今日は感想エントリーです。



5月8日、アメリカのトランプ大統領はイランと欧米など主要6カ国が結んだ核合意からアメリカが離脱すると発表しました。

トランプ大統領はホワイトハウスでの記者会見で、イラン核合意について「ひどい」「一方的な」などと批判した上で、イランに対して「最高レベルの経済制裁」を科すと表明。イランの核兵器開発を支援する国は全て制裁対象となると述べました。

対イラン制裁は直ちに再開され、企業や金融機関には新規の契約や金融取引が禁止されます。また、既存の事業関係については、取引の種類に応じて90日または180日以内に打ち切る猶予を設けました。

トランプ大統領は「このイラン合意は根本的に欠陥がある……イランの約束が嘘だという決定的な証拠がある」と述べていますから、何らかの情報が入っている可能性があります。

イラン核合意とは、2002年にウラン濃縮施設が見つかったことをきっかけに、イランが核兵器を持たないよう、米英仏独中ロ、EUとイランが2015年に結んだ「包括的共同行動計画」のことです。

この合意でイランは、核兵器に転用できる高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを15年間は生産せず、10トンあった貯蔵濃縮ウランを300キロに削減。19000基あった遠心分離機を10年間は6104基に限定することになりました。

これは、仮にイランが核開発を再開しても、核爆弾1発分の原料の生産に最低1年はかかるレベルに制限することに相当するのですけれども、核開発が全く出来なくなる訳ではないのですね。

イランは、核開発能力に制限を掛けられた見返りに米欧などから金融制裁やイラン産原油の取引制限などの解除を得ました。 

今回トランプ大統領がこの合意を破棄して、再度経済制裁を再開したということは、合意の完全履行を迫るか、極端なことをいえば、イランの核開発能力を完全に破棄させる思惑まであるかもしれませんね。

それ以上に注目すべきは、トランプ大統領が、4月30日にイラン核合意について破棄の可能性を示唆する際に、北朝鮮に対して「正しいメッセージを送ることになる」と述べている点です。

今回の合意破棄について、トランプ大統領は「アメリカは口先だけの脅しはしない」という合図だとし、「私は約束を守る」と啖呵を切っています。

つまり、合意したならば、その不履行であり、裏切りは許さないと宣言しているのですね。当然これは、トランプ大統領が明確に述べたとおり、そのまま「北朝鮮へのメッセージ」です。仮に米朝首脳会談が行われ、核廃棄の合意が為された場合、それに対する裏切りは許さない。そんなことをしたら、イランのようになるぞ、と示してみせた訳です。

しかも、このタイミングでのイランへの制裁再開は北朝鮮にとっては打撃となる可能性があります。

というのも、北朝鮮とイランは核開発で互いに協力関係にあると指摘されているからです。

2016年にアメリカ議会調査局が公表した報告書によると、北朝鮮とイランは核兵器製造や爆発実験のデータなどに関する情報を交換してきた恐れがあり、イランは北朝鮮の核兵器開発の支援に対し、現金や石油を支払ってきた可能性があると指摘されています。

北朝鮮とイランはそれら技術を「中国の貿易会社」などを通じて融通し合っていると見られているようです。

これが事実であれば、いくら北朝鮮を経済制裁しても、裏で核ミサイルをイランに売って現金や石油を手にしていたということになります。

それが、今回のイラン核合意離脱による経済制裁再開で、イランが動けなくなった。両国のルートを潰しにかかったという訳です。

ここにきて、北朝鮮は核実験場を放棄するだとか、体制が保証されれば核を持つ必要はない、などと、物分かりの良さそうなことを言い出していますけれども、なんとなれば、核技術者諸共、一切の核技術を一時的にイランに移転させて隠してやる。そうして空っぽになった北朝鮮を査察させて、見せかけの核廃棄を演出することだって出来る訳ですね。

けれども、トランプ大統領はそれを先回りして潰した。実に策士ですね。詰将棋ではないですけれども、確実に穴を塞いで逃げ道を無くしています。

果たして、金正恩がトランプ大統領のメッセージを受け取って、全面降伏するのか。各周辺国の動きも合わせて、激動の5月となりそうですね。
 

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