昨日の続きです。
 


7月5日、アメリカのトランプ大統領は、中国への制裁関税について、追加の関税措置を発動する意向を改めて表明しました。更に、モンタナ州での演説では「アメリカはどの国からも金を奪われるブタの貯金箱だった……かつて負けた貿易戦争に今度は勝つ……勝ち続ける」と連呼し、喝采を浴びたようです。

これに対し、中国は報復関税を発動すると同時に世界貿易機関にアメリカを提訴。李克強首相は「相手方が追加の関税措置で貿易戦争をしかけるなら、中国側は必ず相応の反撃をする」と述べました。

中国の報復関税の対象品は大豆や綿花、食肉、自動車など545品目で、トランプ大統領の支持層でもある農業や製造業地帯を標的にしたとみられています。

彼らの支持を失えば11月の中間選挙への影響が懸念されます。足下を突き崩そうとしているという訳です。

いよいよ始まった米中の殴り合いがいつどのような形で終わるのか、全く予想できないのですけれども、この米中貿易摩擦によって既にグローバル化した世界が無傷で終わる可能性は低いといわざるを得ません。

特に中国に工場を建設しているメーカーは気が気でないでしょうね。

事務機器大手の富士ゼロックスは、コピー機向け消耗品などが、制裁品目に含まれていたこともあり、「必要があれば、他の国へ生産の一部を移管することも検討したい」としていますし、半導体検査装置を手掛けるアドバンテストも、「半導体の生産が中国からアメリカに移るだけであれば、輸出先を移せば良い。しかし勝者なき『戦争』で米中の需要が共倒れすれば心配だ」と警戒しています。

企業としては、利益を上げるために、安く仕入れて、沢山売れるように動くのは当然の行動なので、中国以外の国で代替生産するか、中国製品以外の代替品を探すことになります。

唯一の例外は代替品がないいわゆるオンリーワンの製品です。

例えば、ステンレス製タンクの国内最大手、アメリカ向けプラント機器輸出している森松工業は「アメリカの製造業は衰退している。すぐに復活などできない」としています。また、コンデンサーやトランスなどが制裁対象となった、上海にある日系大手電子部品メーカーは「アメリカに代替品がない強みがある。アメリカのお客さんは、追加関税分が上乗せされたものを買うことになる」とアメリカの消費者にしわ寄せが行くとの見方を示しています。

こうしたオンリーワンをどこまで中国が持っているかというのが一つの鍵なのですけれども、中国はこうしたオンリーワン技術を手にするために「中国製造2025」を計画したとも言える訳で、このタイミングでのアメリカによる制裁関税は、その目論見にストップを掛けようとするものだと思いますね。

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「中国国内の人件費高騰で始まっていた生産拠点のベトナムなどへの移転がさらに進む」とし、6%台の成長率を誇る中国経済にブレーキがかかる恐れもあると指摘していますけれども、成り行き遺憾では単なる米中貿易摩擦だけで済まなくなるかもしれませんね。
 

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