今日はこの話題です。



5月16日、朝鮮中央通信は、この日板門店で予定していた韓国との南北高官会談を中止すると発表しました。

これは、11日から韓国で行われている米韓合同軍事演習「マックスサンダー」について「挑発行為」と呼び苛立ちを露わにしています。

「マックスサンダー」とは、毎年、韓国で行われる米韓空軍による合同訓練の名称で、米韓両軍で100機あまりの空軍機が参加。今年は5月11日から25日まで実施の予定です。

アメリカ国防総省は防衛目的であり、毎年行う通常訓練の一つだと強調していますけれども、昨年の「マックスサンダー」では、「模擬標的に対する精密な攻撃演習を集中的に行う」、「地対地、空対空の複合的脅威を想定し、大規模な攻撃編隊で対応する」、「空中訓練」などが行われていましたから、明らかに対北朝鮮を想定しての演習です。今年なら猶のことでしょうね。

朝鮮中央通信は、南北高官会談中止についての責任は韓国側にあると主張。「我々はアメリカと南朝鮮当局の今後の態度を鋭利に見守る」と述べ、「日程に上がっている米朝首脳会談の運命も沈思熟考しなければならない」と警告しました。

責任はお前らにあるというのは、いつもの北朝鮮の口振りですけれども、米朝首脳会談もドタキャンするぞ、と脅しにかかったのは、米朝首脳会談に向けた下交渉を有利に展開したい思惑があるのではないかと見られています。

だとすれば、逆にいえば、今現在行われている米朝間の下交渉は北朝鮮にとっては不満である、ということです。その不満とはいうまでもなく非核化プロセスです。

16日、北朝鮮の金桂官第1外務次官は「我々を追い詰め、一方的な核放棄だけを強要するなら、そのような対話には興味を持たない……朝米首脳会談に応じるかを再考せざるを得ない」と表明。「トランプ政権が朝米関係改善のための真剣さを持って朝米首脳会談に臨むなら、我々の相当する呼応を受けるようになる」と、アメリカに方針転換を要求しています。

北朝鮮が「一方的な核放棄」というのは何かというと、いわずと知れた「リビア方式」です。

リビア方式とは、2003年にジョージ・ブッシュ政権が採用した方式で、当時アメリカはリビアの核関連施設をすべて自由な査察の対象とし、しかも数カ月という短期間に核関連の機材や技術をすべて押収して、しかもアメリカ国内の施設へと運んで破壊しました。

5月に入ってから、ボルトン特別補佐官は、北朝鮮の非核化にはこのリビア方式を大幅に採用すると繰り返し発言しています。

なにせボルトン特別補佐官はジョージ・ブッシュ政権時に、リビアの非核化交渉に携わった経歴の持ち主ですからね。リビア方式とその経緯は熟知しています。

北朝鮮もボルトン氏のことを毛嫌いしています。2003年に北朝鮮の核問題をめぐる六者協議に参加したボルトン氏を「ゴミ人間の吸血鬼」と批判したほどです。

今回も、北朝鮮の金桂冠第1外務次官は、「アメリカが向こう見ずな発言をし、悪意を隠し持っている……我々は過去にすでにボルトンの資質を明らかにしており、彼に対する嫌悪感を隠しはしない」と言い放ち、ボルトン補佐官が北朝鮮の非核化についてリビア方式を採用すべきとしたボルトン補佐官の発言について「対話を通じて問題を解決しようという意図の表現ではない……要するにこれは、国のすべてを大国に明け渡したために崩壊したリビアやイラクのような運命を、尊厳ある我が国に押し付けようとする、非常に悪意のある動きの表れだ」と批判しています。相当嫌がっていますね。

こうして見る限り、米朝の水面下交渉では大分アメリカが押し込んでいるようです。昨日のエントリーで、筆者は金正恩は10年程待つだけで、トランプ大統領は居なくなるから、それを見越した戦略を立てているのではないか、と述べましたけれども、アメリカが北朝鮮を押し込んでいるとなると、金正恩とてあまり安穏とはしていられなくなる可能性があります。

それは、北朝鮮内部でクーデターの危険が高まるということです。

「経済制裁に泣きを入れてきた北朝鮮」のエントリーでも述べましたけれども、経済制裁の影響は北朝鮮労働党幹部など上流階級にも及んでいます。

金正恩"将軍様"が、アメリカを向こうに回して、外交交渉をやり、体制保証を勝ち取った筈なのに、いざ、核廃棄が行われる段になると、アメリカ軍が乗り込んできては、ミサイルを運び出し、核技術データの廃棄と核技術者の強制移住が行われるのです。金正恩についてきた軍部や上層部はいい気持はしないでしょう。

それでも、まだ経済制裁が解除されて、食料なり何なりが手当てされるなら兎も角、核廃棄が完全に行われるまで経済制裁が解除されないとなると、彼らには、まるで占領下の敗戦国と変わらないような扱いに映る筈です。

今月7、8日に金正恩は中国・大連に飛び、習近平国家主席と会談していますけれども、その席で、「アメリカが『永久的核廃棄』を要求していることに関連し、アメリカが戦勝国のような態度を見せている」と不満を吐露していたそうです。

今現在でこうなのですから、本当にリビア方式で核廃棄が行われたとしたら、北朝鮮軍部や上層部は気が気でないでしょうね。なにせリビアのカダフィ氏は、正にその「リビア方式」で核開発計画を放棄させられた後、反体制派によって殺されました。

金正恩本人は元より、北朝鮮軍部や上層部もその事は念頭にある筈です。

しかも、トランプ大統領は、先日イラン核合意から離脱して、たとえ、金正恩体制を保証しても、状況によってはいつでも反故に出来る事を示しています。

北朝鮮は疑心暗鬼になっている筈ですね。

金正恩は米朝首脳会談をドタキャンするぞ、と脅してみせていますけれども、その突っ張りがどこまで通用するのか。要注目ですね。
 

コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. 戦時は便衣兵
    • 2018年05月17日 07:52
    • トランプの意思は既に北解体で固まっている。残されている選択肢は、黒電話が白旗を揚げるか、北全土が軍事攻撃にさらされるかの二択。
      文は、北の核を梃子に朝鮮統一して、敵国日本を植民地化する妄想をしているらしいが、残念。トランプ及び安倍の方が上手だったようだ。
      日本国内では、外患誘致罪の発動が眼前に迫ってきた在日勢力が、様々な悪足掻きを試みているが、やればやるほど、日本国民にその正体がバレるという悪循環に陥っている。
      まあ、いざ事が起これば、彼らは殲滅対象。目下のところ、日本国民の被害を何処まで抑えられるかの勝負になっている。
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