今日はこのネタです。
11月14日、朝日新聞は臨時取締役会を開き、木村伊量社長が辞任し、後任の社長に渡辺雅隆取締が就任する人事などを内定した。
辞任する木村社長は取締役も辞任し、特別顧問として経営から退き、これまで危機管理の統括役を務めてきた持田周三常務取締役、杉浦信之取締役がそれぞれ取締役を辞任。更に慰安婦特集掲載や池上氏のコラムなどで危機管理の任にあった福地献一取締役は取締役を辞任して執行役員に降格とした。次期会長には飯田真也上席執行役員が就き、12月5日の臨時株主総会と臨時取締役会でこれら人事が正式に決まる。
新しく社長となる渡辺氏は管理・労務・WLB・コンプライアンス担当の取締役で、次期会長の飯田氏は、東京本社代表兼消費税対策統括・教育事業担当の上席執行役員であるところをみると、朝日は、信用失墜と消費増税絡みのダブルパンチによる売上激減を何とかしようとした人事であることが読み取れる。
まぁ、企業としてそうした人事を行うのは当たり前だとは思うけれど、木村社長辞任を含むこれらの対応で世間が納得するかどうかはまた別の話。
14日、朝日新聞は木村社長名で「改めて深くおわび申し上げます」という記事を掲載しているけれど、木村社長は辞任に際しての記者会見を行うわけでもなく、それっきり。
これで幕引きが出来たとでも思っているのか。
11月12日、朝日の「吉田調書」報道に関して、第三者機関である「報道と人権委員会(PRC)」がその見解をまとめ、朝日に通知している。
その全文はこちらに掲載されているけれど、「報道と人権委員会(PRC)」は、吉田調書報道とその後の朝日の対応について、それぞれ3点の問題点を指摘している。それは次のとおり。
○取材から紙面組みまでの過程に関する問題点と、このように問題点を指摘している。筆者がこの「報道と人権委員会(PRC)」の見解を読んで感じたことは、一言でいうと「独善」。
1.秘密保護を優先するあまり、吉田調書を読み込んだのは2人の取材記者にとどまり、社内でその内容が共有されることがなかった。
2.19日時点でも、見出しや記事内容について多くの疑義が社内の各方面から出されていた。しかし、これらの問題提起はほとんど取り上げられることなく終わった。
3.吉田調書を入手し検討した取材記者たちは福島原発事故の取材に関しては自負があり、2人だけでの仕事にこだわり、他からの意見を受け付けない姿勢がみられた。
○朝日新聞の事後対応についての問題点
1.読者の視点についての想像力の欠如と危機意識の希薄さがある。
2.速やかな事後対応が必要だったのに怠った。
3.記事掲載後も情報源の秘匿を重視するあまり、社内における開示、情報共有が遅れた。
以上の事後対応に関しては、上層部の責任が大きい。
通常の企業であれば、製品の製造から出荷までの各工程でミスがないか、都度チェックをかけ品質に問題がないよう細心の注意を払っているのが普通。それでも品質問題を起こすことがあるし、その際は素早く問題の製品を回収し、各所へのお詫びをして回る。
その視点からみると、朝日は記事を作る上で、取材記者2人だけで自分勝手に事を進め、それをチェック、修正できていない。多くの疑義が社内の各方面から出されたとしているけれど、それが取り上げられなかったということは、組織としてそうした体制が出来ていないということ。
また、事後対応にしても、動きが遅く、重大問題であるという意識に掛けている。まるで自分達のやり方に間違いないといわんばかり。
これについて、独立総合研究所の青山繁晴氏は、ラジオ番組で「吉田調書に関する誤報というのは、朝日新聞の根本的な体質から出ているんですよ。…取材記者2人でやったというけれども、記者の経験から言ったらキャップを通り、デスクを通り、部長を通り、そしてその編集局から次には整理本部というのがあって、見出しを付けたり、記事の重い軽いを判定するんですがそれを全部通るというのは、見事に朝日新聞の体質に沿う記事が作られているから紙面に出て、読者に入ってしまったわけで、このように秘密保持したかったから2人でやっていて、大きな間違いになりましたというのは、はっきり言うと開き直りであり、ごまかしであり、朝日新聞の今の解散総選挙に乗じて安倍政権を潰しながら、生き残ろうとする戦略と ガッチリ合っているものだと思います」と厳しく批判している。
確かに、キャップもデスクも部長も、整理本部をもスルーしたということは、今回の誤報をスクリーニングするだけの"価値観フィルター"を持っていないともいえるから、青山氏の「朝日の体質」という指摘は納得できるものがある。
朝日の自分の価値観が正しいという"独善"が、なぜ今まで続いていたかを考えてみると、それは本当の意味での市場原理、つまり"競争"に晒されていなかったという面があるのではないかと思う。
つい最近までマスコミ業界は同業他社から批判されることさえなかった。売上さえ立っていればそれでよかった。元毎日新聞記者の河内孝氏はその著書「次に来るメディアは何か」で、「最後の護送船団とも呼ばれてきたマスコミ業界は、言論機関であるという驕りと行政の保護によって、本来やるべき体質改善をなおざりにしてきた」と指摘している。
朝日、或はマスコミは、永らく"競争"に晒される経験がなかった。それが自身のイノベーションを妨げていたのではないかと思う。要するに時代の変化に取り残されたということ。
ところが今回の朝日の誤報(捏造)は、他紙が一斉に取り上げ批判した。マスコミがマスコミを批判するという"競争"状態が出現した。
朝日はまだ、その新しい流れに対応しきれていない。一般の目からみると、朝日の対応は如何にも遅い。あまりに遅すぎて、社長の辞任すらもはやインパクトにならない。
朝日は今回の社長辞任で幕引きができたと思っているかもしれないけれど、世間はそんなに甘くない。辞任までもたもたしている間に、「未だに謝罪しない朝日」というイメージが定着してしまった。先日の木村社長の会見で即座に辞任を発表していれば、まだ、けじめをつけたという印象を与えることができたかもしれないけれど、今となっては何もかも遅すぎる。
海外含めて、もっと大々的に誤報訂正をしないと、「朝日が反省した」と世間は思わない。次の社長は余程の大鉈を振るって、朝日が生まれ変わったと誰もが納得するだけのものを出さない限り、朝日についたイメージはそう簡単には変わらない。
コメント
コメント一覧 (4)
kotobukibune_bo
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代表する「組合新聞」なのだろう.
まともな感性を持つものは弾き出されるから
上層部でまともな者はいない.
勿論, 各々は自分は(組合の中では)正義だ
と考えているのだろうが, 「正義(まさよし)」君
「真理(まり)」さんと考えれば何と言うこともない.
テロ資金規制法案や特定秘密法案を厳しく
運用して追い詰めれば良い.
kotobukibune_bo
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