更に続きです。
5月12日、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は日本人の拉致問題に関連して論評を伝えました。
朝鮮中央通信は「全世界が近く行われる米朝首脳会談を歓迎しているときに、日本だけがゆがんだ動きをし、『拉致問題』をもって再び騒いでいる……日本がすでに解決した『拉致問題』を再び持ち出すことは、朝鮮半島の平和の流れを阻もうとする愚かな行為だ」と批判し、2008年以降中断している六者協議に触れ「日本は10年前にも多国間外交の枠組みの中で『拉致問題』を持ち出して邪魔をした……国際社会から『同情』を引き出して過去の清算を回避しようとしている」などと、日本に過去の清算を行うよう要求しています。
先日、安倍総理が拉致問題の解決なくして北朝鮮への経済支援はないと発言していますけれども、それを受けての発言かもしれません。
北朝鮮が日本を批判する際に六者協議を持ち出してきたということは、安倍総理が拉致問題を多国間の枠組みで核・ミサイルとセットで解決しようと狙っていることにようやく気づいた可能性がありますね。
ただ、当時は拉致問題解決といっても、中国が議題に出すのを嫌がり、韓国も無反応だったのに対し、今は共同宣言に拉致問題解決と言わせていますからね。少し状況が異なります。
というのも10年前と比べて、特に経済という点で日本の占める位置が相対的大きくなっているからです。韓国はいわずもがな、中国も経済成長が鈍化しています。
日中貿易もここ2年ほど、日本から見た貿易赤字額が急速に減少。2016年は4兆6575億円の赤字、2017年は3兆5543億円の赤字と中国から見れば対日貿易での稼ぎが少なくなっているのですね。
しかも中国も米中貿易摩擦の真っ最中。中国も対日融和姿勢をみせ、先日も通貨スワップ協定の早期再開を含む金融協力で合意しています。またそのタイミングで韓国も日韓通貨スワップ再開を言い出しています。それだけ経済的に苦しいということです。
或いは安倍総理も拉致問題解決に協力すれば、通貨スワップ再開も考えると中韓にバーター取引をしかけているかもしれないとも勘ぐってしまいます。あの中韓がタダで日本の拉致問題解決を北朝鮮にいうとは思えませんから。
北朝鮮は拉致問題は解決した、日本は金を出せ、と核と拉致を切り離そうとしていますけれども、それは、本命の核廃棄交渉にも影響してくるのではないかと筆者は見ています。
というのも、アメリカは日本の拉致問題が解決していないことを盾にして、核廃棄方法についてのハードルをどんどん上げることが出来るからです。
北朝鮮が日本の拉致問題の解決の意思を見せないまま、だらだらだらと時間稼ぎをすればするほど、アメリカはどんどん核廃棄の具体的要求を吊り上げ、それこそ金正恩政権の完全打倒まで追い込むことだって出来る訳です。
外交消息筋は、9日に北朝鮮を訪問したアメリカのポンペイオ国務長官は金正恩委員長に対し、「アメリカは、完全な核廃棄に対する北朝鮮の真正性確認の次元で、北朝鮮が実際の核廃棄の意思がある場合は、今月中に核兵器5個を、まずフランスに搬出することを北朝鮮に要求した……ポンペイオ長官がアメリカ政府のこのような立場を金国務委員長に直接伝達したことを知っている」と明らかにしています。
アメリカ国防情報局(DIA)は、北朝鮮が少なくとも20個、最大60個の核兵器を保有しているものと見ていて、まず、北朝鮮の核兵器5個から搬出し、順次、毎月北朝鮮の核兵器を5個ずつ抜き出すことを提示しているようです。20個であれば4ヶ月。60個なら12ヶ月。この計画だと1年以内に核兵器を搬出することになります。
米朝首脳会談の開催発表はポンペイオ国務長官の訪朝後に行われましたから、金正恩委員長は、このアメリカの要求すら飲んでいる可能性があります。
12日、朝鮮中央通信が北朝鮮は23日から25日の間に核実験場の廃棄を行うことを決めた、と報じていますから、今の所、米朝首脳会談をキャンセルする積りはないと見てよいかと思いますね。
では、それで、北朝鮮の核廃棄がすんなりいくかといえば、アメリカとてそうは思っていません。
アメリカ共和党のリンゼー・グラム上院議員によると、ボルトン大統領補佐官は、北朝鮮の一連の交渉は核・ミサイル開発のための時間稼ぎの手段にすぎないと見ていることを明かしていますし、FOXニュースの取材を受けたボルトン氏は「金正恩体制の打倒が必要」との考えを繰り返した上で、「北朝鮮がうそを言っていることを、どうやって知ることができると思いますか。彼らのくちびるが動いていることで分かる」と彼特有のジョークを交えました。
殆ど「息をするように嘘をつく」の世界です。つまりそれほど北朝鮮のいうことは信じられないということです。
トランプ大統領はこういう人物を補佐官につけた上での米朝会談に臨む訳です。しかもその横には安倍総理がアドバイザーとして控えている。
米朝首脳会談までの一ヶ月の間に、米朝間での交渉は続いていくでしょうし、アメリカは更なる要求を北朝鮮に突き付けているかもしれませんけれども、拉致問題解決の為にはアメリカの協力は絶対に必要であることはいうまでもありません。
今、ここまでトランプ大統領を動かしうる安倍総理がいる間こそ、拉致を含めた北朝鮮問題を解決する最大のチャンスだと思いますね。
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