更に続きです。



6月22日、アメリカのトランプ大統領は、北朝鮮に対する制裁について「朝鮮半島での兵器に使用可能な核分裂物質の拡散の現実とリスク、および北朝鮮政府の行動と方針は、米国の安全保障、外交、経済に引き続き異常で並外れた脅威をもたらしている」と連邦議会に伝えました。

これは、北朝鮮に対するアメリカの独自制裁のことで、その継続について大統領が1年ごとに判断することになっているのを受けてのものです。

アメリカの対北朝鮮制裁は2008、2010、2011年、そして2015年から2017年に出された大統領令によって発動されています。

それらの内容は大凡次の通りです。
2017年9月
・北朝鮮と取り引きする海外の銀行や企業、北朝鮮の8つの銀行、中国・ロシア・リビア・UAE=アラブ首長国連邦で北朝鮮の金融業務に携わってきたとされる26人を制裁対象に追加

2016年12月
・北朝鮮が核実験を強行したことを受けて、海外に労働者を派遣して外貨稼ぎを行っているとして北朝鮮の国営企業4社を新たに制裁の対象に加え、アメリカ国内の資産を凍結したりアメリカとの取り引きを禁止したりする措置

・ミサイルの部品などを輸送したとして国営のコリョ航空など、合わせて16の団体と7人の個人を新たに制裁の対象に加え、アメリカ国内の資産を凍結したりアメリカとの取り引きを禁止したりする措置

2010年8月
・韓国の哨戒艦が北朝鮮の魚雷攻撃によって沈没したとされる事件を受けて、オバマ前大統領は、北朝鮮指導部の資金調達に関わる3つの団体と個人1人の資産の凍結を命じる大統領令に署名

2008年6月
・対敵国通商法 (TWEA) の下で凍結された朝鮮関連資産は引き続き凍結され、アメリカ人による朝鮮で登録された船舶または朝鮮国籍船舶に関与する取引を禁止
トランプ大統領はこうした独自制裁の継続可否を判断しただけのことですけれども、少なくともアメリカは非核化が完了するまで経済制裁は解かないという姿勢を示したものだと言えます。

これ以外にも日本が独自制裁として、「北朝鮮の港に寄港したすべての船舶、すべての北朝鮮籍船の日本への入港禁止」や「北朝鮮向のすべての品目の輸出と北朝鮮からのすべての品目の輸入禁止」「大量破壊兵器や弾道ミサイルの計画などに関わる団体や個人に対し資産凍結」などを行っていますけれども、やはりなんといっても聞いているのは国連制裁決議に基づく制裁でしょう。

例えば、2017年に採択された内容は次のとおりです。
2017年12月
・灯油やガソリンなど石油精製品の北朝鮮への輸出を現在の年間およそ450万バレルから、年間50万バレル以下と90%近く削減。北朝鮮がほとんどの石油精製品を輸入できないようにすることを目指す。
・北朝鮮からの食品、機械、電気機器、木材の輸入と北朝鮮への産業機械や運搬用車両の輸出を全面的に禁止。
・北朝鮮が海外に派遣している労働者について決議が採択された日から2年以内に原則、すべての労働者を本国に送還。
・決議違反の疑いがある船舶について国連加盟国の港では拿捕や臨検、差し押さえの義務があるとしたうえ、領海内でも拿捕することを認めると定める。
・北朝鮮の人民武力省の1団体と銀行関係者19人を新たに資産凍結の対象に指定。
・原油の供給について、年間400万バレルもしくは52万5000トン以下に制限
・北朝鮮が新たな核実験や弾道ミサイルの発射を行った場合、安保理は、北朝鮮への石油供給をさらに制限する措置を取る

2017年9月
・北朝鮮へのガソリンや灯油などの石油精製品の輸出量の上限を、2018年以降、年間200万バレルとする新たな規制
・北朝鮮が繊維製品を輸出することを禁止
・各国が北朝鮮労働者に就労許可を与えることを禁止

2017年8月
・北朝鮮の収入源になってる石炭、鉄、鉄鉱石、海産物の輸出を全面的に禁止

2017年6月
・核とミサイルの開発資金を打ち切るため、北朝鮮の14の個人と4つの団体を対象に海外渡航の禁止や資産凍結
・このうち個人については、諜報活動や原子力に関わる国家機関の幹部、ミサイル関連部品の取り引きを扱う商業銀行の代表などが含まれる
・団体については、核開発や石炭、金属の輸出に関する複数の企業が含まれる
国連制裁決議は決議の度に締め付けを強めていくという内容なのですけれども、やはり昨年12月の制裁は強烈であることが分かります。

石油精製品と原油の供給を絞れば、原油を自前で算出できない北朝鮮はやはり苦しくなる。それは北朝鮮が瀬取りをしてでも石油を手にいれようとしていた事をみても明らかです。

なるほど、北朝鮮が米朝会談に活路を見出したいと動くのも無理ありません。裏を返せば、軍部あるいは人民を見殺しにしての我慢も続けられなくなったとも言えるかもしれませんね。
 
米朝会談で結ばれた共同声明では半島の完全な非核化について具体的方法が明記されず、法的拘束力もないことから、経済制裁に関する国際協力が弱まるのではないかという点が指摘されていますけれども、国連制裁決議をなし崩しにされるようであれば、確かにそうなる懸念は拭えません。

北朝鮮が非核化の段階的措置を主張し、中韓辺りがそれを支持していますけれども、今の国連決議を骨抜きにされないよう目配りをする必要があると思いますね。

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