今日はこの話題です。
5月31日、アメリカのポンペオ国務長官は、ニューヨークで北朝鮮の金英哲・朝鮮労働党副委員長兼統一戦線部長と会談後に記者会見し、米朝首脳会談を巡り、「大きな進展があった」と述べました。
けれども、「まだ多くの課題が残っている……米朝が合意をするためには金正恩国務委員長の大胆な決断が必要で、今回の機会を逃すことは悲劇……金委員長はそのような決断を下せる指導者で、今後数週間か数か月間、私たちはそれが行われるかを試す機会を持つ」と述べました。
翌6月1日にはトランプ大統領が金英哲・党副委員長から金正恩委員長の親書を受け取った後、記者団に対し、米朝首脳会談は予定通り12日にシンガポールで会談すると明言しました。
トランプ大統領は金正恩委員長に非核化の意志はあるとし、「首脳会談は非常に成功するプロセスになるだろう」と述べる反面「6月12日に何かに署名するつもりはない」とも述べています。
これは、非核化の方法などで米朝の隔たりは埋まっていない為とみられ、1回の会談で最終合意は目指さない考えを明らかにしました。
また、トランプ大統領は、「我々は仲よくなりつつあるので、もう最大限の圧力ということばは使いたくない。対話が破綻するまで新たな制裁はかけない。北朝鮮が非核化に応じないかぎり、制裁は解除しないが、解除できる日が来ることを楽しみにしている」と、米朝交渉が行われている間は新たな制裁を科すことはないとも語りました。
更に、トランプ大統領は会談後の対北朝鮮経済的支援について「アメリカが資金を支出すべきだとは思わない。韓国がそのようにするはずであり、日本も支援するだろう……中国、正直、中国が助けると思う。また、日本が助けると考える」と答え、「我々には3人の人質がいた。彼らのために我々がどれほど多くの資金を使ったか……アメリカは資金を出さないだろう……我々は遠く離れているが、彼らは隣国だ」と話しています。
6月12日の会談で全ては終わらないというトランプ大統領のコメントは北朝鮮にとっては、ちょっと痛手ですね。なぜなら、非核化に応じない限り制裁は解除しないとしているからです。
北朝鮮は段階的処置を主張し早期の経済制裁解除を狙っているのですけれども、6月12日でトランプ大統領が署名しなければ、少なくとも、その時点での経済制裁解除はない訳です。
つまり、北朝鮮が段階的非核化処置を引っ込めないのに対して、トランプ大統領は米朝会談そのものを"段階的"に行うと返した訳です。
非核化に応じない限りは経済制裁は続けるということですから、非核化の口約束だけをして経済制裁を緩和してあとは知らんぷりをしようといういつもの北朝鮮の手は使いにくくなりました。
トランプ大統領の"取引手腕"は中々大したものだと思いますね。
と同時にトランプ大統領は対北朝鮮経済的支援については韓日中が行う筈だ、と振りました。韓中については、知りませんけれども、日本に関していえば、拉致問題が解決しない限り経済支援もない、と言っています。この線は譲らないでしょうね。
トランプ大統領自身、アメリカ自身は経済支援しない理由として「我々には3人の人質がいた。彼らのために我々がどれほど多くの資金を使ったか」と述べています。日本は3人どころではありませんからね。日本は拉致被害者の為にどれだけ資金を使ったと思っているのか、解決まで支援は在り得ないと同じロジックでつっぱねればいいだけです。
当然北朝鮮もそれを分かっているのでしょう。
6月2日、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙、労働新聞は論評で、日本人拉致問題は「既に解決した」と改めて主張し「それを騒ぐ前に、わが国を占領し人民に耐え難い不幸と苦痛を与えた前代未聞の罪悪について謝罪、賠償するのが道理だ」と日本を牽制しています。
無論、日本はそんな戯言を受け入れる訳にはいきませんし、それもこれも米朝首脳会談が上手くいってからの話です。
ただ、米朝会談を複数回行うといっても、延々と続けてしまえば、北朝鮮の時間稼ぎを助けることにもなりかねません。経済制裁によって、ミサイルも飛ばせず、軍も動かせない状態であるならまだしも、今現在はそこまでとは思えませんし、そこまで追い詰めるにはどれだけ時間が必要かもわかりません。
おそらくトランプ大統領も何某かの交渉期限を決めているかと思いますね。
では、それはいつなのか。
日本政府は、8月1日から4日にかけてシンガポールで開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議に合わせ、河野太郎外相と北朝鮮の李容浩外相が会談する案を念頭に、日朝間でやり取りをしているようです。
もちろん、米朝首脳会談の進展にもよりますけれども、日本政府も米朝交渉は二ヶ月程度だろうと見ているということですね。
ただ、二ヶ月の間に何度も米朝首脳会談が行われるとはちょっと思えません。せいぜい2回くらいではないかと思われます。
それを考えると、軍事制裁を含めたなんらかの決断は8月までに行われる可能性はまだあると見るべきではないかと思いますね。
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