今日はこの話題です。
12月25日、朝日新聞は文芸評論家・小川栄太郎氏の著書「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」が、事実に基づかない内容で本社の名誉や信用を著しく傷つけたとして、小川氏と出版元の飛鳥新社に5000万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴えを東京地裁に起こしました。
これは、11月21日に朝日新聞が小川氏と飛鳥新社宛てに"「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」の著者・小川榮太郎氏と飛鳥新社への申入書"を出したことについて、小川氏から"朝日新聞からの申入書に対する小川榮太郎の回答"との反論文書を受けてのことです。
小川氏は12月6日付の反論文書で朝日新聞に次の4つについて要求を出しました。
1 貴社は私への申入書をネット上で公開した以上、この回答全文も責任を以て公開すること。(当方は勿論公開しますが)
2 私の回答を歪曲せずに、性格を正しくとらえた記事で紹介すること。
3 今後、朝日新聞紙面に、森友加計報道に関する私の見解と貴紙の見解、また、両方の立場の有識者を公平に配分して、充分な質量の検証記事を載せること。
4 当該記事の執筆者や貴社幹部らと、私及び私と見解を同じくする有識者による公開討論をぜひ幅広く内外のメディアを前にして行うこと。
これに対して朝日新聞は同じく12月6日に"小川榮太郎氏ならびに飛鳥新社代表取締役・土井尚道氏から12月6日に届きました弊社への回答書と弊社コメントです"の記事を掲載。小川氏の回答全文を掲載しました。小川氏の要求の1について応えています。
けれども、12月6日時点での朝日新聞の回答は「回答の内容は承服できません。今後の対応について、弊社で検討いたします」とだけで、小川氏の残りの三つの要求に対する回答はありませんでした。
そして回答しないまま25日にいきなり、訴訟に踏み切った訳です。
朝日新聞は、訴訟理由について、「小川榮太郎氏ならびに飛鳥新社に対する訴訟提起について」の記事を掲載していますけれども、「本社には一切の取材もないまま、根拠もなく、虚報、捏造、報道犯罪などと決めつけています。具体的に問題点を指摘し訂正を求めましたが、小川氏は大半について『私の《表現》か《意見言明》への苦情に過ぎません』などとして応じませんでした」と、話し合う余地はないと言わんばかりの回答です。
けれども、小川氏への申し入れとその回答一回こっきりで、「訂正は今後も期待できません」であるとか「事実に反した誹謗・中傷による名誉毀損の程度はあまりにひどく、言論の自由の限度を超えています」と断言するのはちょっと早過ぎますね。
互いの主張がぶつかり合って平行線を辿るのはままある話ですし、それを否定するものではありません。であればこそ互いに討論すればよいだけのこと。それは小川氏自身が公開討論の形で求めています。朝日新聞の回答はそれを無視していきなり訴訟に出ている。
朝日新聞は、ミサイルを撃って、核開発を行い、「日本を海に沈める」とまで恫喝する北朝鮮に対して、何度も「対話するべきだ」としつこい程主張しています。それほどまでに"我慢強い"朝日新聞がなぜ、たった一回の小川氏の反論に「訂正は今後も期待できません」と言い切れるのか。
北朝鮮の恫喝は誹謗中傷による名誉棄損の比ではなく、具体的な生命の危機を伴うものです。それに対して「対話」を主張し、小川氏には訴訟に打って出る。ダブルスタンダードですね。
小川氏を訴えた朝日新聞は、少なくとも公開討論よりも訴訟を選んだ訳ですけれども、近年問題視されている訴訟形態の一つに「スラップ訴訟」というものがあります。
スラップ(SLLAPP:Strategic Lowsuit Against Public Participation)訴訟とは「提訴することによって被告を恫喝することを目的とした訴訟」のことです。
提訴によって弁護士費用、時間の消費、肉体的・精神的疲労などを被告に負わせ、疲弊させ、反対・批判を続ける意欲や能力を失わせる。それにより、被告が公的発言を行うことを妨害、あるいは被告が団体の場合には、団結を乱し、分断し、分裂させることを狙うといったものです。要するに弾圧です。
この脅しによって、相手を黙らせる、あるいは自分の思い通りにさせる、というやり方は、何のことはない北朝鮮の核・ミサイル開発と同じなのですね。
北朝鮮と対話しろというその口で、自分を批判する相手には、北朝鮮と同じ、恫喝と手段に出る。朝日新聞は自分が北朝鮮と変わらないことをしていると自覚しているか分かりませんけれども、こんなことでは世間から見放されるだけではないかと思いますね。
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