今日はこの話題です。



もう3年前の話になりますけれども、アメリカのハドソン研究所中国戦略センター所長のマイケル・ピルズベリー氏は、著書『The Hundred-Year Marathon ? China’s Secret Strategy to Replace America as the Global Superpower/邦題:China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』で、中国は、2049年までにアメリカに代わって世界の支配国になることを目指している、と喝破しました。

ピルズベリー氏は長年国防総省や国務省、アメリカ上院委員会、CIAなど様々なで中国の専門家として働いてきて、「パンダハガー(親中派)」として知られてきた人物です。

けれども、その人物が中国に対する認識を改めたと告白したのですね。

その切っ掛けはキッシンジャー氏の四作目の回顧録を読み、「キッシンジャー氏も、中国への見方を変えつつある」と確信したのが大きな理由の一つだとしています。

数年前まで先進国の多くの人は、「中国も西側諸国のように経済成長すれば、自ずと市場経済も発展し、民主的で平和な国になっていくはずだ」と信じていたのですけれども、近年の中国の言動をみるにつけ、これは違うかもしれないという認識がようやく広がりつつあると言われてきました。

つまり、西側諸国の支援によって、中国も民主国家へと成長していく筈だ、といったいわば「上から目線」的な見方としていたとも言えます。

ところが、ピルズベリー氏によると、中国は、最初からアメリカを「帝国主義者である敵」と認識し、アメリカを対ソ連カードとして用い、アメリカの科学技術を吸収、窃取するつもりで戦略を立て、1969年以降、同じ戦略を実行し、成果を上げているのですね。つまり、初めから中国はアメリカを騙していたという訳です。

ピルズベリー氏は「中国政府は公式に多極化世界の実現を主張しているが、実際には、それは、最終的に中国が唯一の指導国となる世界に至る途中段階に過ぎない。アメリカは中国に多大の支援と協力をしてきたにもかかわらず、中国の指導者は、150年以上にわたりアメリカが中国を支配しようとしてきたと考えており、彼らは中国がアメリカを逆に支配するためにあらゆることを行うつもりである」と警告を発しています。

そして更に、このような意図を有していたにもかかわらず、中国は、欺瞞、宣伝、スパイ等を用いて、中国が後進国で、軍事的に不活発で、弱い支援対象国であるとの誤ったイメージを西側諸国の関係者に与え続け、西側諸国内の中国専門家をモニターし、様々な手段で操作してきたとピルズベリー氏は指摘しています。

日本人からみれば、中国なら当然そうだろうという感覚があると思うのですけれども、アメリカの中国専門家はそれを見抜けなかった。遅まきながらもようやくそれに気付いたということですね。

1999年以来、中国軍の機関誌に「暗殺者の棍棒」計画という言葉が頻繁に現れるようになっているそうです。

これは、中国軍の台湾侵攻で、来援するであろうアメリカ軍との戦闘を想定した文脈の中で度々登場し、戦力に勝るアメリカ軍に対抗するための「非対象戦」能力を研ぎ澄ます計画だと見られています。

中国軍機関誌の解放軍報も「絶対的優位の強敵でも、弱い側が利用できる弱点を持たぬことは決してない。弱点を利用する戦術を見いだすことに、より直接的に照準を合わせる必要がある」と主張していて、具体的方法として、「アメリカ空母機動艦隊への射程外からの弾道・巡航ミサイル攻撃」、「潜水艦と機雷による攻撃・威嚇・牽制」、「軍事衛星・通信網の破壊・撹乱によるアメリカ軍の"目と耳"の封殺」、「アメリカ軍事・民間コンピューター網へのサイバー攻撃」などが想定されています。

こうした中国の非対称戦についてはアメリカ国防総省も警戒を強めていて、ペンタゴンの戦争シミュレーションでアメリカ軍が初めて敗れたのはこの中国の非対照戦力に対してだったとも言われています。

アメリカ軍にとって、サイバー攻撃やその他非対称戦力に対する対策は急務となっています。

昨年8月、アメリカのイージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」がシンガポール沖で民間タンカーと衝突した事故がありましたけれども、その原因について、サイバー攻撃だった可能性が指摘されています。

また、今年5月には中国南部の都市である広州に配属されていた職員が軽度外傷性脳損傷と診断された事件が発生しています。職員からは「微かで曖昧だが、異常な音と音圧を感じたという報告があった」と報告していることから、一部には音響攻撃ではないかという噂もたったのですけれども、専門家は「音響兵器が使われた可能性よりも、超音波を使って情報をこっそり盗み出したり会話を盗聴するための装置の不具合と考えるほうが説得力があると思う」などと攻撃ではなく装置の不具合ではないかと見ているようです。

いずれにしても、サイバー攻撃にしても盗聴にしても、非対称攻撃であることには変わりありません。

真偽は兎も角、アメリカもそして今後は日本もこうした非対称戦力への対応を真剣に考え、対策する必要があると思いますね。
 

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