常に無理があることは事実だ」と述べ、は警戒態勢の強化のため平成26年度補正予算で
対応する考えを明らかにした。
こうした現状について、山田教授は「現状を国際世論に訴え、中国側にサンゴ密漁を止めさせるよう圧力をかけるべきだ」とし、宮崎氏は「中国政府は『悪い中国人がいる。直ちに取り締まる』と言うだろうが、それだけだろう。普通の国家なら、自国の領海で他国の漁船が違法操業をしていたら、銃撃を加えて、すべて拿捕する。ロシアも韓国もフィリピンも、世界中がそうだ。日本だけができない。この現実を国民が知ることが重要だ」と語っている。
哀しい現実だけれど、世界は性善説ではできていない。現実を直視した対応を取ることが必要だろう。
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