今日はこの話題です。
5月10日、アメリカのトランプ大統領は来月12日に米朝会談が行われることを明らかにしました。
これは、トランプ大統領が「注目が集まっている私とキム・ジョンウン委員長の会談はシンガポールで6月12日に行われる。ともに世界の平和にとって、特別な瞬間にしたい」とツイッターで明かされたものです。
開催地については、今回開催されるシンガポール以外にも南北軍事境界線にある板門店やモンゴルなども候補に挙がっていて、トランプ大統領自身も板門店での会談に乗り気だったそうなのですけれども、板門店では韓国側から過度な接触があることを避けたいという思惑から外されたようです。
また、モンゴルでは警備や施設の面で不安から除外。結局、アメリカと北朝鮮、双方ともに国交がある第3国であることに加えて、北朝鮮の金正恩委員長が専用機で直行できる距離にあること、そしてセキュリティの面などから無難にシンガポールに落ち着いたようです。
それにしても、よくぞ会談開催まで漕ぎ着けたものです。というのも、事前交渉でアメリカが様々な要求を北朝鮮に突き付けていたからです。
9日、北朝鮮に拘束されていた3人のアメリカ人が解放され、北朝鮮を訪れたポンペイオ国務長官と共に帰国の途につきましたけれども、当然これも要求のうちに入っていたでしょうし、また、北朝鮮関係筋によると、アメリカは北朝鮮が行った6回にわたる核実験や、寧辺核関連施設に関するデータの廃棄。更に核開発に携わった最大で数千人ともされる技術者を海外に移住させるよう求めていたようです。
5月10日のエントリー「トランプ大統領が放ったイラン核合意破棄というメッセージ」で、筆者は、北朝鮮はやろうと思えば、核技術者諸共、一切の核技術を一時的にイランに移転させて隠してやることも出来るだろうと指摘しましたけれども、アメリカはそうはさせじと核開発技術者を目の届く海外に移住させよ、と手を打っていたということですね。
北朝鮮は核実験データの廃棄には曖昧な態度を取る一方、技術者の移住には難色を示していたそうですけれども、米朝会談が決まったということは相当程度アメリカの要求を飲んだ可能性もあります。
米朝会談の決定に日本も動き出しました。
6月上旬にカナダで開く主要国首脳会議の機会を利用して安倍総理はトランプ大統領との会談を予定。6月12日の米朝首脳会談前に拉致問題への協力を念押しすると見られています。
安倍総理は5月11日のフジテレビ番組で日朝首脳会談について「拉致問題の解決なしに経済支援はない……まずは米朝首脳会談を成功させ、核・ミサイルにおいて解決に向かって進まなければいけない」と述べていますから、米朝会談の結果を見極めてから日朝首脳会談の可能性を探るということでしょうね。
昨日のエントリーで、安倍総理は拉致問題解決を北朝鮮非核化とセットにすることで、拉致問題解決の主導権を握る策を仕掛けていると述べましたけれども、拉致問題を解決しないと経済支援はしない、と先手を打って宣言しました。無論、何を持って解決したとは言っていませんから、北朝鮮はどこまでカードを切ればいいのか探るくらいしか出来ません。
しかし、日本は直接北朝鮮にコンタクトは取っていませんから、北朝鮮は、その"探り"を米朝会談でのトランプ大統領相手に行わなければいけなくなります。無論、トランプ大統領も日本による北朝鮮への経済支援を交渉カードの一つに加えているでしょう。
つまり、安倍総理は、拉致問題に関してトランプ大統領を"名代"として北朝鮮に送り込むと同時に拉致問題解決の"証人"として使っているともいえる訳です。
アメリカ大統領をこんな風に"使って見せる"ことのできる総理を筆者は知りません。
5月10日、安倍総理はトランプ大統領と電話会談し、北朝鮮問題で議論を交わしていますけれども、その際、トランプ大統領は日本のことを、重大な役割を担っているとして「ビッグプレーヤー」と呼んだそうです。
日本のメディアは日本を蚊帳の外だのなんだの的外れな報道ばかりしていますけれども、実際は、がっつりと北朝鮮問題に関わり、その重要なポジションを占めているのですね。
拉致問題と北朝鮮の非核化。米朝会談が完全なる成功に結びつくことを期待したいですね。
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