昨日の続きです。
此処にきて北朝鮮が圧力を止めてくれ、と泣きを入れてきていますけれども、果たしてどこまで経済制裁が聞いているのか。
3月23日、中国税関当局が2月の対北朝鮮貿易統計を発表していますけれども、それによると、北朝鮮から中国への輸出は942万6000ドル(約10億円)で、2017年同月比で94.6%の減少。また、中国からの輸入は1億266万5000ドルで前年同月比32.4%減、貿易総額は1億1209万1000ドルで、65.8%減。
凄まじい減少です。
咸鏡北道の茂山郡から中国に輸出していた鉄鉱石は、昨年夏以後の制裁で完全に輸出がストップ。1万人程度とも言われている鉱山労働者への配給は3月に入ってやっと前月分が支給されたものの1人あたりトウモロコシ6キロ。しかも出勤しない労働者の方が多いという有様。
なぜ、出勤しない労働者がいるのかというと、単純に仕事がないからで、職場に行っても給料も配給も出ず食べられないという状況です。北朝鮮の大人は、国が配置した職場に勤めなければならず、当局が毎朝職場に行って出勤簿をチェックして無断欠勤者を取り締まることになっているそうです。
欠勤者については当局の保安員が出勤させるため、家までやってくるのですけれども、彼らの家の困窮した様子を見てすごすご引き返すのだそうです。
そのような状況の中、労働者達は、商売や別の稼ぎ口を探すめたに職場離脱しているといわれています。
また、北部・両江道恵山市の中国との合弁事業である銅鉱山でも、昨年8月末、経済制裁に基づき、契約が解消。約800人いる労働者には、それまでは支給されていた米と食用油が2月から一切無くなり、家族の誰かが商売している状態だそうです。
このように、経済制裁は北朝鮮庶民の暮らしを直撃しているのですけれども、意外と北朝鮮の庶民はそれを歓迎しているという話もあるようです。
アメリカ政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮国内には経済制裁で輸出できなくなった石炭が山積みになっているそうです。これまでそれら石炭は政府、朝鮮人民軍、国家保衛省系の外貨稼ぎ機関などが独占していたのですけれども、それらが安価で庶民に流れているようなのですね。
また、中国当局が北朝鮮からの海産物の輸入を一時的に停止させた時にも、北朝鮮の国内市場に大量のサケ、マス、カレイなど普段なら手が届かない高級魚が安値で入荷し、庶民の手に渡ったことがあり、庶民は、朝鮮労働党より、国際社会の制裁が人民の暮らしを助けてくれている、逆に経済制裁を喜ぶという状況が起こっているそうです。
そして、経済制裁の影響は北朝鮮労働党幹部など上流階級にも及んでいます。
一説には3月26日に金正恩委員長が習近平主席と会談した後、中国からの締め付けが緩まったという噂もあったのですけれども、実態は全くそんなことはなく、中国に駐在している北朝鮮の貿易機関の幹部によると、輸出の書類を中国の税関当局に提出しても、許可がおりず、石炭と金属はまったく取引できない状況のようです。
ここで問題になるのは、北朝鮮の上流階級に属する人達の収入源です。彼らが使う金の大部分は貿易で入ってきた金なのだそうです。しかし、経済制裁でその金が入って来なくなった。そうなると必然的に上流階級の不満が溜っていくことになります。
要するに、北朝鮮の国家秩序が崩壊を始めているのですね。
金正恩委員長にしてみれば、この状況を放置すれば、自らの立場も危うくなりかねない。経済制裁をなんとしても止めさせたい。
そう考えると、北朝鮮が融和ムードを作らざるを得なかった理由が見えてきますね。同時に日本に圧力を掛けるのを止めろと牽制するのも同じ文脈です。
となると、逆にいえば、北朝鮮が核を完全に廃棄し、拉致被害者救出を含む人権問題の解決が為されるまで圧力を続ける、ということが有効かつ大きなカードになることはいうまでもありません。
来る米朝会談でトランプ大統領がどこまで強気で交渉に臨むのか分かりませんけれども、経済制裁という最大のカードは最後まで切らずにとっておくことが大事になると思いますね。
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