今日はこの話題です。
7月12日、習近平国家主席のポスターなど宣伝用物品を職場などに飾ることを禁じる公安当局の緊急通知がインターネット上に拡散し、波紋を呼んでいます。
文書は北京市の不動産管理会社が入居企業に宛てたもので、地元の派出所からの緊急通知として「習同志の写真や画像を含むポスターなど宣伝材料を直ちに撤去する」よう要求しており、結果を48時間以内に報告することも求めているそうです。
結果を2日以内に報告することといい、本当にこんな通知が出ているとするならば、中国当局は習近平主席のポスターを一掃する積りでいるということです。
なぜ急にそんな通達がでたのか。
7月4日、湖南省出身で上海に住む女性、董さんが習近平国家首席を支持しないという内容の動画を生配信し、習近平のポスターに墨をかけるパフォーマンスを行ったことが話題になりました。
動画の中で、董さんは「私は、習近平とその独裁主義に反対です……みなさん、私は彼の写真に墨をかけました……彼が私をどうするかみものです」と発言。この動画はTwitterで大拡散しました。
4日の昼、遼寧省営口市出身の芸術家で活動家の華涌さんが、董さんの動画をシェアし、「緊急:WeChatで、さっきこの動画を見ました。彼女の身の安全が気になります。中国国内ではこの配信動画が、かなりシェアされています。彼女の名前が知りたい。上海在住の人、彼女の安否を教えてください。みなさん、この問題をしっかり考えましょう、彼女の言葉を忘れてはいけません。憲法を守ろう。言論の自由を行使するのは犯罪ではありません」と彼女の安否を気遣うツイートを投稿。董さんのTwitterアカウントを特定し、彼女が無事帰宅したことまで確認したそうです。
その後、董さんは「ドアの外に制服着た人が数人。着替えたら、外にでます。私に罪はありません。罰すべきは、私を傷つける人々、団体です」と制服を着た数人が家に訪ねてきたと写真つきでツイートしたのを受け、華涌さんが「ドアを開けるな。外に出るな。携帯からツイートし続けて、現状をアップデートしてください。こちらで見ているし、サポートしています。多くの人が見ていれば見ているほど、あなたの身の安全は高まります。同士である僕のいうことを聞いて、焦るな、外にでるな…」と警告しています。
続いて、華涌さんはYouTubeでライブ配信をスタート。「董さん、たくさんの人があなたのことを考えて、心配しています。僕はそのたった1人にすぎません……もし、国が豊かさと中国の夢を求めるならば、寛容と容赦の心が必要」と呼びかけました。
けれども、華涌さんの呼び掛けも虚しく、しばらくして、董さんのTwitterアカウントが削除され、董さんの家族や友人にも連絡がつかなくなり、董さんの電話番号さえ使われていない状態になったそうです。
まるで、スパイかレジスタンス映画かなにかのようです。
この動画は中国のみならず、日本にも流れてきていますし、その他の国々にも拡散しているものと思われます。為政者に都合の悪いものは力づくででも口を塞ぐ。共産国家の本質が透けてみえます。
中国当局が習近平国家主席のポスターなどを撤去するよう通達を出したのも、似たような事が続けて起こらないように手を打ったのだと思いますね。
この事件に影響されたのかどうかは分かりませんけれども、中国共産党内で、権力集中を進める習近平国家主席の統治手法に不満が噴出しているとの見方も出ているようです。
11日、新華社が「華国鋒は罪を認めた」と題する文章を掲載しました。この記事は、毛沢東の死後、最高指導者になった華国鋒元共産党主席が、自ら座った椅子を博物館に展示するなどの動きを個人崇拝だと認めたという内容で、中国共産党が1980年に「今後20~30年、現職指導者の肖像は飾らない」と決定したことにも触れたそうです。
件の記事は直ぐに削除されたのですけれども、直ぐに転載されて拡散。ネットでは「昔話を借りて、今を当てこすったものだ」とか、「トップは華国鋒に学べ」などのコメントが並んだようです。
共産党規約では、文化大革命の反省を踏まえ、個人崇拝を明確に禁じているのですけれども、習近平主席が決めた国家主席の任期制限撤廃などを受け、習主席の青年時代の逸話などを基に彼を称賛する報道や出版物が増加していました。
新華社の個人崇拝批判ともとれる報道から、共産党内に習近平一強体制への不満が燻っているのではないかというわけです。
過去、なんども暗殺危機が報じられていた習近平主席ですけれども、この動きが本当であれば、足元は相当危ういことになります。それに加えて外交では米中貿易戦争が起きています。
内部の不満を抑えるためにも、外に対して弱きな態度を見せるわけにはいきません。まさに内憂外患。
習近平主席がどこまで党を抑えておけるのか。状況は増々混沌の度を増してきたと思いますね。
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