今日はこの話題です。
米朝首脳会談に向けた両国の事前協議で、北朝鮮が、アメリカが求める手法による核の全面廃棄に応じる姿勢を示していると米朝関係筋が明らかにしました。
北朝鮮は核兵器の査察にも初めて応じ、大陸間弾道ミサイルの廃棄も行う意向だとしています。
実は、アメリカのCIA当局者と核専門家の計3人が4月下旬から一週間余り訪朝し協議を行っていました。関係筋によると、首脳会談合意にこうした内容を盛り込む見通しのようです。
これに先立つ、3月末から4月に掛けて、ポンペオ前CIA長官が訪朝し、金正恩委員長と会談しているのですけれども、その際、ポンペオ氏は、トランプ大統領と何らかの合意に達するためには核放棄に向けて「不可逆的な」措置をとることに合意しなければならないと伝えていたそうです。
ポンペオ氏によると、会談は「建設的」なもので、金正恩委員長はトランプ大統領の要求について話し合い、目標達成につながる行程を提示する用意があると述べたようです。
ポンペオ氏はトランプ大統領が金正恩委員長に対し、非核化に向けた具体的な取り組みへのコミットを求めていく一方で、北朝鮮の措置に応じてアメリカも行動する必要があると述べていますけれども、アメリカもじわりと動き出しました。
5月3日、ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ大統領が国防総省に対し、在韓米軍縮小の選択肢を検討するよう指示したと報じています。複数の政府筋によれば、完全撤収の可能性は低いものの、平和協定が結ばれれば現在の規模を維持する必要がなくなる可能性があるとしています。
おそらく、北朝鮮から「不可逆的な核廃棄」に向けた具体的なコミットがあり、それを受けてのアメリカ側の在韓米軍撤退検討ではないかと思いますね。
互いにカードを切り合って腹を探っている。まさに両国での、非核化交渉の真っ最中だということです。
これに対して、韓国の大統領府関係者は、金正恩委員長は米朝首脳会談でトランプ大統領に「在韓米軍駐留」を容認するのではないかとの見通しを述べています。
というのも、過去には、北朝鮮の金日成主席と金正日総書記が非公式的に在韓米軍の駐留を容認したことがあった事があったからで、金正恩は米朝首脳会談で、意表を突く形で在韓米軍容認のカードを切ることで交渉の主導権を握り、更にその裏では、在韓米軍を容認することで、対中国の牽制に使おうとも狙っているのではないかと見ているようです。
実際、2月に韓国からの訪朝特使団が金正恩委員長と会談した際、金正恩委員長は「韓米連合訓練実施を理解する。朝鮮半島に平和が訪れれば在韓米軍と韓米訓練の性格と地位も変わるのでは」と述べたと明らかにしています。その辺りを踏まえての予測ということですね。
その一方、今のまま米朝首脳会談に臨むのはリスクがあると見る向きもあります。
先の南北首脳会談で、韓国と北朝鮮の両首脳は「板門店宣言」で非核化は「共同の目標」と謳ってみせていますけれども、歴代米政権の対北政策に関わり韓国政治にも詳しいジョージ・ワシントン大のヤン・C・キム名誉教授は「南北合作に基づいた世界の見せ物、宣伝であり、とうてい受け入れ難いとアメリカ政府は判断するだろう……北朝鮮は『核放棄』の意志を述べなかった。トランプ大統領が金正恩朝鮮労働党委員長に会うだけで、北朝鮮を実質的に核保有国と認めることになるとの警戒感がアメリカ側には根強い」と指摘しています。
アメリカ側が北朝鮮を核保有国と認めることは絶対に許さないと考えているとするならば、米朝首脳会談に至るまでの経緯と状況は非常に重要です。
ヤン・C・キム教授の指摘するとおり、北朝鮮が核放棄の意思を明確にしないままの米朝首脳会談の開催は、核保有国の黙認となるからです。
冒頭に述べた、米朝関係筋が明らかにしたという「北朝鮮が、アメリカが求める手法による核の全面廃棄に応じる姿勢」なるものが具体的にどのようなものなのか。それを日本を含めた関係国が了承できるものなのか。水面下では相当な交渉と連絡が行われている筈です。
その答えは米朝首脳会談の開催とその中身で明らかになるのでしょうね。
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