今日は当然ながらこの話題です。
11月18日、安倍総理は記者会見を開き、来年10月に予定していた消費増税の延期と解散総選挙を行うと表明した。
会見の全文はこちらにあるけれど、安倍総理は、消費増税は18ヶ月延期し、景気条項を外すこと、解散は11月21日と明言している。消費税引き上げの延期と解散については、既に報道されていたから、特に驚きというものはないのだけれど、景気条項を外したことと、一年半の期限を切ったことは非常に残念。
今日の安倍総理の発言で、2年半後の2017年4月の消費税10%への引き上げが確定した。あとはそれまでの間にどれだけ景気を回復されられるかということになるのだけれど、その前に安倍総理は国民に信を問うと"賭け"に出た。
安倍総理は、選挙で過半数を取れなければ、アベノミクスが否定されたことになるとして退陣すると述べた。だから、今度の選挙は、アベノミクスに対する信任選挙の意味合いを帯びることになる。
2012年に第二次安倍政権が誕生してから、筆者は、アベノミクスについて何度も記事をエントリーしてきた。今回の解散を機に確認の意味も込めて、それらをざっと読み返してみたのだけれど、いくつかポイントとなると思われるエントリーを以下に再掲(リンク)する。
2013年04月15日「黒田日銀総裁の金融緩和と通貨の信用について(アベノミクスで景気は回復するか 前編) 」改めて読み直してみると、2013年4月に黒田日銀総裁が"異次元"の金融緩和をやったとき、禁じ手だとか、制御できないインフレになるとか、猛烈な批判の声があった。当時はこんなことで大騒ぎしていたとは隔世の感がある。
2013年04月16日「アベノミクスの核心(アベノミクスで景気は回復するか 後編)」
2013年04月30日「国土強靭化計画を戦略の階層で分析する」
2013年09月07日「日本の命運を握るアベノミクス」
2013年09月27日「安倍総理のデフレ脱却構想」
2013年10月02日「安倍総理が消費増税8%を決断」
2013年10月23日「安倍総理の本心の見抜き方とアベノロイドミクス」
2014年04月02日「消費増税8%」
2014年07月04日「日常は安保が支えている」
まぁ、それはそうと、アベノミクスと消費増税の絡みで考えると、2013年10月2日のエントリー「安倍総理が消費増税8%を決断」と、同10月23日のエントリー「安倍総理の本心の見抜き方とアベノロイドミクス」での指摘が今の状況を説明しているように思う。
筆者は、「安倍総理が消費増税8%を決断」のエントリーで、次のように指摘した。
経済は企業側、サプライサイドだけ充実しても、それだけで良くなるわけではありません。需要もそれに応じて増えていかないと、お金が循環していかないからです。このように、去年の10月の段階で、消費増税によるデフレマインドが景気刺激策を追い越す懸念があると指摘したのだけれど、今現在の景況感は正にこのとおり。賃金上昇の動きはまだまだ鈍く、増税によるデフレマインドが、それを軽く飛び越してしまったように見える。
いくら、企業収益が上がるように企業減税をしたところで、それ以上に消費が落ち込んで、売れなくなってしまえば、企業は商品を、作るだけ、持っているだけで赤字になります。その赤字を減らそうとすると、供給を絞るようになりますから、結局元の木阿弥です。
ですから、それを避けるためには、消費側、すなわち家計側にむけた経済政策が消費を促進させるものでなくてはなりません。
≪中略≫
企業に対する「賃上げ促進税制」がうまく機能したとしても、それが効果となって目に見えてくるまでには、それなりに時間が必要になります。けれども、その一方で、消費増税は、最初からずっと100%消費者にのしかかっているのです。これは消費者の消費マインドを低下させ、デフレ圧力になります。
つまり、消費を促進させるための筈の今回の政策は、その効果が限定的になる可能性がある上に、効果がでてくるまでに長い時間が必要であるため、それまでの間に消費増税負担によるデフレマインドが、景気刺激策を追い越して進んでしまう懸念がある、ということです。
また、「安倍総理の本心の見抜き方とアベノロイドミクス」のエントリーでは、2014年4月からの消費税8%に対抗するために次の仕掛けをするのではないかと述べた。
1)戦略特区設置、規制緩和法案提出或いは施行実際、2014年も終わりに差し掛かる今振り返ってみると、当時筆者が予測したこれら"仕掛け"を安倍政権は殆ど実施した。
2)投資減税・復興減税(場合によっては法人減税も)実施
3)年金の買い上げによる株価押し上げオペレーション(プライス・ライズ・オペレーション?)
4)日銀追加金融緩和、円安誘導
筆者はこのエントリーでこれら"仕掛け"について次のように述べた。
無理矢理に経済指標を持ち上げて景気回復しているかのように見せるのは、自律的な経済回復ではなく、人為的、人造的な景気回復というべきだと思う。人間そっくりに見えて、実は人造のアンドロイドのような。と、この時は、人為的に景気が良くなったように見せかけても駄目だと述べたけれど、現実はその良くなったように見せかけることすらできないほど悪化した。その意味では、今回の安倍総理の消費増税延期の決断は、このエントリーの最後で述べた「嘘を本当にするための決断を迫られた」ことに当たるのかもしれない。
仮に、このやり方で、来年の消費増税以降も景気が落ち込まないように見えたとしても、それは造られたアベノミクス、いわば「安倍のロイド・ミクス」とでもいうべきもので、本物のアベノミクスではない。やはり景気が自律回復してこそのデフレ脱却でないといけない。
確かに、「安倍のロイド・ミクス」でも、国民のマインドが好転して、消費が活発になれば、デフレ脱却の目があるかもしれないけれど、自律回復でない以上、政府が手を緩めれば、たちまち経済指標は暗転する。そこに2015年の10%への消費増税が控えているとなると、一体、どれほどの「安倍のロイド・ミクス」をやらなければならないのか。
もしかしたら、その資金さえも海外からの投資で賄おうとしているのかもしれないけれど、儲からなければ外資とて撤退する。やはり、最終的には国内需要を喚起して、消費を回復させる本当のアベノミクスでなくちゃいけない。
果たして、「安倍のロイド・ミクス」に"嘘をつく機能"があるかどうかは分からない。だけど、嘘が本当になるのは、普通では起こり得ない。
アベノミクスを成功させるためには「勝つまでやる」しかない。安倍総理はどこかの段階で、嘘を本当にするための決断を迫られることになるかもしれない。
11月18日、安倍総理は日経新聞のインタビューで、法人減税を行うが企業側も賃金引上げを行ってほしいと発言しているけれど、これは、「安倍総理が消費増税8%を決断」のエントリーで指摘したとおり、効果が出るまでに時間がかかる政策であり、あまり即効性は期待できないし、消費増税を延期した一年半でどこまで実現できるかどうかも分からない。
一方、個人消費について、安倍総理は、あらゆる政策を駆使して応援するとも述べている。だけど、この発言を見る限り、まだ具体策にまで絞り込めていないように思われる。
一部には、政府は、個人消費を刺激する施策の目玉として、地方自治体が配る地域商品券の財源の2割程度を国が補助する仕組みを検討するなどという報道もされているけれど、そんな使ったら終わり的なものよりも、恒久的に家計の負担感を減らす政策のほうがいい。
その意味では、今回の増税延期は、最悪の事態を回避するものではあるとは思うけれど、更なるテコ入れは必須。原発再稼働を含め、デマンドサイド、需要側にもっと注力した政策を出さないとアベノミクスの成功は危ういものにならないかと危惧している。
コメント
コメント一覧 (3)
ことから見ると40点くらいではないか. それよりは,
安倍晋三がグローバリストで財政均衡主義者であることが
明白になったことの国民への影響の方が大きい気がする.
安倍さんは国民に対して上から目線で考えていると言うことだ.
実際, 言葉こそ軟らかいが, 政府の借金を少なくする
ために国民に我慢や競争を強いるのは本末転倒だろう.
それも, 政界バランスをとって長期政権を目指すためらしい.
長期政権を目指す理由は憲法改正であるらしいが,
グローバリストが目指す憲法改正はおよそ信ずるに値しない.
日本的には, 駄目な権力者の一人だ.
kotobukibune_bo
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ただの延命策、消費増税1年半後確定
最悪の形ですね
経済無策を露呈させたのだろう
kotobukibune_bo
t
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大企業に入れない奴隷階級は介護でもしてろ
海外で暮らしたこともない低学歴低納税乙
kotobukibune_bo
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