今日はこの話題です。
5月24日、アメリカのトランプ大統領は北朝鮮の金正恩委員長にあてた書簡で、6月12日に予定していた米朝首脳会談を中止すると通告しました。
こちらにその書簡の全文が報じられています。
言葉を選んではいますけれども、その内容は実に強烈です。ビジネス文書とみてもほぼ絶縁宣言に近いものがありますし、「アメリカが保有する核戦力は非常に大規模かつ強力なものだ。私はそれが決して使われないことを神に祈っているが」辺りのくだりは、脅しといってもいい程です。
この書簡に北朝鮮はブルッています。
直前まで「北朝鮮政府はアメリカに対話してほしいと"お願い"などしないし、会談に出席するよう説得もしない」、「アメリカが我々と会議室で会うか、核対核の最終決戦で対決するのかは、完全にアメリカの決断と振る舞いにかかっている」と凄んでいたのですけれども、書簡が公表されて直ぐに「われわれはいつでも、いかなる方法でも対座して問題を解決する用意がある」と折れました。
こちらに北朝鮮の金桂寛第1外務次官の談話がありますけれども、これまでの挑発発言は「一方的な核廃棄の圧力をかけてきたアメリカ側の度を越した言行が招いた反発にすぎない」と釈明。トランプ大統領が米朝首脳会談を決めたことを「ずっと内心で高く評価してきた」と持ち上げています。
もう腕がねじ切れんばかりの"手の平返し"ですね。トランプ大統領の中止発表が相当に堪えたようですね。
これまで北朝鮮は、アメリカとの米朝首脳会談の準備会合をすっぽかすなど強硬な態度を見せていたそうですけれども、トランプ大統領の中止発表で、一転立場が逆転しました。
金桂寛第1外務次官の談話では、それでも「一度で満足な結果を得られないが、一つずつでも段階別に解決していくなら現在より関係が良くなるはずで、より悪くなるはずはない」などと、段階的解決を主張していますけれども、アメリカから歩み寄る理由はありません。北朝鮮が土下座してくることを待って居ればよいだけです。
では、今後アメリカはどう動いてくるのか。
ネット等では戦争不可避だとの声もありますし、トランプ大統領もマティス国防長官らに対し、必要であれば軍事的な態勢を整えるよう命じたことを明らかにしています。
ただ、それでもすわ即開戦とはならないと思います。
ブルームバーグは、トランプ政権の高官は、アメリカによる金委員長への圧力はまだ最大限に達していない、と発言している事を伝えていますけれども、まだ圧力を掛ける余地が残っているということですね。
真っ先に思い浮かぶのは、海上輸送の臨検です。
先日、韓国の東シナ海の公海上で北朝鮮船籍のタンカーに、韓国船籍のタンカーが横付けしているのを海上自衛隊が確認していたことが明らかにされ、北朝鮮が制裁逃れのための「瀬取り」をしているのではないかと報じられていましたけれども、ああした行為が行われないよう取り締まることが考えられます。
更には、金正恩の資産凍結という切り札もあります。
事実、昨年9月に採択された北朝鮮に対する国連制裁決議の草案には、金正恩の資産凍結の項目が含まれていました。これは最終的に見送られましたけれども、まだそういったものも残っています。
ただ、資産凍結は北朝鮮が求め、アメリカも保証するといっている北朝鮮の体制保証を揺るがすものでしょうから、どこまで踏み込めるかは不透明です。
いずれにせよ、アメリカは、さらに一段と制裁レベルを上げることは不可能ではないのですね。
そんな中、25日、CNNテレビはトランプ大統領が「6月12日の米朝首脳会談もまだあり得る」と述べたと伝えています。おそらく金桂寛第1外務次官の発言を受けてのことでしょうけれども、やはり駆け引きが上手いですね。
対北朝鮮交渉で一段上に立ったトランプ大統領。目が離せません。
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