昨日のエントリーの続きです。



慰安婦問題に関するマイケル・ヨン氏の主張がネットのあちこちで取り上げられている。今日辺りになって、昨日紹介したケント・ギルバード氏による翻訳文もぽつぽつ紹介されている。

どうやらこのマイケル・ヨン氏の主張は韓国側にも伝わったらしく、こちらでは、ヨン氏の主張に対する韓国のネットユーザーの反応を伝えている。その中のコメント見ると、不思議なことにヨン氏の主張の内容に対する反論は全くと言っていいほどなく、日本がロビー活動したせいだ、とか、あんなアメリカ人が増えているのが問題だ、とかそんなのばかり。ただ悪口を言われていると激昂するばかりで、その主張を冷静に受け止めて、反論するという様子が見られない。

折角ヨン氏がわざわざ「なかなか晴れない疑問(A vexing question)」と題して問い掛けているのに、それに全く答える気がないのでは、議論もなにも有ったものではない。

そんな中、外務省がアメリカの公立高校向けの世界史教科書に従軍慰安婦問題について誤った記述があるとして、出版社に訂正を申し入れていることが明らかになった。

問題の教科書は、アメリカ大手教育出版社「マグロウヒル」が出版し、現在、カリフォルニア州ロサンゼルス市と近隣の公立高等学校で使用されている『伝統と交流』。その中の、先の大戦を扱った章では「日本軍は14~20歳の約20万人の女性を慰安所で働かせるために強制的に募集、徴用した」とか「逃げようとして殺害された慰安婦もいた」などと、強制連行があったかのように記述されるのみならず「日本軍は慰安婦を天皇からの贈り物として軍隊にささげた」などと真っ赤な嘘まである。

この外務省による訂正申し入れは、11月3日に産経新聞が報じたことを受けたもので、外務省は、在米大使館、全総領事館を通じてアメリカ公立高での使用実態について調査を開始。7日に、在米公館を介して、マグロウヒル社に「慰安婦と日本海呼称問題で重大な事実誤認や日本政府の立場と相いれない記述がある」として記述内容是正の申し入れとなった。訂正申し入れについては、11月18日に岸田外相が記者会見で明らかにしている。

今のところ、出版社サイドは「日本政府の問題意識は共有した」として、責任者が17日以降に協議したいと回答してきたという。一部にはマグロウヒル社が教科書の訂正を拒否したという報道もあるようだけれど、筆者には確認が取り切れていないので、これについては保留しておく。

これに対する、韓国側の反応は「手のひらで天を隠そうとする国際孤立国、日本」とか「そんなことをして、事実が消えるのか?」とか「認めれば日本が滅びるのか?なぜ認められないんだ…」など、自分達の認識を正しいと信じて疑わない。

まぁ、外務省の要求とて、産経が報じたのを受けて慌てて対応する辺り、少し情けない感じがしないでもないけれど、抗議の声一つ上げないよりは全然マシ。

それでも、安倍政権は慰安婦問題についての汚名を晴らそうという意思は持っている。

11月27日、日本政府と韓国政府との間で、慰安婦問題などを話し合う為に設けられている第5回局長級協議で、日本政府は韓国政府に対し、ソウルの日本大使館前に設置されている慰安婦を象徴する「少女像」と米国の「慰安婦の碑」の撤去を求めていたことが明らかになった。

これは、慰安婦被害者が納得できる解決策を要求する韓国に対し、日本は、韓国も問題解決に向け努力する必要があるとの趣旨から要求したのだけれど、韓国側は少女像と慰安婦の碑は日本が慰安婦問題を解決していないため、民間が自主的に設置したものであり、政府が関与する問題ではないとの姿勢を示したという。

だけど、そのロジックでいうのなら、韓国との戦時中の問題は1965年の日韓請求権協定で完全に解決しているから、今更、保障だのなんだのは、政府が関与する問題ではないことになる。

実際、局長級会議で日本側は、過去の慰安婦問題関連措置を強調し、1965年の日韓請求権協定で法的に解決しているにも関わらず、道義的な観点からアジア女性基金を通じて償い金を支給し、首相の手紙を渡したことなどを指摘しているそうだ。まったく当たり前過ぎる指摘。いっそのこと、韓国側は慰安婦像の撤去に積極的な姿勢を見せないならば、協議自体を止めてもいいのではないかと思うくらい。

これについても、韓国人は「慰安婦強制連行の証拠をきちんと文書化して白書を作り、中国のように、日本の蛮行の調査団を作って向こうが何もいえないようにしなければならないのではないか?」、「交渉っていったい…犯罪者との交渉するのか?」、「撤去してほしいなら、安倍が慰安婦被害者たちの前で膝をついて祈って補償して、靖国神社を撤去して、竹島主張をやめろ。」という反応。尤も中には「なぜ他国の土地にあんな狂った物を作り大騒ぎしてるんですか?さっさと片付けて国の恥さらしをやめてほしい」と比較的冷静なコメントもあるようだ。

こうしてみると、マイケル・ヨン氏の主張にしても、教科書訂正要求にしても、慰安婦像撤去要求にしても、日韓双方の国民の認識の隔たりが余りにも大きく、現状では、まともに話し合いできるような状況ではないように思われる。勿論、これは日本が遅まきながら"正当"な主張をするようになったから、というのもあるとは思うけれど、それで向こうが反発するのなら、距離を置くしか方法がない。

幸か不幸か、慰安婦問題について、韓国は朴大統領を始めとして余りにも世界中で騒ぎ過ぎたため、却って注目を集めてしまった感がある。それでも日本がいままでどおり黙っていれば、まだなんとかなったのかもしれないけれど、少しづつではあるけれど反論するようになった。そして、テキサス親父やマイケル・ヨン氏のように、アメリカ側から、韓国の主張に疑いの声を挙げる人が出てくるようになった。

また、日本の慰安婦問題ではないけれど、最近、イギリスのBBCが韓国の米軍慰安婦訴訟を取り上げ、韓国でかつて在韓米軍基地周辺に基地村と呼ばれる売春街が存在し、それを当時の韓国政府が黙認し、さらに性病管理所で定期的な検査を実施するなど実質的な管理に携わっていた事実を報じている。もしかしたら、そのうち、ベトナムのライダイハンについても報じるようになるかもしれない。

ひと昔と比べると明らかに流れは変わっているし、これまで日韓でのローカルな問題であったのが、世界を巻き込む話にまでなりつつあるように感じている。これも、朴大統領の"告げ口"外交のお蔭かもしれない。

日本は韓国と距離をおきつつ、世界に向かって諦めることなく、着実に汚名を晴らす活動を粛々と続けていけばいい。

コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. ちび・むぎ・みみ・はな
    • 2014年12月01日 13:36
    • > 世界を巻き込む話にまでなりつつある
      それはそうだ.
      現在の世界秩序はドイツと日本が残虐な行為をした国である
      という「事実」の上に構築されている. その二本柱の一つが
      なくなれば世界の, 特に米国の正義がなくなると言う話.
      日本を安全保証理事会の常任理事国にせねば収まるまい.
      それでは支那が持たない.
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