今日はこの話題です。



5月21日、アメリカのペンス副大統領は、FOXニュースのインタビューで、北朝鮮が完全な非核化に応じなければ、トランプ大統領が米朝首脳会談が始まってからでも取りやめることがあり得ると警告しました。

更に、ペンス副大統領は「金正恩がドナルド・トランプをだますことができると思うなら大きな間違いである……私はトランプ大統領が宣伝戦を考えていると思わない。トランプ大統領は平和を考えている」と念を押しています。

完全な非核化で合意できなければ、交渉中でも席を立つ、ということは、答えは初めから決まっているということです。完全な非核化は会談の前提であって、残るのは具体的にどうやるかだけ。北朝鮮が主張する段階的な処置など論外。トランプ大統領の姿勢は少しも変っていないという訳です。

ただ、金正恩が米朝首脳会談の中止を警告しだしたことについては、トランプ大統領にとって意外だったらしく、20日に急きょ行われた、米韓首脳電話会談で、「なぜ北朝鮮の談話の内容は、南北首脳会談後に文大統領が伝えてくれた内容と相反しているのか」と文大統領を問い質したようです。

昨年1月のエントリー「トランプの素顔」でも述べましたけれども、一見無茶苦茶なように見えて、トランプ大統領は気配りのできる人です。

昨年2月に日米首脳会談が行われ、安倍総理とトランプ大統領がゴルフ外交をしている最中、北朝鮮が弾道ミサイルを発射しました。その一方を聞いた直後の夕食会で安倍総理が会見を行いたいというと、トランプ大統領が「自分も一緒に出てメッセージを出そう」と申し出ました。この話を聞いて筆者はなるほど、道理でトランプ大統領は良い奴だと言われる訳だ、と思ったのですけれども、強面な反面そういう一面も持ち合わせているのですね。

シンガポールで行われる予定の米朝首脳会談にしても、トランプ大統領自身は板門店での開催を望んでいたと伝えられています。側近たちは板門店での米朝首脳会談開催は「北朝鮮の非核化」という目標以上に、「朝鮮戦争の終結」がクローズアップされるからと反対され、板門店での首脳会談は取りやめになりましたけれども、一応の同盟国である韓国を立てる面もあったのではないかと思うんですね。

それだけに、その気配りを無碍にする形で裏切ったりしようものなら、手厳しい「しっぺ返し」が待っていると思います。

安倍総理がトランプ大統領の信頼を勝ち得ているのも、その人柄のみならず、安倍総理の発言に嘘がなく、その内容が的を得ているからでしょう。特に北朝鮮関連については、そうです。

トランプ大統領は事あるごとに「シンゾーの言う通りだ」と信頼を寄せています。

元日経新聞編集委員の鈴置高史氏は、北朝鮮の態度硬化について「譲歩するかに見せて見返りをかちとり、最後はうやむやにしてしまう、これまでの成功を再現したいのです」と指摘し、けれども、"何をするか分からない"トランプ大統領には通用しないことに気づいて困惑していると述べています。

今月5日、トランプ大統領が500億ドルに相当する中国からの輸入品1300品目に25%の関税を課す原案を公表したところ、中国が猛烈に反発し同じく500億ドル相当の報復関税を発表。米中貿易摩擦が起こりました。

ところが、トランプ大統領は一歩も引かず、5日には中国の知的財産侵害に対する制裁関税について新たに1000億ドルの積み増しを検討すると発表しました。

この問題は、最後に中国が折れ、アメリカ製品の輸入を増やすと表明したことで、アメリカの対中制裁関税は一旦棚上げとなりました。

また、先のイラン合意の撤退の件もあります。北朝鮮にとってみれば、いつものように、口先で嘘をついて騙そうとしても、トランプ大統領はその"合意のちゃぶ台"をいつひっくり返されるか分からない訳ですね。

確かにこれでは迂闊に"約束"などできません。

金正恩は果たして米朝首脳会談に臨むのか。事態は風雲急を告げてきました。
 

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