今日はこの話題です。



6月5日、アメリカ・ホワイトハウスのサンダース報道官は、12日に開催される米朝首脳会談の開催場所について、シンガポール本島の南にあるセントーサ島のカペラホテルとなることを明らかにしました。

カペラホテルは、最高級の部屋の宿泊費が1万シンガポールドル(約82万円)にも及ぶシンガポール屈指の高級ホテル。マレー語で「平和」を意味するセントーサ島のほぼ中心にある小高い丘の上の広大な敷地にあり、タナメラと呼ばれる英国統治時代に建築されたコロニアル様式の歴史的建物を使用しています。

更に、この建物を中心に8の字を描いたもう一棟の客室棟があり、華僑の多いシンガポールで、中国では幸運ナンバーとされる八の字型を新感覚で採用したとも言われています。

セントーサ島は、シンガポール本島とは約700メートルの連絡道路、モノレール、ロープウエーの3ルートで接続されているだけで、周辺を警備しやすいからというのが、このホテルを会談場所に選んだものと見られています。

5日、アメリカのポンペオ国務長官は国務省でシンガポールのバラクリシュナン外相と会談し、シンガポール側の協力に謝意を示したそうですけれども、シンガポールにとっても、会談が成功すれば、国際的な存在感や安全度への信頼感が高まり、国益につながることから相当に気合いが入っているようです。

地元メディアによると、飛行機や車の乗り降りなどでも片方が見劣りすることがないよう、シンガポール側が車を貸すなどの対応も検討され、果ては、コーヒーの味すらも東南アジアの特徴を薄め、より国際標準に近づけることになる、とも伝えられています。

気を使うという意味では、当然、北朝鮮の金正恩委員長も同じです。

6月6日、北京消息筋などによると、中国は金正恩委員長の護衛も検討しているようです。

金正恩委員長が専用機でシンガポールに行くためには平壌を出発してそのほとんどを中国領空内を飛ぶのですけれども、これに備えて、中国は金正恩委員長専用機の護衛に自国の戦闘機編隊を動員するなどの最高水準の優遇を検討していると伝えられています。

筆者は6月1日のエントリー「アメリカの斬首作戦が成功する条件」の中で「金正恩が自分の専用機ではなく、一度中国に寄って、習近平主席と一緒に中国機で往復する場合も、中国は安全確保の名目で戦闘機を護衛につけてくるだろう」と述べましたけれども、やはりそれに準ずる対応を行いそうですね。

米朝首脳会談を控え、ワシントンに向かった安倍総理は記者団の質問に「トランプ大統領と会談を行い、核ミサイル問題、そして何よりも大切な拉致問題が前進するよう、しっかりと大統領とすり合わせを行い、米朝首脳会談を成功させたい」と述べていますけれども、アメリカは拉致問題に本気だという指摘もあります。

アメリカの弁護士資格を持つ、湯浅卓氏は、トランプ大統領は拉致問題の完全解決を狙っている、とし、その理由として、拉致被害者全員を完全解放する、という行為は、これまでの金正恩委員長の残虐非道な振舞いを悔い改めること、即ち、贖罪を意味するからだ、と指摘しています。

アメリカは力の国家であるものの社会の支柱には宗教があり、それ故に贖罪が意味を持つのだ、というのですね。

この指摘が本当なのであれば、米朝首脳会談で拉致問題解決も議題に上ることになるでしょう。

その視点からみれば、アメリカは既にその準備を行っている節があるといえなくもありません。

6月3日、ポンペオ国務長官は、「罪のない人々の命が奪われた悲劇を忘れない」とする声明を発表し、1989年6月4日、中国共産党が天安門広場周辺で行われていた平和的な民主化運動を戦車で鎮圧した、忌まわしき「天安門事件」について、「わが国は国際社会と一致団結し、事件の死者、非拘束者、行方不明者数の完全な公式統計を公表するよう、中国政府に求める」と述べ、更に民主化運動に参加した人と家族に対する嫌がらせをやめるよう中国政府に要求しました。

痛い所を突かれた中国は猛反発しているようですけれども、見方を変えれば、これは北朝鮮に対する拉致問題を有耶無耶にする積りはないというメッセージでもあると同時に、中国に対して米朝首脳会談で行われる拉致問題について余計な口を挟むな、と釘を刺したともいえると思うのですね。

いよいよ会談場所も定まった米朝首脳会談。その成り行きに注目が集まります。
 

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