昨日の続きです。



6月12日夜、安倍総理はアメリカのトランプ大統領と日米首脳電話会談を行いました。

安倍総理は米朝会談でトランプ大統領から日本人拉致問題を提起したことについて「私がトランプ大統領に伝えた私の考えについては、トランプ大統領から金委員長に明確に伝えてもらった」と謝意を伝え、更に非核化についても「金委員長が朝鮮半島の完全な非核化について、トランプ大統領に明確な約束をした。その意義は大きい」と評価しました。

13日、自民党の萩生田光一幹事長代行が、アメリカ側から伝えられた話として、金正恩が、米朝首脳会談で日本人拉致問題について「解決済み」とする従来の北朝鮮の立場に言及しなかったことを明らかにしています。

昨日のエントリーで筆者は、トランプ大統領が提起した拉致問題を金正恩が否定しなかったら、拉致問題が存在すると認めることになる、と述べましたけれども、どうやらその通りだったようです。

筆者は5月11日のエントリー「金正恩に仕掛けた安倍総理の策」で、これまで日本が北朝鮮に拉致問題解決を直接言わなかったのは拉致問題の主導権を握るためだ、と述べましたけれども、ようやくその条件が整いました。

トランプ大統領は非核化の費用は韓国と日本が出すなどと国内マスコミが報じているようですけれども、こちらで解説されているように、原文では「Well, I think that South Korea and I think that Japan will help them very greatly. I think they're prepared to help them. They know they're going to have to help them. I think they're going to help them very greatly. We won't have to help them. 」と、「助けるだろう」といっているだけで「払う」とはいっていません。

しかも余り確信がある訳でないときに使う「I think」を頭に持ってきています。

これらを考慮すると、少なくとも断定してはいないといえます。

これについて、13日午前、菅官房長官が記者会見で「非核化が進み、IAEA(国際原子力機関)が検証活動を再開する際は初期コストを支援する用意がある」と述べています。

もっとも、これは2月15日に河野太郎外相がIAEAの天野事務局長と会談した際に「いざ北朝鮮が『核を放棄する』と言ったときには、積極的に初期費用をはじめ、IAEAを支援していきたい」と述べていましたし、安倍総理も同様なコメントをしていますから、予定通りといえば予定通りですね。

ただ、トランプ大統領は会談後の会見で声明に"完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)"が入ってないことについて問われ「時間がなかったからだ。ここには1日しかいられない。一緒に何時間も集中的に話し合った。プロセスは行われるだろう」と誤魔化していました。

本当に時間がなかったのか。それとも妥協したのか分かりませんけれども、一応制裁は続けるとしています。ただ、CVIDを明記しなかったことは、北朝鮮に都合のよい解釈の余地を与えた懸念は拭えません。

4月23日のエントリー「安倍総理のサポートは常に決定的なものだった」で、北朝鮮の交渉について、「重要な合意内容について見直しを迫ってきた例はないものの、重要度の高くない内容に関して双方がその意味を共有していると思っていたら、実は重要な部分で理解を異にしていたことがあった」というアメリカ高官の言葉を紹介していますけれども、今回の合意についてもこれがあるとするならば、重要な合意内容は単なる「非核化」で、米朝で理解が異なる部分は「非核化の方法」になるのではないかと思われます。

アメリカの非核化は「完全かつ検証可能で不可逆的」な非核化ですけれども、北朝鮮のそれはおそらくそうではない。「完全でなく、検証もできず、可逆的」な非核化である可能性は念頭に置いておくべきではないかと思いますね。

既に、13日、北朝鮮の朝鮮中央通信はシンガポールで開いた米朝首脳会談の結果を報じ、両首脳が朝鮮半島の非核化を実現する過程で「段階別、同時行動の原則」を順守することが重要だとの認識で一致したと伝えています。超高速な"ちゃぶ台返し"です。

合意文にはCVIDが明記されていないのですから、北朝鮮にしてみれば「合意は破ってない」といくらでも主張できます。なんとなれば「合意を破ろうとしているのはアメリカだ」と逆切れ批判することすら考えられます。

まぁ、それはそれでいつもの北朝鮮ですけれども、そんな事も分からないトランプ政権だとも思えません。米朝首脳会談の拡大会合には北朝鮮の手の内を知り尽くすボルトン補佐官も出席していました。

トランプ大統領は会談後の記者会見で「あなたは1年後にインタビューをし、私は間違いをおかしたかもしれないと言うかもしれない。それはあり得る」と述べていますけれども、この発言を意識して言っているとしたら、北朝鮮が合意を反故にして裏切ることを今から想定していることになります。

果たして、トランプ大統領は騙されたのか、或いは金正恩を罠に嵌めたのか。

その答えは一年後まで待つことになるかもしれませんね。
 

コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. 巳蛙
    • 2018年06月15日 03:13
    • 昔?総書記の肩書きが、
      ここ数ヶ月委員長‥
      突然中国訪問は、亡命打診だった?
      対米外交特化の委員長?
      ものすごいパフォーマンスにはちがいない。
      日本のマスコミ支配も強化?
      麻薬釈迦異にアフターケア?
      中性子爆弾小型水爆も北朝鮮さんは、放射能が多く、待て暫し?
      安倍ちゃんにも亡命打診?
    • 0
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