更に続きです。



5月16日、アメリカのサンダース報道官は、北朝鮮の非核化プログラムについて、「リビアモデルは我々が採用中のモデルではない……トランプモデルだ」と述べました。

また翌17日、トランプ大統領もホワイトハウスで北大西洋条約機構のイェンス・ストルテンベルグ事務総長の訪問を受けた席で「リビアで我々はその国を破壊した。カダフィとは守る合意がなかった……リビアモデルはずいぶん違うモデル」と述べ、「もし合意に至ることができなければ、そのモデルが発生するだろう」と付け加えています。

これをうけ「リビア方式」は適用しないと報じられていますけれども、トランプ大統領は、合意できなければリビア方式が発生する、といっていますから、全く念頭にない訳ではありません。

更にトランプ大統領は「その会談が開かれるなら開かれるだろうし、開かれなければ次の段階に移る」と述べていますから、その先のシナリオが用意されていることは間違いありません。

それに、サンダース報道官のいう「トランプ方式」なるものが具体的にどういうものなのか言及されていないため、何なのか分かりません。場合によっては「リビア方式」よりもさらに厳しいものである可能性だってある訳です。

アメリカが北朝鮮に求めている非核化プログラムは「完全かつ検証可能で不可逆的(CVID)」か「永久的かつ検証可能で不可逆的(PVID)」であって、北朝鮮がいう「段階的に云々」ではないのですね。

万が一、アメリカが妥協して北朝鮮寄りの内容で合意したとしたら、それはこれまでのものと何ら変わりありません。これまでの失敗は繰り返さないとするトランプ政権の方針とは相いれません。

トランプ大統領は米朝首脳会談を行う方針に代わりはないとしていますけれども、北朝鮮の態度硬化によって、その行方には不安定さが出てきました。

もっというと会談が始まる前に終わることだって可能性としてはなくもありません。

16日、麻生副総理は東京都内での講演で、米朝首脳会談について「あの見てくれの悪い飛行機が無事シンガポールまで飛んでいってくれることを期待するが、途中で落ちたら話にならん」と述べました。

無論、北朝鮮の金正恩委員長が搭乗する専用機が襤褸いことへの言及です。

北朝鮮が保有する専用機は1963年開発の「イリューシン62型機(IL-62M)」というもので、現在では初期型のIL-62はほぼ全機引退し、IL-62Mや改良型のIL-62MKを残すのみ。

多くの先進国では騒音規制に引っ掛かる為、乗り入れ自体が難しくなっている機体ですね。

航続距離も諸元では10000キロとなっていますけれども、韓国紙中央日報によると、北朝鮮にIL-62Mが導入されたのは1970年代で、老朽化が進んでおり、5000キロ以上の航続距離は負担になるそうでる。米朝会談が行われる予定のシンガポールは平壌から約4700キロですからギリギリです。

また、航空評論家の秀島一生氏によると、IL-62Mは、国際民間航空機関の安全基準をクリアできるかも怪しい上に、世界的にあまり使われていない機体であるため、急なトラブルが発生しても、整備に対応できない国がほとんどなのだそうです。

もしも、麻生副総理のいうように"途中で落ちたら"、洒落になりません。

或いは、何者かが金正恩専用機に"細工"することが出来れば、事故に見せかけて"始末"することだって出来なくもないのですね。

まぁ、麻生副総理が金正恩専用機に触れましたから、当然向こうも警戒するわけで、その意味ではそうなる可能性はうんと低くなったと思われます。日本のマスコミは麻生副総理の発言を"不謹慎だ"と叩いていますけれども、麻生副総理が敢えて、言外の意味を匂わせながら発言したのだとしたら、米朝首脳会談を巡って水面下で相当色んな動きがあるのかもしれません。

6月12日まで目が離せません。
 

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