今日はこの話題です。
安倍総理は6月7日に行われる日米首脳会談で、日本人拉致問題に関し、米朝首脳会談で金正恩委員長が「解決済み」と主張してきても、決して受け入れないよう要請する方針を固めました。
これは、既に北朝鮮が拉致問題は解決したとして、日本に謝罪と賠償を要求していることを受けてのものですね。北朝鮮は再三再四、拉致問題は解決した、と牽制を続けています。
3日、北朝鮮の祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」は論評で「アメリカの手下にすぎない日本反動らが『最大の圧迫共助』をわめき立てている……そんな醜態がもたらすのは現在のような『日本疎外』現象だけだ」と非難。
続けて4日の論評では拉致問題を「既に解決された」「白紙化された」とし、「過去にわが国を占領し、わが民族に与えた前代未聞の罪をまず謝罪し、賠償すべきだ」と述べています。
また、同じく4日、朝鮮中央通信は日本人拉致問題は「すでに解決済み」であるとする論評を配信し、その中で「国際社会は対話と信頼だけが問題解決の基本方途であり、一方的な圧力と敵視はむしろ、事態を悪化させるだけだということをさらに実感している……日本が新しい時代の環境に適応できず、すでに解決済みの『拉致問題』などを持ち歩いて引き続き対朝鮮対決に奔走するなら、世界の嘲笑を買い、歴史の外に永遠に押し出される」と主張しています。
これほど何度も日本を批判してくるのは、もちろん経済支援が欲しいからです。
5月23日、菅官房長官はトランプ大統領が、北朝鮮が非核化に応じれば日中韓3カ国から経済支援が得られると述べたことについて「拉致・核・ミサイルといった諸懸案の包括的な解決なしに国交正常化はあり得ず、経済協力も行わない」と明言しています。拉致だけでなく"諸懸案の包括的な解決"です。
この点について日本は少しもブレていませんし、ブレてはいけません。安倍総理がトランプ大統領に拉致問題は解決していない、と釘を刺す積りでいるのも、その文脈で捉えるべきものだと思いますね。
米朝首脳会談ばかり注目される北朝鮮ですけれども、ここにきてまた別の"蠢動"を見せ始めています。
5月31日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が、北朝鮮を訪れ、平壌で金正恩委員長と会談しました。
ロシア通信によると、ラブロフ外相はプーチン大統領の親書を携え、9月11~13日にウラジオストクで開かれる国際会議「東方経済フォーラム」に合わせ、露朝首脳会談を行いたい旨を伝えています。朝鮮中央通信によると、プーチン大統領との首脳会談開催について、金正恩委員長も応じたようです。
これだけなら、今の北朝鮮問題について、アメリカ主導の非核化協議を牽制し、ロシアも存在感を見せたいのだな、というくらいで終わるかもしれませんけれども、どうやらそれだけではない話もあるかもしれません。それはシリアの存在です。
6月3日、朝鮮中央通信は、シリアのアサド大統領が北朝鮮を公式訪問する意向を明らかにしたと伝えました。これは、5月30日、新任した文正男・駐シリア大使の信任状捧呈式でアサド大統領が「金正恩に会う」と述べたと報じました。ただ今の所、その時期については明らかになっていません。
シリアは北朝鮮の友好国です。
北朝鮮とシリアは1966年に国交を樹立。1973年10月の第4次中東戦争では、北朝鮮がシリアに部隊や武器を提供しています。
また、両国は否定していますけれども、国連の専門家パネルは、シリアと北朝鮮が化学兵器開発で協力し合っていると報告しており、それによると、2012年~2017年にかけて北朝鮮がシリアに40回にわたり、化学兵器製造に使える耐酸性のタイルやバルブ、パイプなどを提供したという内容です。
つまり、北朝鮮とシリアは化学兵器で繋がりを持っている可能性があるということです。
これはただの妄想に過ぎないかもしれませんけれども、筆者は、もしかしたら、金正恩委員長は、核を棄てさせられた時のバックアップとして化学兵器の技術を保持しようと画策しているのかもしれません。
例えば、化学兵器開発に従事した科学者を極秘裏にシリアに逃がすとか。或は、ロシアが盾代わりとなって、化学兵器技術者や開発設備をシリアと北朝鮮に提供またはレンタルして、ロシア国内で極秘に化学兵器開発を研究させるとかなどもありえなくもありません。
その詳細の打ち合わせの為にアサド大統領が北朝鮮に来るとしたら……
ちょっと過激な妄想かもしれませんけれども、北朝鮮とシリアの窮乏を考えると両国とも渡りに船といった話にはなり得ます。
仮にこの"妄想"が本当だったとして、では、なぜロシアがそんな「死の商人」紛いの行為をするのか。
その理由があるとすれば、おそらくアメリカとの関係改善だと思いますね。
先日、トランプ大統領はイラン核合意からの離脱を表明していますけれども、筆者は5月10日のエントリー「トランプ大統領が放ったイラン核合意破棄というメッセージ」の中で、北朝鮮が核開発技術を一時的にイランに逃がして隠すことが出来ないように先回りしたのだ、と述べましたけれども、これが本当だとすれば、アメリカは同じ事を今度はロシアに対して行うことが予想されます。
つまり、北朝鮮からの化学兵器開発技術者の受け入れはするな、と取引をするのではないかということです。
其の為には、アメリカはロシアに対し、取引のカードを用意しなくてはなりません。圧力を掛けるにはそれなりの理由が要るからです。誰もが納得する表立った理由がない場合は取引によって、欲しいものを得るのは交渉の常套手段ですね。
6月1日、ウォール・ストリート・ジャーナルは、アメリカとロシアとの間で、トランプ大統領とプーチン大統領の首脳会談の実現に向けて、初期の調整を進めていると報じています。
アメリカは対ロシア制裁をいくつか行っていますけれども、或いはこれらの一部解除などを取引材料にして、北朝鮮の化学兵器の拡散および開発をさせないように交渉するかもしれません。
もしも、北朝鮮がこのような背景があった上で"策動"を巡らせているとするならば、12日の米朝首脳会談では、それこそ「全てアメリカのいう通りの方式での100%の非核化を受諾します」と宣言し、世界をあっと言わせるかもしれません。
たとえ、核が無くなったとしても、世界最強のアメリカから体制保証を取り付ければ、中国への牽制力が弱まりこそすれ、即座に潰される心配は遠のきますし、化学兵器さえ残っていれば、韓国、日本などはいくらでもテロで脅せる訳ですからね。
以上はあくまでも筆者の"妄想"ですけれども、ロシアとシリアが北朝鮮に絡んでくるとなると、ちょっとそうした心配もしてしまいますね。
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