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11月18日、民主党の枝野幹事長は都内で記者団の取材に答え、安倍総理が増税延期の表明の際、景気条項を削除すると述べた点について、「3年先の状況は誰にも分からない。景気条項を外すことは無責任だ。…消費税が争点であるとすればそこが大きな違いだ」と批判した。

増税延期と解散とアベノミクスの通信簿」のエントリーで、筆者も景気条項を外したのは残念と述べた。これが外された時点で1年半後の増税は確定したということになるから、結局、財務省の大勝利ではないかと思っていたのだけれど、当の財務省はそう思ってはいないようだ。

今回の増税延期について、財務省は延期させじとあらゆるところに工作をしていた。官邸には、再増税を延期すれば、安倍政権の看板政策である子育て支援策が不可能になる、と訴え、自民党の若手議員や大学教授、果ては雑誌編集者にまで財政健全化と消費税再増税の必要性を説いて回っていた。

こちらのブログでは、その財務省の工作の凄まじさを紹介しているけれど、もう手当り次第に工作している。

そしてトドメが、10月31日の日銀追加金融緩和。更に、御丁寧にも黒田日銀総裁の「2015年10月に予定される消費税率10%への引き上げを前提に実施した」との発言つき。

財務省には「市場は再増税を評価している。安倍首相も無視はできない」と楽観ムードすら漂っていたという。だけど、蓋を開けてみれば、増税延期。

財務省のある幹部は「完敗だ…」と漏らしたという。

だけど、完敗とは「完全なる敗北」という意味。増税延期にはなったけれど、「景気条項」の撤廃をさせているから、完全なる敗北とは程遠い。寧ろ、財務省の「優勢勝ち」とか「大勝利」と見る人だっている。作家の三橋貴明氏は「今度は景気条項なしで『増税確定』なわけですから、財務省は、再び勝利しました」と自身のブログで述べている。

どうやら今回の景気条項撤廃は、麻生財務大臣が安倍総理に働き掛けたのだそうだ。安倍総理と麻生財務相は、安倍総理の増税延期表明前日の17日に、オーストラリアから帰国する政府専用機内で会談したのだけれど、その時、安倍総理が再増税の延期方針を説明したのに対して、麻生財務相は、市場に与える影響を懸念し、景気条項の撤廃を主張したという。

景気条項を撤廃することのリスクを麻生財務相が知らない訳がないと思うけれど、もしかしたら、これも、麻生氏の"腹芸"だったのかもしれない。その理由は、財務省を完全に敵対させないため。

「囲師には必ず闕き、窮寇には迫ることなかれ」孫子の兵法に「囲師必闕」というのがある。

これは、敵を隘路に追いつめたら必ず一カ所退き口を空けるべきというもの。四方八方を完全に包囲してしまうと、追いつめられた敵兵が死にものぐるいで反撃し、却って味方の損害を大きくしてしまうことを避けるための兵法。

クライマックスを迎える大河ドラマ「軍師官兵衛」で御馴染みの黒田官兵衛が、播磨の佐用城攻めや、明智方との山崎の勝龍寺城攻めでこの「囲師必闕」を用い、敵の兵を逃がしながら落城させている。

今回の増税延期を巡る官邸と財務省のバトルも、仮に、増税延期に加え景気条項も残すことにしてしまうと、財務省の必死の"ご説明"攻勢は全く効果がなかったことになる。事によると財務省がそれを逆恨みしてサポタージュするかもしれない。

それよりは、景気条項という一か所をわざと空けて、それを撤廃することで、財務省の顔を立ててやり、完全に敵に回さないように配慮したのではないかとさえ。

麻生財務相は財務相就任以来、何かと財務省の肩を持つ発言をしていて、一部からは"取り込まれた"のではないか、という声もあるのだけれど、これまでの麻生氏の発言と考えあわせると、筆者には"腹芸"的に財務省の代弁役を演じているだけのように見える。

実際、いつも財務省側の発言をしているようで、今回の消費増税延期を飲み、法人税減税だってやっている。100%財務省のいいなりになっている訳じゃない。むしろ全てを分かった上で、財務省の代弁をして、官邸とのパイプ役になっているのではないかと見る。財務省に操られていると見せかけながら、逆に財務省を掌の上で転がしているというのはちと言い過ぎか。

一方、安倍総理もまた、それを承知の上で景気条項撤廃発言をした可能性もある。

というのも、安倍総理は増税延期会見の後、JNNの「ニュース23」に出演し、「リーマンショック、世界的な大経済緊縮状況、大変な天変地異、国会で議論して法律を出してやることになります」と、不測の事態が起これば、法律を改正して再び増税を延期することもあり得ると示唆する発言をしている。

形の上では、景気条項を撤廃しているけれど、実際にその通りにするかどうかは状況による、と含みを持たせた。つまり、財務省は法律に景気条項がないことを盾に、増税を主張する根拠を与えつつ、国民にはイザとなったら、法律を上書きするだけだ、と期待感を持たせている。

ぶっちゃけ、どっちにもいけるようにしたということ。何ともはや、政治家的というか、狸というか。中々喰えないところがある。

1年半後どうなるかは誰にも分からないけれど、最後の勝者になるのは一体だれなのか。願わくば、それが国民であり、国民の代表たる政治家であってほしいもの。

コメント

 コメント一覧 (2)

    • 1. opera
    • 2014年11月21日 14:02
    •  厄介なことになったなぁ、というのが率直な印象です。経済問題を中心に政策的に考える限り、三橋氏が言うように、安倍政権も自民党も素直には指示できないという状況だからです。
       解散の理由については、第二次安倍政権は大きな政策転換を行なう場合にはまず人事が先行するという特徴がある点を考えると、安倍首相が究極の人事である解散総選挙を決断した背景は、財務省が敷いた路線を卓袱台返しするためという渡邉哲也氏の解説は、それなりに説得力があります。
       しかし、もう一歩踏み込んで考えると、逆になぜそこまで追い込まれてしまったのかという疑問も生じます。私自身、総理が適切に権限を行使すれば、解散せずとも消費税延期・凍結は充分に可能だろうと考えていましたから。
       そこで思い浮かぶのは、外圧とマスコミ関連は別にして、政治システム上の二つの欠陥です。
       一つは、経済財政諮問会議や各種審議会を多用する政策決定システムです。
       本来の諮問会議や審議会は、政策や基本方針決定後にその妥当性を専門家によって検証するために設けられます。ところが、小泉政権以降、実質的に内閣の政策決定に直接関わるようになってしまいました。そこには財務官僚や民間議員も参加しており、政党や議会の頭越しに政策が決定される状況になっています。
       こうした運用は、憲法違反の疑い(少なくとも令外の官)があり、本来のあり方に戻すか、さもなければ廃止すべきでしょう。必要以上に族議員(政党)を叩いた弊害だろうと思います。
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    • 2. opera
    • 2014年11月21日 14:04
    •  二つ目は、内閣府や財務省で使用されている経済モデルや経済指標を、小泉政権以前のものに戻すか、新しいモデル・指標を導入すべきだということです。具体的な内容は以下の論説に譲りますが、誤ったモデル・指標からは正しい予測も政策も出て来ないことは自明のことだからです。
       以上の二点が是正されない限り、自民党内の自浄作用も余り期待できませんし、まともな経済政策を行なうには政権周辺スタッフの大幅な入れ替えも必要でしょう。
       したがって、外交・安全保障分野では一定の基礎が固まった点も考慮しつつ、現時点では自民党以外の保守系の野党の動向も注目しています。
      ◇【宍戸駿太郎】 消費税10%値上げは延期せよ ―津波は第2波以後が怖い!
      http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/10/25/shishido-4/
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