今日はこの話題(続報)を簡単に…


8月16日、中国・天津市当局は12日深夜の大爆発で死者112人、行方不明95人(内85名が消防関係者)と発表しました。

けれども、あれほどの大爆発を起こし、その後、廃墟と化した爆心地付近の映像を見る限り、とてもその程度で済んでいるとは思えないですね。

それでも、中国当局は必死で情報統制をしようとしています。15日に地元当局が天津市内のホテルで記者会見を行っていたところ、当局の対応に不満を持つ被害者や家族らが「真相を明らかにしろ」と押しかけました。

慌てた当局は即座に3カ所の出入り口をふさぎ、国内外の記者が家族らを取材するのを拒絶。会見中の市幹部らは、そのまま救援状況などの説明を続けたそうです。

けれども、記者からの猛講義に押され、最終的に会見後、ドアを開け取材をさせたようです。結局取材させることになるのなら、最初からそうすればよいのに、下手に統制しようとするあまり返って印象を悪くしていますね。

取材を受けた男性は消防隊員の親御さんのようで、「爆発の消火に向かったまま連絡が取れなくなった。…息子がどういう状況なのか、政府は何も教えてくれない」と答えたそうですから、関係者にすら公式な情報が伝えられていないものと思われます。いや、救助隊自身さえも分からないのかもしれません。

それでも、爆発直後から中国版ツイッター(微博)には次々と情報が寄せられたようで、「人間の体が蒸発した」とか「道路にちぎれた手足が散らばっている」などの投稿や、更には、現場の航空写真をもとに「爆発地点から700メートル以内に少なくとも5760世帯が住んでいる」と指摘したものや、「火災を起こした倉庫に保管されている化学薬品の中身を知らずに放水した」という消防隊員の投稿もあるそうで、これらが本当であれば、とんでもない規模の犠牲者が出ている可能性があります。

ただ、当局はこれらネット情報も規制していますから、本当の被害が明らかになるかどうかについては何ともいえません。

けれども、それ以外にも問題視されていることがあります。それは、大爆発で毒性の高い化学物質が飛散したのではないか、という点です。

16日、人民解放軍・北京軍区の参謀長が爆発で破壊された倉庫にシアン化ナトリウムが保管されていて、その総量は数百トンに上るとみられると発言。軍は、防護装備を備えた核・生物・化学兵器の専門部隊である核生化部隊を応援に派遣しています。

シアン化ナトリウムは別名「青酸ソーダ」とも呼ばれる毒物です。水や酸などと反応すると、有毒で引火しやすい青酸ガス(シアン化水素)を出します。致死量は270ppm~5000ppm程度ですからうっかり吸い込んだりすると命に係わる危険な毒物です。
※ただし、青酸ガスは、空気よりわずかに軽く、外では上空に浮き上がって拡散してしまうため、化学兵器として使われることは殆どないようです。

当局は、これを受け、周辺3キロを立ち入り禁止にし、化学物質による中和作業で無害化処理を行うとしています。けれども、現場では尚も小規模な爆発が続き、消火活動は難航しているようです。

それでも、現場に軍の核生化部隊が入って、午前一杯かけて爆発地点右側の長さ100メートル、幅50メートルの範囲の捜索を行ったのですけれども、生存者の痕跡は確認できなかったそうです。専門部隊が入っての捜索でこれですから被害状況の確認含めて、全貌が明らかになるまでは相当時間がかかりそうですね。

天津の大爆発について」のエントリーでも触れましたけれども、爆発のあった天津は、経済技術開発区に指定された14の都市のひとつであり、外資が進出している有数の地区です。

日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、爆発の影響で天津港の機能がほぼ止まっているということなのですけれども、天津港は貨物取扱量で世界4位の規模を誇り、自動車産業の工場や物流施設が集まっています。日系企業への影響は避けられないですね。

トヨタ自動車は近接する工場の操業を17日から19日まで停止すること決めましたし、富士重工業も日本からの輸入品について、復旧の状況を見ながら代替ルートを検討するようです。

まぁ、カンバン方式のトヨタが必要な時に部品が調達できず、輸出もできないとなれば、是非もありません。操業を止めるのも仕方ないでしょうね。今のところ、トヨタの操業停止は19日までの3日間ですけれども、この状態で20日からすっと操業再開できるとも思えません。

爆発から5日経過して、まだ処理も全然進んでいない状態ですから、当局の対応含めて、環境評価13年連続中国一の天津経済技術開発区の評価がガタ落ちしたことは間違いないですね。「苦しい時こそ、その人の本性が顕れる」とは良く言われることですけれども、都市評価においても、本当の実力はこういった非常時の時に顕れるものなのかもしれません。

今後、この天津が再び外資を呼び込めるのかどうかについては、外資(他国)の信頼をどうやって回復するのかという問題とほぼ同義といっていいように思いますけれども、少なくとも安全対策をがっちりやって、もう二度とこのようなことは起こらない、と納得して貰う必要があると思います。そのためにはやはり、こういう原因で爆発に至ったという究明が必要ですね。原因が分かって始めて対策が打てるものですからね。

けれども、ともすれば「爆弾以外は全て爆発する"チャイナボカン"」と揶揄されるかの国で、どこまでそれが出来るのか。

危険物の管理体制、水を掛けてはいけない化学物質があったことを知らなかった消防士への再教育、工場と住宅地が混在する区割りなどなど、殆ど一から都市を作り直すくらいの積りでいかないと駄目なのではないかとさえ思いますね。

そんな折、今度は、黄島の経済開発区で、ゴムと木材を保管する倉庫から火災が発生したとの情報も入ってきています。

天津、遼寧省、黄島とわずか1週間の間に3件もの爆発・火災が発生しています。しかも3つとも経済開発区です。ネットの一部では、共産党内の内部抗争説だとか、テロ説まで出ているようです。確かに、テロをする側にしてみれば、杜撰な安全・管理体制の化学薬品工場だとか、燃料タンクなどは絶好の標的以外の何物でもありません。

それにしても、今回の爆発は、安全・テロ対策だとか、管理教育だとか、余り力を入れずにほったらかしにしていた所の弱さが一気に吹き出た感があります。その意味では、これからはそちらに金とコストを掛けていかないと、立ち行かないという警告のようにも見えなくもありません。

もしも、それが出来ないのであれば、外資の信頼を取り戻すのは相当厳しいのではないかと思いますね。

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コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. ちび・むぎ・みみ・はな
    • 2015年08月18日 17:25
    • 新幹線の例を見ても分かるように, 天津の爆発は
      起きるべくして起きたものだと思うが, それに留まらずに
      日本経済も巻き沿えにする可能性がある.
      四半期のGDPが昨年比でマイナスになってしまっている.
      それは不思議でも何でもなく, 藤井聡京大教授が述べているように,
      政府予算が安倍政権が始まった時の大きさまで縮小しているからだ.
      しかも, 消費税増の影響は未だ消えていない.
      今後 GDP が増加する要因は何処にもないように見える.
      これまで成長に関して強気の見通しを述べていた代表戸締り氏も
      本日の記事ではかなりトーンダウンしている.
      同氏も輸出の伸び悩みが大きいと述べているが,
      現在の世界情勢で輸出が伸びるという方がおかしい.
      現在は安保法制でメディアが賑わっているが,
      気が付けば日本経済には本当に秋風が吹き出すことになろう.
      所得倍増時代の社会を全く経験したことのない政治家というのは
      前線で一度も戦ったことの無い連合艦隊指令官と同じである.
      政府は既に全ての分野で競争を強いており,
      これは現在の艦隊全面対決主義として日本経済を奈落の底に落そう.
      安倍政権は最終的には経済問題で退陣するという予想が当たりそうだ.
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