今日はこの話題を極々簡単に……
12月13日、ドイツのメルケル首相は公共放送ARDのインタビューで、「人々の懸念も考慮しなければならない。だからこそ、やってくる難民の数を大きく減らしたい」と、ドイツに入国できる難民数を今後、減らしていく方針を示しました。今後はEU加盟国による国境管理の厳格化などで、最終的にドイツに入国する難民を少なくしていくようです。
これは、今年9月にメルケル首相が難民を積極的に受け入れる方針を表明し、人数に上限を設けないとしたことに端を欲しています。最初こそ、積極的に難民を受け入れてきたドイツでしたが、ここにきて難民申請手続きの遅れや収容施設の不足が表面化したこともあり、批判が強くなってきたのですね。その批判の声は政権内部からも噴出するに及んで抗しきれなくなり、とうとう妥協したのだとの観測もあります。
これまでメルケル政権は盤石な国民の支持を集めていました。
ドイツのメディアの間では、メルケル首相の魅力は知性と巧妙さだとされています。汚職に一度も巻き込まれたことがなく、金銭欲もない。働きもので、気取らず、簡素で、分別があり、できないことは約束しないといった、メルケル首相の人柄に、多くのドイツ国民は魅了されているとしています。
また、それだけでなく、脱原発・平和外交・緊縮財政といった政策も支持を集める要因であるとも言われています。
ドイツは2011年の福島第一原発事故を受けて、2022年までに全ての原発を閉鎖することを決めたのですけれども、元々メルケル首相は原発推進論者でした。それが世論の風向きが変わると持論を脇に置いてでも、スッと民意に従って、政策を変える。この辺りも長期政権の秘訣だとドイツメディアは分析しています。
また、平和外交についても、ウクライナ危機当時、メルケル首相は、8日間不眠不休で東西の首都を駆けまわって、ミンスク合意をまとめ上げる実績を残しました。
更にメルケル首相は、緊縮財政に努め、2015年に赤字国債の発行を停止し、財政均衡を実現する見通しが立つまでに持ってきました。そして、2016年以降の連邦予算について、赤字はGDPの0.35%を上限とするよう法制化までしています。
このように、不必要な血を流さず、経済を立て直すという手腕を見せつけられれば、国内の支持を集めるのも理解できます。要するに、脱原発・平和外交・緊縮財政、これら三つの要素が、メルケル政権を永きに渡って支え続けている柱だということですね。
そんな折、やってきたのだ昨今の難民問題でした。
メルケル首相は、ハンガリーにいる難民をダブリン協定を無視して大量にドイツへ移送させていること、さらに、「政治難民の受け入れに上限はない」と豪語し、無制限の受け入れを促すなどしてきました。
ところが、最近、突然、あちこちのアンケートで、メルケル首相の人気が落っこちているそうです。
これは筆者の単なる憶測ですけれども、メルケル首相に対する支持率が急降下したのは、難民問題に対する対応が、これまでと真逆な部分があるからだとも思うんですね。
先にも述べたとおり、メルケル政権を支えていたのは、脱原発・平和外交・緊縮財政の三本柱です。
ドイツでは、すでに今年になって、極右グループによる難民収容施設へ三百件以上の放火事件が相次いでおり、国民は、現在の難民政策が、このような極右勢力の台頭を促してしまったことも含めて、反発しだしています。
また、難民を受けいれると、当然、難民の面倒を見るための当座の費用が必要になりますね。
ドイツ政府の発表によると、今年中東などからドイツにたどり着いた難民や移民が96万人余りに上っていると公表していますけれども、100万人近い人々に衣食住を提供するとなると莫大な費用が発生します。無論これらは出費であり、メルケル政権が取り組んでいる緊縮財政とは真逆の政策になってしまいます。
つまり、難民受け入れが国内を不安定化させ、経済を圧迫するということですね。これらは、メルケル政権の高支持率を支える要因である脱原発・平和外交・緊縮財政のうち脱原発以外の二つを脅かしていると思うんですね。だから支持率が下がっていく。
まぁ、既にメルケル首相はドイツに入国する難民を減らすと言っていますから、修正に入ったといえるとは思いますけれども、既に入国した百万人がどうなるかですね。まさか国外に叩きだす訳にもいかないでしょうから、潜在的な経済と治安の圧迫要因になると思います。
やはり、この問題はドイツにとっても後々尾を引きそうな感じがしますね。
コメント
コメント一覧 (2)
kotobukibune_bo
t
がしました
原発停止と緊縮財政には合理性はなくポピュラリズムに過ぎない.
この様な見かけの良い政治家が国を破滅させる元凶である.
ドイツがここまで旨くやってきたのはメルケル首相の力よりは
ドイツ金融界の影響力の大きさによる. 実際, EU中央銀行の
政策は全てドイツ金融界, つまりグローバル金融資本の一味,
に都合の良いものであり, フランスの民族資本の銀行は
全てやられてしまっている.
結局, メルケル首相はグローバル金融資本にとって都合の良い
政治家であった訳で, その政策の綻びが出てくれば捨てられる
運命にあると思う.
kotobukibune_bo
t
がしました