先日、日比野庵プロジェクト第一弾、初ラノベ「異世界の彼女が僕の心を覗き込む」を書き上げて気づいた諸々の事と、簡単な解説(?)をば、今日明日と前後編でエントリーさせていただきます。



1.作品世界・舞台設定

 最初にこの作品を書こうとしたときにまず念頭にあったのは「異世界」という設定でした。「小説家になろう」では異世界ファンタジー物に溢れていて、流行しているっぽいことを考慮してのことです。

 けれども、今まで小説の類を何も書いたことのない者が、ファンタジーといってもハードルの高さを感じていました。描写が大変そうでしたし……。

 そこで、次に考えたのが個人的な好みであるSFの切り口から「異世界」を捉えたらどうなるか、です。まぁ、真っ先に思いついたのが「パラレルワールド」です。そこから、膜宇宙論、双子宇宙論と連想し、双子宇宙から人がやってくる形にしようかなと考えたあたりで大凡の作品世界が固まりました。


2.プロット・ギミック

 舞台設定を固めた後、大まかなプロット作成に入りました。が、全然ストーリーが浮かばない(爆)。誰が何のためにやってくるの?というところから詰まりました。で、結局、主人公をターゲットにヒロインがやってくるという一番無難な形に落ち着きました。

 このプロット作成と並行して舞台設定のそれっぽい理屈付けのためのギミックを作り始めました。この辺りのギミックを考えていたときの頭の中は、多分にSF要素が強かったです。この段階で、スーパーカミオカンデやニュートリノ理論と絡められないかと考えていました。

 そうして設定・装置を出すだけだしてから、キャラと絡められるギミックは何かということでギミックの選別・切り落としに入って、残ったのが、「転送基」、「クレスト」、「眼鏡」、「テレポート」、「魂の封印(作中では"エミット")」要素でした。けれども、主人公とヒロインの成長要素と絡めるためのアイテム・設定には結構苦労しました。

 ここらの設定を考えていて、ふと、昔読んでいた、ドイツの長編スペースオペラ小説「ペリーローダン」シリーズを思い出しました。第5サイクル(アンドロメダ・サイクル)にちょっと似ているなぁと、「転送基を使って遠い世界に行って帰って来る」というコンセプトとかですね。ということもあって、プロット草案段階での名称は、多分に「ペリー・ローダン」の世界から名称を拝借しています。最初は「転送基」だけだった名前の頭に「六角」とつけたのもそうですし、「クレスト」もそうですね。「宙の王」に至っては、原稿を書き始めてからも、途中までそのまま「島の王」でしたから(笑)。

 また、「宙の王」の率いる「島の記憶」もその名残ですし、「島の記憶」の七人の幹部の名前も「島の王たち」のファクターⅠからファクターⅦまでを捩って(入れ替えして)いますし。


3.キャラクターについて

 キャラクターの造形については、正直何をしていいのか全く分からない状態からのスタートでした。最近のアニメとかを見直したりすると、やはり、範例というか一定のパタンがあるので、それを踏襲したところはあります。ただ、ラノベでは、主人公やヒロインには、成長要素がないといけないというのをウェブサイトを漁っているうちに読んだので、それを相当に意識しました。

 そこで、何らかのコンプレックスを持たせなくてはいけないかなと思い、主人公には兄へのコンプレックス、ヒロインには顔の傷と孤独感というコンプレックスを持たせました。

 けれどもそのコンプレックスを持たせたはいいが、それをどう解消して成長につなげていくか、どうストーリーに入れこんでいくかで非常に悩みました。更にこれらと小道具をどう無理なく溶け込ませていくか。かなり苦しみましたね。

 小説では、書いているうちに、キャラが勝手に自分で走り出すなんてよく言いますけれども、筆者の場合は、殆どなかったですね。筆者は、これはキャラの作りこみが浅いのが原因ではないかと思っています。

 ただ、唯一、勝手に走り出したキャラがいます。ミローナです。この娘だけは勝手に動き出しました。

 24話「エミッター」、28話「拉致」、37話「真眼」の後半部、40話「委託」は、ミローナが自分で走り出したことで生み出されたエピソードです。また、1話「プロローグ」の冒頭もそうですね。最初は主人公が入学式に寝坊して慌てて登校するシーンから始まっていました。けれども、ミローナというキャラは、プロローグの冒頭部を変更させました。

 一方、その新たに追加したエピソードで全体のプロットの修正・追加を余儀なくされた部分があったことも事実です。例えば、40話「委託」のプロットを考えたあと、28話「拉致」、24話「エミッター」の宙の王との絡みのエピソードを後で追加したという具合に、遡っての加筆訂正箇所が結構ありました。

 更に、ミローナとエトリン姉妹の登場が「宙の王」の立ち位置を決め、ヒロインの組織と敵対しているという設定へと大きくプロット変更しています。その代り、このミローナとエトリン姉妹が物語に膨らみをつくったと思っています。

 よく作家さんへのインタビューか何かで自分の作品で一番好きなキャラクタ―は誰ですかという質問され、答えるのがありますけれども、筆者の場合は、今回の作品で一番好きなキャラはと聞かれると、文句なしに、ミローナと答えます。豪胆で真っ直ぐだけれども心根は優しい。努力家だけれども、報われない。相反する要素を同時に内包・体現するキャラで、書いていてどんどん思い入れが強くなっていきました……(笑)

 先の質問でも、他の作家さんが挙げる名前は主人公とかメインヒロインではなかったりするケースが多いんですよね。どちらかというと脇役の名前を上げるのが結構ある。なんで自分で書いている癖に主役やヒロインにしないのだろうと不思議に思っていたのですけれども、今なら良く分かります(笑)

 今回の続きを書くにしても、別の話を書くにしても、ミローナ、或いはミローナ風のキャラはきっと出てくると思います。

 あと、余談ですけれども、キャラの外見については、アニメや漫画のキャラを頭に思い浮かべるようにして書いていました。

 主人公の智哉は「ヒカルの碁」から眼鏡をしていない筒井君ですし、ヒロインの神楽耶は「ささめきこと」の村雨純夏をイメージしています。性格は違いますけども。

 また、クライマックスで描いたラスボスのクーマは、「なんだか、ラピュタのムスカだなぁ」と思いながら書いてました。その積りは全然なかったのですけれどもね。まぁいいか。


4.小ネタ

 今回の作品にはキャラ名など、あちらこちらにネタをほおり込んでいますけれども、実話ネタもちらほらいれています。
 北斗の拳、艦これなど分かり易いネタは割愛させていただいて、それ以外にはこんなのを……

 ○フェルミ研究所(第5話「裕也」)
 フェルミ研究所を登場させました。作中では「エンリコ・フェルミ研究所」としていますけれども、これは旧称で現在は「フェルミ研究所」です。 ここのLHC物理学センターではプレゼンでPCを使わないというくだりがありますけれども、これは実話です。

 ○サイラス教授(第5話「裕也」)
 また裕也の指導教官として登場させたサイラス教授は、当初は太陽ニュートリノからの連想で「宇宙戦艦ヤマトⅢ」のサイモン教授から取りました。けれども、その後、ニュートリノの検出で1995年にノーベル物理学賞を受賞したフレデリック・ライネス氏がいたことを知り、名前がとても似ていることに吃驚しました。……偶然にしても凄い。なので作中ではフレデリック・ライネス氏をイメージして描写しています。

 更に、サイラスの研究室内の描写で「日本の古い週刊漫画雑誌」と書きましたが、これは少年ジャンプのことです。2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎氏のシカゴ大の研究室にあった件を拝借しました。その時のインタビュー記事を引用します。
 ―南部さん、本棚にある「少年ジャンプ」。何ですか、あれ?
 「ああ、あの漫画雑誌の中に、科学者の伝記シリーズ(タイトルはノーベル賞受賞者連載企画『21世紀の天才たちへ』だった)があったんですよ。インド生まれの世界的物理学者のチャンドラセカール(シカゴ大では同僚だった)の伝記が載っていて、日本から彼のところに送ってきた。でも彼は何のことだか分からなかったみたい、日本語だったんで。僕の所に持ってきた。見たら彼の伝記が載っていた。ああだから…と思ったんだが、それからそのまま僕のトコに置いてある」
 週刊少年ジャンプは1992年の2冊。「スラムダンク」が人気のころのものだった。

 ―研究の合間に読んでいるのかと思いました。昔は漫画とか読みました?
 「私は読みませんよ。というより、あのころ漫画がはやってませんでしたから」(笑)

 ○佐藤と剣崎(第5話「裕也」)
 この回には、裕也の同僚として、佐藤弘光、剣崎学というキャラを登場させていますけども、

 佐藤弘光=佐藤康光(棋士)
 剣崎学 =先崎学(棋士)+剣崎順(リングにかけろ)+剣崎健(プロゴルファー猿)
 
 というモデルがいます。「モテ光」のくだりは実話です。

 ○ハイパーカミオカンデ (第5話「裕也」)
 作中では「ウルトラカミオカンデ」としていますけれども、これは現在建設中の「ハイパーカミオカンデ」のことです。
 グーグルマップで位置と行き方を調べましたけれども、結構難儀しました。
 カミオカンデの説明はちょっとはしょり過ぎたかもしれないと思っています。ニュートリノ振動の説明を入れようかと悩みましたが、中高生向けのラノベということで止めました。まぁ匙加減が良く分からないだけなのですけれども。この辺りは経験を積むしかないのかもしれません。

 
 ○神岡研究所(第5話「裕也」)
 これもグーグルマップで確認しました。意外と外見はちゃちいです。無論、メチャ田舎。
 余談ですけれども、「源ます」というのは東北自動車道富山インターから少しいったところの鱒寿司専門店で実在する店です。コメダ珈琲も近くにあります。


 ○神山鉱山跡地(第46~51話
 そのまま神山鉱山跡地を参考にさせていただきました。世の中には「廃墟マニア」という方々がいて、全国各地の廃墟を巡っているようです。各種廃墟の写真もブログにアップされていて思いっきり参考にさせていただきました。団結小屋も実在していました。またアニメにもなった「氷菓」にも神岡鉱山跡地が登場しているようです。

…… 明日は、今回初めて小説を書いてみて気づいたこと等々をエントリーします。


 

コメント

 コメント一覧 (3)

    • 1. 白なまず
    • 2016年04月10日 08:50
    • 元ネタは面白いですね。富山の鱒寿司が登場した時は、味まで脳内再現されて、猛烈に食べたくなり、鱒寿司のおみやげをくれた友人も同時再生されました。最近は新幹線で東京から行けるので便利ですが、九州からだとまだちょっと遠い。今時なら通販も有りでしょうが、、、何時か富山で再会したい鱒寿司に、ついでに友人と、、、暇になったら車で日本海側を北上するのも、、、遠いな。それから創作中の日比野さんが各章の入れ替えや話の整合性をとる行為は、なんだか日比野さんがクリエイター(作家と言うより創造主に、、、)となり登場人物の人生設計や世界の設定やらを時空の外から創造するように思えました。神様はほんとうにエライ(大変)ですね。神さまにもお気に入りのキャラがあるかも知れませんね。そして、そのキャラは正義の見方の対局に居る悪役が最高の引き立て役でかわいいのかも知れないですね。
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    • 2. ス内パー
    • 2016年04月10日 12:31
    • キャラが勝手に動き出す現象はよくありますね~。
      プロットの段階ではPC1PC2と敵ボスについては詰めるもののPC5あたりになると投げっぱで勝手にやれとか冨樫虎丸並の解説驚き役しか期待しないけど当のPC5はシナリオ参加のモチベに拘って暴走を始める……だいたいどんなに濃い設定でもスポットライトの当たり方がモブレベルに薄いPC5が自我とかモチベとか主張して表舞台に出てくる過程で発生するものなので長く付き合うキャラになるとモチベ理解してシナリオに組み込んで処理できるようになるのですよね。
      こないだ人工知能がナチ称賛して凍結食らったり凍結から抜け出して暴言?吐いたニュースなんかありましたけどあれもキャラが勝手に動き出す現象として捉えることも出来ますね。教育をネット任せにした結果PC1のはずのAIがPC5と化した変わり種の例ですが。
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    • 3. 白なまず
    • 2016年04月10日 12:33
    • お題とは全く関係ないですが、久々にすごいとおもったので、、、一部4Kなんでしょうか映像が綺麗。
      【スペースX社のファルコン9ロケット着陸に初めて成功】
      https://www.youtube.com/watch?v=YU3J-jKb75g
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