今日はこの話題です。
6月13日、アメリカのポンペオ国務長官は、北朝鮮の非核化について、「2年半以内にほぼ実現したい」と述べました。
今から2年半といえば、2021年初旬。つまりトランプ大統領の一期目の任期が終わる時期です。
筆者は6月13日のエントリー「米朝首脳会談と時間を味方にする争いの始まり」の中で、非核化についてアメリカは、大統領選挙を睨んでこれから二年くらいが目安になるだろうと述べましたけれども、大凡その予想で動いているようです。
また、ポンペオ国務長官は米韓合同軍事演習について「北朝鮮との非核化交渉が行き詰まれば、軍事演習を再開することになる」との認識も示していますから、例年8月に行っている米韓合同指揮所演習「乙支フリーダムガーディアン」の時期までに核廃棄の具体的プロセスを決めるということなのでしょうね。
それを考えると、トランプ大統領が切った、米韓合同軍事演習中止というカードは非核化プロセスを決めるための北朝鮮へのプレッシャーにもなっているということです。
ある意味、北朝鮮が非核化交渉の為に、経済制裁緩和とか経済支援をしろ、と言う前に、先に米韓合同軍事演習中止カードを切ったことで、北朝鮮に経済支援を言わせないように先手を打ったのだとしたら、やはりトランプ大統領はタフ・ネゴシエーターなのでしょうね。上手い手だと思います。
非核化まで2年半という期限については、日本も了承しています。
16日、河野太郎外相は、神奈川県平塚市で開いた会合で、北朝鮮の核・ミサイル問題について「廃棄を段階的にやっても、経済制裁は段階的に緩むわけではない。完全、検証可能、不可逆的な廃棄を延ばせば延ばすほど、制裁は延びていく」と述べると同時に、ポンペオ国務長官が2021年1月までに非核化の大部分を完了したいと言及したことを支持する考えも示しました。
この河野外相の認識は日米間で共有済みです。
14日に行われた日米韓亜外相会談後の共同記者会見で、ポンペオ国務長官は北朝鮮の非核化について、「CVIDの方針を守り続ける。過去の間違いは繰り返さない……完全な非核化を実現した段階で初めて制裁の解除に移る」と述べています。
いずれにせよ、米朝首脳会談で非核化を目指して合意した、ということが全ての出発点であることは間違いないでしょう。
ここのところ、先の米朝首脳会談の内容について、少しづつリークされてきていますけれども、やはり安倍総理が相当トランプ大統領に助言していたことが明らかになっています。
16日、安倍総理は読売テレビ番組に出演し、「1994年の米朝枠組み合意も、2005年の核合意も米朝両首脳がサインしたものではない。だから簡単に反故にされてしまった」としてトランプ大統領に「あなたと金正恩朝鮮労働党委員長がサインする文書を残してほしい。重みがある」と述べていたことを明らかにしました。
米朝首脳会談後の署名式で、トランプ大統領が記者たちにむけてこれみよがしに合意文書を見せていたのも、安倍総理の助言があったと考えれば納得がいきます。
今後はこの署名文書を盾に履行を迫ることが出来る訳で、これも一つの北朝鮮に対するプレッシャーにはなるでしょう。
尤も、日韓慰安婦合意のように合意しても無視する国もある訳ですから、署名したとてどこまで信用できるか怪しいところはありますけれども、北朝鮮が署名合意した相手は日本ではなくアメリカです。裏切ったら、日本のように甘い筈がありません。それなりの報復があると見てよいかと思いますね。
では、金正恩はどこまで信用できるのか。
まぁ、今までが今までですから信用などとても出来ないというのが普通でしょう。
ただ安倍総理は先に触れた読売テレビの番組で、金正恩について「大きな決断ができる人物……相互不信という殻をお互いに破って一歩踏み出したい。そして解決したい」と述べているのですね。
「大きな決断ができる人物」とは、意外と高い評価です。
これがトランプ大統領が言ったのであれば、話半分でも聞き流せることもあるでしょう。トランプ大統領は、昨日と今日で全く違うことを平気でツイートするくらいですから。
けれども、この台詞は"マジレス"安倍総理です。なんの根拠もないことを口にするとも思えません。番組では米朝首脳会談で非核化に同意したことが大きな決断だと述べていますけれども、あるいは、金正恩が"大きな決断が出来る人"であることを確信できるだけの何らかの情報を得ているのかもしれません。
一方、金正恩は、米朝首脳会談で一対一の会談を終えた後、トランプ大統領に「世界中の多くの人々は、これをSF映画のファンタジーだと思っているでしょうね」と述べたと伝えられています。
この発言は、世界から北朝鮮がどのように見られているかを金正恩は認識している、ということです。これは逆にいえば、どういう行動を取れば、世界の見方が変化していくかも分かっているということです。
その理解に対して、具体的にどう舵取りをしていくのか。すべてはこれからですけれども、近々の米朝開戦はひとまず回避したといえるのではないかと思いますね。
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