今日はこの話題です。



7月18日、アメリカFBIのクリストファー・ライ長官がコロラド州で講演し「アメリカ国内で外国のスパイ活動を防ぐ観点から言えば、中国が最も幅広く活動し最大の脅威だ……中国が関わった産業スパイ事件の捜査が全米50州すべての州で行われている」と明らかにしました。

そしてスパイの手口について人を介したものからサイバー攻撃まで様々だとしてトウモロコシの種から風力タービンまでさまざまな産業を狙って技術や情報を盗み出していると述べました。

一方、アメリカ議会でも中国による産業スパイや知的財産権の侵害について専門家を招いて公聴会を実施しました。

証言をした中国による産業スパイの実態を調査してきた情報セキュリティー会社の元責任者は、中国が資金力を武器にアメリカの大学や研究機関に近づき、最新の技術を盗み出した事例などを紹介。中国の産業スパイを防ぐためには、FBIによる捜査を拡大し法的整備や制裁強化などの対策も急ぐべきだと述べています。

中国によるスパイ活動は既にアメリカの中枢にも及んでいます。

今年1月には元CIAの元捜査員ジェリー・チュン・シン・リー被告は、国防情報を収集し中国に受け渡そうとしていたとして逮捕。同じく元CIA捜査員のケビン・マロリー被告も、中国に情報を売りつけた罪で起訴されています。

また、6月にはアメリカ国防情報局(DIA)のロン・ロックウェル・ハンセン容疑者が、シアトル空港で中国行きの飛行機に搭乗しようとしたところを米連邦捜査局(FBI)に逮捕されています。

ハンセン容疑者は中国語に堪能で、中国政府のために国防に関する情報を収集し、売り渡した疑いをかけられています。

このように、中国はアメリカの政府機関にも手を出しているのですね。とりわけCIAに対する工作が顕著です。

CIAは2010年の終わりに、中国での情報提供者が次々といなくなっていることに気づきました。2010年からわずか2年の間に18~20人が処刑、または収監されていたことが分かるとFBIとCIAは捜査を開始。

それまでの経緯から外国人スパイのリクルートを担当していた元CIA捜査員でジェリー・チュン・シン・リー氏に疑いの目を向けます。リー氏は2007年に自身のキャリアが頭打ちとなったことを不満に思い、CIAを離職しています。

FBIは、2012年にアメリカに家族旅行で訪れていたジェリー・チュン・シン・リー氏のホテルの部屋を捜索したところ、中国の情報提供者とCIA職員の実名や連絡先、諜報活動のメモ、ミーティングの場所などが書かれた手書きのノートを発見します。

けれども、FBIはその場では逮捕しなかったのですけれども、CIAはリー氏に秘密の仕事を持ちかけ、家族とともにアメリカにおびき寄せ、5回の面接を行いました。しかし、CIAは彼のノートを発見したことや、彼が中国のスパイだと疑われていることについては一切伝えませんでした。

その理由として、リー氏が知っていること、また彼と他の人々との関係について、より多くの情報を集めるためであることと、その時点で彼を起訴すれば、情報提供者が消されていることにFBIが気づいていることを、中国側に密告される恐れもあったと見られています。

そのリー氏が今年になって逮捕されたということは、決定的な証拠を掴んだか、あるいは中国の情報提供者が消されても問題なくなったという可能性がありますし、また、同時に中国に対する警告の意味合いもあるかもしれませんね。

また、FBIは大学機関にも捜査の手を伸ばし始めています。

2月13日、米連邦議会上院の情報委員会の公聴会で、FBIのクリストファー・ライ長官がアメリカの大学を中心として中国共産党の思想を宣伝し、スパイ活動まで働いていると主張。孔子学院をスパイ活動やプロパガンダ活動などの容疑で捜査すると述べています。

孔子学院については、2014年6月のエントリー「中国の孔子学院戦略とクールジャパン」で取り上げたことがありますけれども、中国教育省の高官が孔子学院について「わが国の外交と対外宣伝工作の重要な一部だ」と発言し、中国の教育関係者が「大学の中に設置されていると、学生たちは、孔子学院の授業はその国の公的教育の一環と理解しがちだ。また、その方が中国の価値観と文化を浸透させやすい」と述べているように、はっきりとスパイ活動機関であると公言しています。

ようやくというか、とうとうというかアメリカも中国に対する対策を取り始めた感があります。米中対立は増々激しくなると見て置いたほうがよいかもしれませんね。
 

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