今日はこの話題です。
3月9日、アメリカ・ホワイトハウスのサンダース報道官は、米朝首脳会談について、北朝鮮が非核化に向けた「具体的かつ検証可能な行動」を取るまで会談は行わないと述べました。サンダース報道官は北朝鮮が非核化や核・ミサイル実験の停止を約束したことに触れ、「北朝鮮のこうした言葉に具体的な行動が伴うまで会談は行わない」としています。
これは、3月8日、アメリカを訪れていた韓国の鄭義溶・大統領府国家安保室長がトランプ大統領と会談した後、記者団にトランプ大統領が、5月までに金正恩と会談する意向を表明したと発表したことを受けてのものです。
何でも、会談の際、鄭義溶氏がトランプ大統領に金正恩の会談要請を伝えると、トランプ大統領は「オーケー、オーケー。彼らに応じると言ってくれよ」と即答。意外な返答に鄭氏ら韓国政府高官は半信半疑で顔を見合わせたそうです。
鄭義溶氏はそれ以外にも、金正恩からの「特別なメッセージ」を口頭で伝えたそうです。
メッセージは首脳会談の実現に向けた極めて包括的な内容だったとし、トランプ大統領は、前向きな反応だったと伝えられています。
ただ、こうした北朝鮮の会談要請について、アメリカの共和党や政権内に警戒論が出ています。共和党重鎮のコーカー上院外交委員長は「協議を進めるには、懐疑的な見方と注意深さが欠かせない」と述べ、ロイス下院外交委員長も「北朝鮮は対話と空虚な約束を繰り返し、こちらの譲歩を引き出して時間を稼いできたのを忘れるな」と表明するなど、北朝鮮への不信感を顕にしています。
9日のホワイトハウスの発表もこうした党内の反発を考慮してのものかもしれません。
トランプ大統領は10日、東部ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊で開いた支持者集会での演説で、米朝首脳会談について「世界にとって最高の合意ができるかもしれない」と期待を示した一方、「早々に立ち去るかもしれない」失敗する可能性もあるとの認識を示しています。
トランプ大統領は、今に分かるとか、上手くいくかもしれないし、いかないかもしれない、などと思わせぶりなコメントが多い印象がありますけれども、本心を悟らせないという思惑があるのかもしれません。
ただ、トランプ大統領は同じく10日、ツイッターで、北朝鮮について「対話が続く限りミサイル発射を行わないと約束した。彼らがその約束を守ると信じている」とも述べていますから、少なくとも、金正恩はそうしたメッセージをトランプ大統領に伝えたことは確かでしょうね。
金正恩の約束とやらが、トランプ大統領の言う通りだとして、何か進展があるのかというと、金正恩は、対話すれば「ミサイル発射」を中止するというだけで、ミサイルを破棄するとも、核開発を中止するとも一言も言っていないのですね。
だから、核ミサイルの危険という意味では、これまでと何も変わりません。
今回の米朝首脳会談の動きについて、日本は、自分達が蚊帳の外に置かれているのではないかと懸念しているだろうと韓国メディアが報じています。
ソウル経済新聞は安倍総理が米朝首脳会談について「当面は圧力を高めつつ、各国と連携して状況を見極める」と述べたことについて「安倍首相のこうした発言は、南北が首脳会談の開催に合意したのに続き、金正恩労働党委員長の非核化言及などで朝米対話ムードが醸成され、韓半島問題で『ジャパンパッシング』が可視化するのではという懸念が反映されたものだ」と評し、KBSは「トランプ大統領が金委員長の提案を受け入れたことに衝撃を受けた……日本政府はアメリカ大統領と北朝鮮最高指導者の前例のない首脳会談が急速に進行することに戸惑っている」と述べています。
本当にそうであれば、少し心配にもなるでしょうけれども、そうではないという分析もあります。
総理官邸を取材している、フジテレビ政治部の千田淳一記者によると、これは日本政府のシナリオ通りなのだそうです。
千田記者によると、日本政府は、1ヶ月以上前から、北朝鮮が折れてくると読んでいて、平昌オリンピック後に、トランプ大統領と安倍総理が、事前に直接会談するということを決定。両首脳はシナリオを共有していて、圧力を高めることで北朝鮮の側から「政策を変えるから対話をしてほしい」と言わせるようにしなければならないとし、その通りに進んでいるとのことです。
そういう背景があるのなら、トランプ大統領が韓国の鄭義溶氏に米朝首脳会談を即断でオーケーしたのも頷けるというものです。
けれども、今はようやく対話のテーブルが用意されるかどうかという段階に過ぎません。北朝鮮が今後どういう答えを持ってくるのか。まだ米朝首脳会談は決定した訳ではありません。
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