今日はこの話題です。
5月6日、北朝鮮外務省の報道官は、アメリカが米朝首脳会談を前に、核放棄するまで制裁を緩めないとしていることや、人権問題を取り上げる構えを見せていることなどについて、「相手を意図的に刺激する行為は対話ムードに冷や水を浴びせ、情勢を白紙に戻す危険な試みだ」と非難しました。
また、報道官は北朝鮮が非核化の意思を示したことを、アメリカが制裁や圧力の結果だとしていることについて、「世論をミスリードしている……われわれの平和愛好の意思を軟弱さと勘違いし、圧力や軍事的威嚇を追求し続けるのは、問題の解決に役立たない」ともコメントしています。
融和姿勢をみせたら、経済制裁を緩めて貰えるとでも思ったのでしょうか。これまでの北朝鮮の遣り口をみれば、そんなことをすれば騙されるのがオチですし、そもそもその「融和姿勢」とて、誰がみても制裁と圧力の結果でしょう。六者協議など対話だけを言い続けても何も変わらなかったのですからね。ミスリードでもなんでもありません。
米朝会談も始まっていないのに、こんなことを言い出す辺り、やはり経済制裁と圧力は効果があるのでしょう。少しでも制裁を緩和させようと、同じ批判を日本にも仕掛けています。
同じく6日、朝鮮労働党機関紙、労働新聞は、日本が北朝鮮への圧力維持を掲げながら、アメリカや韓国を通じ日朝対話を模索していると非難し「悪い癖を捨てない限り、1億年たってもわれわれの神聖な地を踏むことはできない……今のように制裁や圧迫を叫んでいては、いつまでたっても仲間外れの身を免れられない」と論評しています。
北朝鮮に対して経済制裁を掛けることは、安保理決議に基づいたものですから日本だけが仲間外れということはありませんし、何よりアメリカ自身が核放棄するまで制裁を緩めないと明言しています。
まぁ、あえて仲間外れを探すとするならば、それはむしろ韓国です。なぜなら、国際的に合意をとって進めている北朝鮮への圧力を自ら破る動きをしているからです。
昨年9月には国連児童基金や世界食糧計画を通して北朝鮮に800万ドル相当の人道支援を実施することを決定していますし、今月3~6日にかけてフィリピン・マニラで行われた第51回アジア開発銀行年次総会で中尾武彦アジア開発銀行総裁と面会し「今後の朝鮮半島情勢の進展状況に合わせ、アジア太平洋地域の開発に中枢的な役割を担っているアジア開発銀行とも協力できることを望んでいる」と支援を要請。
また、スマ・チャクラバルティ欧州復興開発銀行総裁と電話会談を行い、こちらにも支援を呼びかけています。
まだ、核廃棄も何も決まっていないのに支援の取り付けに動いている。その一方で、韓国が北朝鮮の核廃棄に向けて、国際社会と足並みを揃えて動いているかというとそうではありません。
今月9日に都内で開かれる日中韓首脳会談では、特別声明を発表する方針で下準備を進めていますけれども、その宣言には、北朝鮮に完全、検証可能かつ不可逆的な核・弾道ミサイルの廃棄を求めることを明記する方向で調整を進めようとしています。
けれども、それに韓国が反対しているのですね。
7日、韓国大統領府は声明について、「特別声明には『板門店宣言』を支持するという内容のみを盛り込むのがわれわれの立場だ」と完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)や対北制裁などに関する内容が入る理由はない、との姿勢を崩していません。
日中韓の3国の首脳会談ですから、韓国だけが反対しても、中々そうならないとは思いますけれども、安倍総理は4日、中国の習近平主席と電話会談を行い、北朝鮮の非核化に向けて日中で連携していくことで一致しています。ちゃっかりと根回しを済ませていますね。
ついでにいえば、「朝鮮半島の非核化」ではなく、「北朝鮮の非核化」となっているのも地味ですけれども重要ンポイントだと思いますね。朝鮮半島の非核化となると在韓米軍の撤退問題も含まれることになりますから。
尤も、トランプ大統領には、在韓米軍の削減や撤退も頭にあるらしく、4月に安倍総理と会談した際、在韓米軍を削減したり撤退したりした場合の影響について、安倍総理に意見を求めていたことが明らかになっています。
北朝鮮が在韓米軍の撤退を要求していることもあり、裏では検討はすべき事かもしれませんけれども、その事実がリークされたということは、北朝鮮に対して"検討はしているぞ"というメッセージでもあるでしょうね。同時に韓国に対して、北朝鮮に前のめりになるな、という牽制の意味合いもあるように思いますね。
まずは、9日の日中韓首脳会談と会談後の特別声明がどのような内容になるかには注目ですね。
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