今日は久々に科学技術エントリーです。
風力発電の新しい潮流です。
風力発電といえば、高い鉄塔に取り付けられた大きな羽根がクルクル回るイメージが思い浮かびますけれども、風力発電の象徴ともいえる「羽根」を無くした風力発電が開発されました。
スペインのヴォルテックス・ブレードレスという会社が発表した風力発電機「Vortex」がそれです。
Vortexは、カーボンファイバーとガラス強化繊維で作られた細長い円錐の柱で、それを地面に刺して発電します。
Vortexは上下2つのパーツに分かれていて、上部が風を受けるマストの役目を果たします。上部は、風を受けると、上部全体に沿って風が渦となって、回転するよう空気力学的に設計され、下部には、交流発電機と反発する磁石のリングが2つ取り付けられています。
風を受けたVortexの上部部分はゆらゆらと振動し下部に伝えます。下部の磁石リングによって増大された振動を交流発電機が受け取って電気エネルギーに変換する仕組みです。
この羽根のない風力発電機という画期的なアイデアはある橋の崩落がヒントになっています。
1940年7月1日、アメリカのワシントン州タコマ市の入り組んだ海峡部に掛けられたタコマ・ナローズ橋が開通しました。ところが、わずか4ヶ月後の11月7日にタコマ橋は風速19m/秒の横風を受け、ひどくうねりながら揺れ、崩落してしまいます。
崩落の原因は「風の渦」が起こした振動でした。タコマ・ナローズ橋は橋桁が特に薄く、簡単にたわんでしまう構造を持っていました。そこに横から強い風を受けると振動を始め、橋の上下それぞれに空気の渦を生み出すことが分かりました。その空気の渦によって橋は一段と振動し、激しくなった振動でさらに空気の渦が大きくなる、といった悪循環で大きな振動エネルギーが引き起こされてしまったのですね。
そこに着目したのがヴォルテックス・ブレードレス社です。
Vortexは棒の上部に当たる風による渦を利用して上部を左右に細かく振動させ、その大きな力を発電に使います。
Vortexの構造はシンプルですから、製造コストは従来の羽根付風車の53%、運転コストは51%、メンテナンスコストは80%削減。二酸化炭素の排出も約40%減を実現しています。勿論、羽根がありませんから、鳥が衝突するいわゆる「バードストライク」の危険も非常に少なくなります。
唯一、発電効率だけは従来の羽根タイプのものと比べて劣るそうですけれども、羽根タイプと比べて場所を取らないので、数多く立てることである程度カバーできるでしょう。
これは筆者の妄想かもしれませんけれども、日本に限っていえば、電柱の上にこれを取り付けることができれば、発電と送電を纏めてできるのではないかとも思ってしまいます。
風力発電機から羽根を取り去る。何だかどこかのメーカーの羽根の無い扇風機を連想させますけれども、凄いアイデアだと思います。
例えば、僻地に大型のVortexを設置して、蓄電池と併用すれば、ある程度の電力が賄えるかもしれませんね。
コメント
コメント一覧 (2)
kotobukibune_bo
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がしました
利用できるのは。
本数多くたてれば、まあ、それだけ、場所もいるし、その場合風の影響がどうなるか?
ということも問題になりそうですね。
kotobukibune_bo
t
がしました