今日はこの話題を極々簡単に…



11月27日、テレビ東京の高橋雄一社長が定例記者会見で、自民党から選挙報道の中立公正を求める文書が届いたことを明らかにした。

「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」と題したこの文書は、11月20日付で在京のテレビキー局に送付された。

文書は萩生田光一・筆頭副幹事長と、福井照・報道局長の連名で、次の要望を行っている。

・出演者の発言回数及び時間等については公平を期していただきたいこと
・ゲスト出演者の選定についても公平中立、公正を期していただきたいこと
・テーマについて特定の立場から特定政党出演者への意見の集中などがないよう、公平中立、公正を期していただきたいこと
・街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう、公平中立、公正を期していただきたいこと

そして、「過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、それを事実として認めて誇り、大きな社会問題となった事例も現実にあったところです」との一文も添えられている。

放送の中立について、よく取り沙汰される放送法第四条には次のように定められている。
(国内放送等の放送番組の編集等)

第四条  放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
二  政治的に公平であること。
三  報道は事実をまげないですること。
四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

2  放送事業者は、テレビジョン放送による国内放送等の放送番組の編集に当たつては、静止し、又は移動する事物の瞬間的影像を視覚障害者に対して説明するための音声その他の音響を聴くことができる放送番組及び音声その他の音響を聴覚障害者に対して説明するための文字又は図形を見ることができる放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならない。
このように、今回の要望文書の内容そのものは、ひたすら「公正中立」を求めるものであり、放送法と照らしても何らおかしいところはない。ただ、何度も「公正中立」を謳っている辺り、よほどテレビ局の選挙報道が「公正中立」ではない、と捉えていると思われるし、その具体的な方法にまで踏み込んでいるところを見ると、相当神経を尖らせていることが伺える。

ただ、この手の文章は、これまでの選挙でも、与野党問わず届いていたらしい。テレビ東京の高橋社長は先の記者会見で「公示前に届くのは珍しい。こうした要請はこれまでの選挙でもいろんな党から来ている。…これをもらったから改めて何かに気をつけろというものとは受け止めていない」と述べている。

マスコミ各紙の取材に対し、NHK以外の各民放は文書が届いたことを認め、公平中立な報道を心がけるとしている。

ある民放幹部は「ここまで細かい指示を受けた記憶はない」と漏らしたそうだけれど、ここまで細かい指示を受けてしまうくらい「公正中立」ではないと思われていることを少しは恥じたほうがいい。それだけ信用されてないということだから。

この文書が効いたのか、テレビ朝日系の討論番組「朝まで生テレビ!」で、 パネリストとして出演予定だった評論家の荻上チキさんが「質問が一つの党に偏り公平性を担保できなくなる恐れがある」などとしてテレ朝側から出演を取り消され、また、タレントの小島慶子さんの出演も取りやめになっており、パネリストは各党議員のみとなったようだ。

くだんの文書では「ゲスト出演者は公平中立、公正な選定」をするようにとしか書いていない。にも関わらず、ゲスト評論家そのものの出演を取りやめるのは、誰を出しても中立ではないとクレームされることを恐れたか、もっと穿った見方をすれば、最初から"偏った"人選をしていたところ、いきなり"中立"な人選をと、いわれて慌てて他の評論家の出演オファーをしようとしたものの都合がつかず、評論家の出演そのものを見送ることになったと考えることだってできる。

一部からは、この文書について「言論封殺」だとの声も上がっているようだけれど、この要望そのものは、あくまでも放送法に基づいたものであり、放送以外の一般紙については、何の要望もしていない。

今回の文書については、各紙が報道している。その見出しだけ列挙すると次のとおり。
J-CAST:民放キー局に選挙報道の中立公正を要請 自民党と野党
読売 :民放へ選挙報道の中立公正求める文書…与野党
朝日 :選挙報道「公正に」 自民、テレビ各社に要望文書
毎日 :衆院選:自民 テレビ局の選挙報道で細かく公平性要請
日刊ゲンダイ:選挙報道に露骨な注文…安倍自民党がテレビ局に“圧力文書”
テレビ東京の高橋社長は、放送に中立を求める文書は、自民からだけでなく他の野党からも来ていて、今回以前の選挙でも同じように要望されていたと述べているけれど、自民だけでなく野党も同様に要望していることを見出しで分かるようにしているのは、J-CASTと読売だけで、朝日、毎日、日刊ゲンダイは、自民としか書いてない。

だから、見出ししか見なければ、あたかも自民だけが「言論封殺」をしているかのように受け止められてしまう危険がある。これだって、偏向といえば偏向報道だろう。

だけど、一般紙に対して何も要求していないということは、あくまでも「放送法」の範囲内に基づいた要望であり、一線を越えたわけじゃない。

テレビ朝日は「朝まで生テレビ!」へのゲスト評論家の出演を取りやめたけれど、朝日新聞のほうは「自民、テレビ各社に要望文書」と見出しに"自民"しか出さなかった。

同じ朝日系列でも、テレビと新聞とで対応が違ってる。その意味では、朝日"新聞"は、何の圧力も感じていないということでもあるし、毎日やゲンダイのように自民を批判する自由も保障されている。

まぁ、出演者の選定から発言回数から時間から、ここまで細かく要望するのはちょっとどうかとも思うけれど、それだけ偏向していると思われているということ。

これに反論したいなら、単に「言論弾圧だ」と騒ぐのではなくて、きちんと人選を行ったうえで、誰もが唸るような"討論番組"を放送し、ぐうの音も出さないようにしてやればいいだけのこと。

視聴者だってバカじゃない。偏っているか中立かどうかくらい見抜く目は持っている。もしもテレビの番組制作側が「世論を誘導してやろう」なんて考えを持っているのなら、そうした考えを捨てて、「世論に判断を委ねる」というスタンスで番組製作するだけでも大分変ってくるだろう。

コメント

 コメント一覧 (6)

    • 1. almanos
    • 2014年11月29日 10:54
    • 自分らの会社が「公正中立」を掲げている事をきれいに忘れているんでしょうねぇ。指摘してみたら火病になったりして。まあ、いっそのこと選挙中の報道については「iso2600」に照らし合わせて変なのは即調査要求となれば反日して仕事干されるくらいならとなるでしょう。まあ、社是通りにやんなさいよと言われたら朝日以外はまあ従うでしょうね。あそこは反日止めると死ぬでしょうから。まあ、今回の選挙期間中にテロ関連三法も特定秘密保護法も施行されてしまう。選挙期間中に北朝鮮とかとの関係が理由で口座止められて選挙所では無くなってしまう野党とか与党の反日議員さんが何人出てくる事やら。一番笑える可能性は「朝日新聞の口座が北朝鮮との関係をアメリカから指摘されて全て凍結される」事がありそうって事でしょうね。口座凍結だと金が止まるから「廃刊して清算」以外にない。もっとも、地方紙も幾つくらい同じ事になるのか? と思いますが。
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    • 2. ちび・むぎ・みみ・はな
    • 2014年11月29日 13:03
    • 日本が抱える問題は全てマスコミが起こすか, 悪化させている.
      特に消費税の問題は選挙後の安倍政権存続の問題.
      従って, マスコミの暴走をどうやって防ぐかが第一の課題になる.
      本来は自民党自身の広報能力を高めることが重要なのだろうが
      ないものは仕方がない. 今度は政権も本気なのだろう.
      ずるい者達はそこら辺に敏感だ.
      しかし, 自民党の広報能力の貧弱さは何とかせい!
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    • 3. sdi
    • 2014年11月29日 13:05
    • >自民だけでなく野党も同様に要望していることを見出しで分かるようにしているのは、J-CASTと読売だけで、朝日、毎日、日刊ゲンダイは、自民としか書いてない。
      こういうことをやってるから、消費者からの信用を無くして行くんですけどね。
      まあ、彼らは自分たちの最大顧客の全共闘世代の連中のご機嫌をとることしか考えていない可能性大ですね。
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    • 4. 国家権力とバランスをとる権力監視報道こそ公平・中立
    • 2014年11月29日 23:43
    • 民主国家における公平・中立とは何かという問題だ。民主国家であっても、強大な国家権力を握る政権与党は圧倒的に優位にある。権力者の多くは権力を維持しようとする。権力を悪用して権力維持を図ろうとの誘惑にも駆られる。それを監視するのが民主国家の報道機関の使命だ。したがって民主国家において公平・中立を保つには、強大な国家権力とバランスをとるべく、報道機関は厳しく権力のチェックをしなければならない。形式的「公平・中立」の名によって権力チェックを遠慮することがあってはならない。権力への遠慮は、結局は優位にある権力を利することであり、真の公平・中立に反することになる。ここまで述べれば、今回の自民党の「公平・中立」要望は政権与党の既得権擁護の方便でしかないことが明らかであろう。野党の「公平・中立」要望とはまるで意味が違う。形式的「公平・中立」の名のもとに政権与党を利する報道や編集などすべきでない。それは民主国家の真の公平・中立に反する愚行になる。もともと、政権与党は常に国民への発信の機会を与えられている。野党に与えられる発信の機会とは雲泥の差がある。その不公平は既得権としてほおかぶりし、選挙のときの形式的「公平・中立」を求めるなど普段の不公平の固定化であり卑怯ですらある。報道機関は強大な国家権力を握る政権与党の圧倒的優位性を認識し、それとバランスをとるべく政権与党に厳しい報道姿勢を貫くべきである。それが真の公平・中立である。安倍自民党には、日本の報道機関は圧力に屈して民主国家の公平・中立を捨てる腰抜けではないことを見せつけるべきである。
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    • 5. 俊太郎
    • 2014年11月30日 01:58
    • 民主国家における報道機関、特に電波を使用する場合の公平・中立とは結局のところどこにも与せず批判せずということに収斂するのではないか。批判や擁護或いは論評は活字でするべきなのである。日本の放送法や日本で所謂言論の自由を論ずる際の精神とはまさにそこにあるのである。
      今から25年乃至30年以上昔のNHKはまさしくそういう立場で報道していたものだが(それ故面白みに欠けるという批判は常にあった)いつの頃からかおそらくNHKにあっては磯村キャスターの退職後、民放にあってはアナウンサーではなくキャスターが報道番組の表に出始めてから各局なりの色を出そうとして様々な立場から批判や論評を加えるようになったのではないか。
      電波媒体に求められるのは速報性と正確性と広範性であり正確性の担保をするのが映像なわけで、そこに手を加えたりある一定の批判や論評・見解・加工を加えてはならないはずなのである。
      今更指摘するまでもなくそういう原則を「言論の自由」を言い訳にして好き勝手に踏みにじってきたのが昨今のTV業界であり特に朝日とフジがひどかったのは誰の目にも明らかだろう。
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    • 6. 自民党は総務大臣ポストを手放してから公平中立を語れ
    • 2014年12月09日 23:18
    • 自民党は総務大臣ポストを握っている。総務大臣は放送局免許の許認可権を持っている。つまり、自民党は放送局と対等の立場でなく優位な立場にある。その自民党がテレビ局に公平・中立、公正を要望することが、公平・中立、公正な要望と言えるだろうか。テレビ局が圧力と受け止めるのは自然であろう。自民党が「そんなつもりはない」と言っても通らない。「李下に冠を正さず」の格言を知らぬはずがなかろう。人に疑われるような行動はするなという戒めである。自民党が純粋に公平・中立、公正を要望するなら、総務大臣ポストを公平・中立、公正な第三者に渡すのが先決であろう。その特権を握ったままでする「公平・中立、公正」の要望など、それに名を借りた圧力でしかない。自民党が真にテレビ局に公平・中立、公正を要望したいなら、安倍首相が自分の思想的盟友ばかりをNHK経営委員に送りこむ人選をしたとき拒否すべきであった。なぜそのとき、「公平・中立、公正な人選をし直せ」と安倍首相に迫らなかったのか。ダブルスタンダードもいいとこではないか。なお、公平・中立、公正を語る場合、もっと重要な問題がある。それは選挙制度と政党助成金配分だ。小選挙制は4割弱程度の比例得票率の自民党が絶対多数の議席を得て公平・中立、公正に反する。また政党助成金配分も議席数が得票率以上に多い自民党に過剰配分され、公平・中立、公正に反する。企業・団体献金も、政党助成金導入5年後に廃止の約束が破られ、自民党は二重取りしている。自民党は、公正を実践してから公正を語れ。
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