更に続きです。



5月27日、欧州を歴訪している韓国の李洛淵首相はロンドンで特派員および記者団との昼食会で「アメリカが、非核化問題に関して韓国はあまり深く入り込まないでほしいという要請を行った」と述べました。

李首相はその理由として、アメリカが北朝鮮の非核化は米朝二国間で協議したい意向があるからとし、「板門店宣言の『完全な非核化と核なき韓半島(朝鮮半島)を目標にする』という表現も、アメリカと協議した内容」だと明らかにした上で「韓国が乗り出すことで事態がこじれかねないという問題もあるが、アメリカにハンドルを渡すのがいいという判断から、韓国政府は発言を控えている」と語りました。

アメリカは、米朝首脳会談の直前に日米首脳会談を行うことを考えると、同じ同盟国に対する要請としては異例といっていいでしょうね。

韓国に余計な口を挟ませるな論は、アメリカのマスコミでも主張されています。

28日、「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」は社説で、韓国の文大統領が「段階的・同時的な非核化」という北朝鮮の主張を受け入れたことについて「これは、北朝鮮が核実験場訪問の許可といった段階的な措置を取っただけでも支援をすべき、ということを意味する」と述べ、「文大統領は、経済支援をすることで金正恩国務委員長を手なずけることができると信じているが、アメリカと日本にとって核弾頭ミサイルは実際的な脅威だ……首脳会談はアメリカの国益に直結するため、アメリカの安全保障よりも別のことを優先する韓国の大統領に、下請けのような形で首脳会談の過程や結果を任せてはならない」と指摘。

そして、韓国が同盟国よりも北朝鮮のほうに傾倒しかねないという懸念が出ていることから、アメリカ政府でも、北朝鮮との非核化交渉への韓国の介入を最低限に抑えるべきとの主張が出ているとし、「韓米vs北朝鮮ではなく、ともすれば『韓国・北朝鮮vsアメリカ』という構図になりかねないとの懸念が示されている」とも述べています。

日本からみれば何を今更という感じなのですけれども、流石にアメリカ政府もそこまでお人よしではなかったようです。或は、安倍総理のアドバイスなりなんなりが入っているのかもしれません。

どうやらアメリカは米朝首脳会談が二国間協議になるよう巧みに手を打っているという見方があります。

筑波大学名誉教授の遠藤誉氏は、トランプ大統領が5月16日以降の北朝鮮の態度の変化を「中国のせい」にしておいて、それもちらつかせながら米朝首脳会談を中止した意図について、金正恩が中国に泣きつかせないようにすると同時に、中国にも北朝鮮に手を差し伸べさせないようにしたのだ、と指摘しています。

先日、トランプ大統領が中国のせいにしたことについて、中国は「邪な意図はない」と啖呵を切っていますからね。確かに手を出しにくいでしょうね。

そこに加えて、アメリカは韓国にも介入するな、と釘を刺していたとなると、やはり二国間協議にもっていく狙いがあるとみてよさそうです。

筆者は、「北朝鮮の政変と金正恩の起死回生の一手」のエントリーで、北朝鮮がここから逆転を狙うにはもう中韓を巻き込んで、半島の非核化から朝鮮戦争終結への世界の目を誤魔化すくらいしかないのではないかと述べましたけれども、アメリカの中韓への牽制は、それを未然に防ぐものでもある訳ですね。

けれども、そんなアメリカの下準備をぶち壊す空気の読めない国がいます。口を出すなと釘を刺された当の韓国がそうです。

既に、文在寅大統領の外国訪問の準備を担当する職員がシンガポールに入って文大統領が宿泊するホテルの下見などを進めているようです。

文大統領も27日、記者会見で「米朝首脳会談が成功すれば、3ヶ国の首脳会談を通じた終戦宣言も進むと期待している」と述べています。あわよくばシンガポールで3ヶ国の首脳会談を開いて、朝鮮戦争の終結を宣言することを狙っているのかもしれません。

これは先にも述べたとおり北朝鮮の非核化をぼやかすものとなり得ます。とてもアメリカがそれを許すとは思えません。

既に、米朝首脳会談に口を出すなといわれているのに、シンガポールにやってこようとする。アメリカにしてみれば鬱陶しいことこの上ないでしょうね。

ウォール・ストリート・ジャーナルが警告しているように北朝鮮問題は『韓国・北朝鮮vsアメリカ』の構図になっていると認識して事にあたった方がよいかもしれませんね。

たとえ、文大統領がシンガポールにノコノコと来たとしても、トランプ大統領は会わずに戻るだろうと思いますね。

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