今日はこの話題です。



11月10日、電波の有効利用を検討する総務省の「電波有効利用成長戦略懇談会」の議論がスタートしました。

これは、電波の有効利用を通じて安倍内閣の成長戦略に活かす目的の為、始めるものです。

また、政府の規制改革推進会議も「電波オークション」の導入を軸に議論を進めています。

日本の電波使用権は総務省が審査して選ぶ比較審査方式が採用されているのですけれども、これは複数の申請者がいる場合、免許人としての優劣を比較して、免許を付与する方式です。

それに対して、電波オークションは電波の周波数の一定期間の利用権を競争入札で決める方式で、OECD加盟国のアメリカやイギリス、フランス、ドイツなど先進国で実施されています。

けれども、その権利料は双方で全然違います。

総務省によると、平成27年度の電波利用料金の収入は総額約747億円。主な通信事業者やテレビ局の電波利用負担額は、NTTドコモが約201億円、KDDIが約131億円、ソフトバンクが約165億円、NHKが約21億円、日本テレビが約5億円、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京約4億円などです。

これに対して、例えば、オークション方式を採用しているアメリカでは、2014年11月から2015年1月までに実施されたオークションで3つの周波数帯が計約5兆円で落札された経緯があります。

過去一度、民主党政権時代に電波オークションの導入が議論された時には、制度の導入で競売によって収入額が増加し、毎年平均で数千億円の収入になると見積もられていたそうです。

今後、もし日本で電波オークションが採用されるなら、その落札額はこれまでの電波利用料金から大幅に上がることは確実視されています。

ただ、オークションといっても、それは既に電波利用権を持っているテレビ局含めて一からガラガラポンする訳ではありません。電波オークションは新たな周波数を誰が使うか、入札によって決める制度です。

つまり、日本で新たに電波オークションを導入するということは、既存の電波利用料と併存するということです。

事実、電波オークションを採用している諸外国でも、電波利用料相当の制度を併存させているケースが割とあります。アメリカは行政手数料、フランスは周波数使用料、イギリスは無線電信免許料として徴収しています。

仮に日本で電波オークションが導入されると、現在、テレビ局が使用している周波数帯を整理して周波数帯を開けるか、既存テレビが使っていない周波数帯での入札となる訳です。

これまでテレビが使用していた周波数帯は、アナログテレビが使用していたVHF帯(90-108MHz,170-222MHz)の1~12チャンネルと、UHF帯(470~770MHz)の13~62チャンネルでした。そこから先の800MHz以上の帯域は、携帯電話が使用していました。

そして2011年の地デジ移行を切っ掛けにテレビはUHF帯の一部である470~710MHz帯域を使用し、710MHz以降の帯域は、爆発する通信量に対応するため携帯向けに解放しています。

この700MHzを含め、400MHzから900Mhzあたりの周波数帯は俗に「プラチナバンド」とも言われています。その理由は、一度に伝送できる情報量が多く、比較的小型の送受信設備で通信することが可能な上に、障害物はある程度まで迂回して伝わるといった性質を持っているため、携帯などの移動通信に最適な為です。

テレビは一つのチャンネルを使い電波塔から同じ放送を発信すれば済みますけれども、携帯は同じ地域で数百、数千の人がそれぞれ固有のチャンネルを使って通信します。その通信総量、使用帯域はテレビとは比較になりません。

つまり、今後、携帯の普及に伴い「プラチナバンド」を使用するニーズは増々高まり、奪い合いになることも予想されます。

其の為にはどうするか、となると、やはり既存テレビ局が持っている周波数帯を整理して新たに空けていくしかありません。テレビ放送の電波オークションを行うのであれば猶更必要になってきます。

評論家の池田信夫氏は、日本の問題はオークションにかける電波があいていないと言われているが、その中身は歯抜けだらけで、本当はあいているとし、SFN(単一周波数ネットワーク)といった新しい技術で整理すれば、チャンネルは空けられる、と述べています。

それでも、既存のテレビ局は今使っているチャンネルから移動するのは嫌がるかもしれません。これまで何チャンネルはどこの局だ、という割り当てが定着していましたから。

けれども、これもやり方次第です。

アメリカでは、インセンティブオークションという方式が採用されています。これは、既存の免許人であるテレビ局に電波の返上を求め、それを携帯電話事業者が入札するというものです。携帯電話事業者からの電波オークション収入の一部は、電波を返上するテレビ局に配分され、テレビ局の収入となります。つまり、今使っているチャンネルを空ける代わりにお金が貰える(インセンティブ)という仕組みですね。これと同じ仕組みをチャンネルの移動でも導入することだって出来る筈です。

こうした様々な問題があるにせよ、電波オークションが実施されれば、新たに放送事業に乗り出してくる局もあるでしょう。或いは、BSやケーブルテレビ、ネットテレビを放送している事業者が名乗りを上げるかもしれません。

それによってチャンネルが増え、競争が起これば、各局とも、質の高い番組が求められるようになります。偏向報道だなんだと言われることの多いテレビ局も自身の生き残りを掛けて番組制作しなければならなくなります。

電波オークションが実現するかどうかわかりませんけれども、その動向に注目ですね。
 

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