今日はこの話題です。



6月28日、ドイツ銀行は、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のストレステストで、「資本計画の慣行に幅広く重大な不備」が見られたと指摘。不合格となったことが明らかになりました。

今年はアメリカ持ち株会社を持つ外銀6行が初めてストレステストを受けたのですけれども、ドイツ銀行だけが不合格。ドイツ銀行はウェブで「資本計画能力や管理、インフラの改善に向けかなりの投資を実施」したとし、引き続き前進しながら当局と協力していると説明しています。

リーマンショック後、英米の金融機関は積極的な資産の売却とハイリスク部門からの撤退を進めたのですけれども、ドイツ銀行は逆にそれら売却資産を買い集め、投資銀行部門を拡大させたのですね。

ところが、2009年から、ギリシャ危機を引き金にソブリンショックが発生し、資本増強に迫られたドイツ銀行は「COCO債」という「偶発転換社債」を発行しました。

転換社債とは、満期になったときに、返済金をお金で受け取るか、株式で受け取るかを選択出来る社債のことで、社債を買った人は、満期時の株価をみて、株で受け取るかお金で受け取るか儲かる方を選択できます。

ところが「偶発転換社債」であるCOCO債は、債券を買った人に選択権がなく、銀行側の都合で株にしたりすることができることになっています。

銀行にしてみれば、自己資本が足りなくなると、COCO債を株式に変えてやることで、貸していた金が突如として自己資本に生まれ変わるという実に銀行に都合の良い社債であった訳です。

こんなべらぼうな社債など売れるとも思えないのですけれども、5%という高利回りを背景に2009年から発行したCOCO債は2015年末までになんと全世界で10兆円を越える額に達しています。

そんな中、2016年9月ドイツ銀行は、サブプライム住宅ローン担保証券の不正販売でアメリカの司法省から140億ドル(約1兆4,000億円)の制裁金の支払いを要求されていたことが明らかになりました。

これによりドイツ銀行の株価は急落。30年ぶりの安値を付け、信用不安が表面化しました。

この時、暴落したドイツ銀行の株を買い漁ったのが中国の海航集団でした。海航集団はこれを機にドイツ銀行の筆頭株主に名乗りあげました。

海航集団は1993年に海南省で設立された海南航空から急成長した複合企業で、ドイツ銀行だけでなく、アメリカのヒルトンホテルや欧米企業の株式を相次ぎ取得しています。

ところが、その買収資金の大半は銀行などからの借り入れで、2018年6月末の段階で負債総額は7179億元(約12兆円)に達しているとも言われています。

海航集団は、香港の旧啓徳空港跡地の用地売却や、ドイツ銀行株の一部放出などで、負債返済資金の確保に走っている状態で、今年に入って140億ドル(約1兆5500億円)余り相当のビルや株式を売却。そして、折角手に入れたアメリカ・ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス株も手放しました。

けれども、1兆円や2兆円を売ったところで12兆円とも言われる負債には全然追いつきません。

ここから更に資産売却を進めて、ドイツ銀行の株をさらに売却されるのではないかとの懸念も囁かれています。

中国がドイツに手を伸ばしているのは銀行だけではありません。中国はドイツの航空・自動車部品メーカーもどんどん買収してきました。

経済評論家の渡邉哲也氏によると、既にドイツと中国は"共依存"の関係にあり、どちらか一方が倒れれば、もう片方も倒れてしまう危険があると警告しています。

その意味では、米中貿易戦争に突入し、資金不足に悩まされ始めている中国は非常に危険な状態にあるともいえます。もしも、中国のバブルが弾けたらその火の粉はドイツに飛んで、果てはEU全体にまで拡大するかもしれません。

警戒すべき時期に入ったかもしれませんね。
 

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