今日はこの話題です。



中国の人民元が下落しています。

7月24日、上海外国為替市場では一時1ドル=6.8295元まで下落し、2017年6月以来の元安・ドル高水準となりました。

こうした動きは勿論、米中貿易戦争が影響しています。

下の図は人民元の対ドル相場ですけれども、6月15日、アメリカが25%制裁関税を掛けると発表してから、急激に人民元安が進んでいます。

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けれども、24日、中国人民銀行が為替取引の目安となる基準値を1年ぶりの元安水準に設定し、さらに人民元安を牽制する発言も少なかったことで、「緩やかな元安を容認している」との観測が拡がり、元売りに拍車をかけているようです。

米中貿易戦争については、アメリカが課税できる中国からの輸入額よりも中国が課税できるアメリカからの輸入額が圧倒的に小さい為、制裁関税を掛けあえば、中国が最初に息切れを起こすと指摘されています。

にも関わらず中国は、一歩も引かず「質と量を組み合わせた総合的な措置」で対抗すると宣言しました。

では、その総合的な措置とは何か、について色々な指摘がされているのですけれども、人民元が安くなれば、その分だけ輸出競争力が高まる訳ですから、元安は手っ取り早い対抗策ともいえます。

JPモルガンのエコノミスト、ジャンハンギル・アジズ氏と朱海斌氏は7月20日付のリポートで、「中国はこれまでのところ、金融政策の緩和や元安容認を通じて貿易戦争に対応してきた……負担を軽減するために他の措置、特に財政措置を早期に講じる必要がある」と指摘していますし、ブルームバーグ・エコノミクスのフィールディング・チェン氏らは、「元の下落は中国政府の意向に沿っており、制御されている」と分析しています。

この指摘が当たっていれば、中国政府は元安で対抗しようとしているということです。

無論、アメリカもそれは十分承知しています。トランプ大統領はツイッターで「通貨と金利を不当に低い水準に操作してきたと中国、EUを批判」、元について、中国が操作しており石のように落ちていると述べています。

またムニューシン財務長官も「通貨安が彼らに不当な優位性をもたらすことは疑いない……我々は彼らが通貨を操作していないかどうか非常に注意深く検討する」と批判しています。

まぁ、元安といっても、段々世界の目が厳しくなる中、無制限にやり続ける訳にもいきません。人民元安だけで対抗するにも限界があります。となると更なる手を打ってくることも考えられます。

中国は過去、自らの要求を諸外国に押し付けるために色んな措置を講じてきたことがあります。

その主なものは次の5つです。

1)輸出入品の通関を遅らせる
2)中国に展開する外資企業に対し、保健・安全性検査から、贈収賄捜査や税務監査を盾に企業活動を妨害
3)事業免許制度を通じた営業妨害
4)海外旅行の規制
5)アメリカ製品と企業の非公式ボイコット

1については、2010年、中国の反体制活動家にノーベル平和賞の授与が決まったことに抗議して、ノルウェー産サーモンの輸入を制限。2012年には、フィリピンと南シナ海の領有権問題で衝突したことに絡んで、フィリピン産バナナの通関を遅らせました、

2は、2016、17年に韓国が中国の反対を押し切ってTHAADの配備を決めた際、用地を提供したロッテグループの系列の、中国にあるロッテマート約90店舗が、防火基準違反の恐れがあるとして一時閉店に追い込みました。

3についてですけれども、中国では殆どのビジネスに免許が必要で、その取得は非常に「曖昧で、漠然としており、裁量的である」と指摘されています。今後、中国に進出しているアメリカ企業に事業免許の取り消しや、取得プロセスを遅延させたりする可能性があります。

4、5については、これはもう中国がよくやるいつもの手ですね。

果たして中国がこれらをアメリカに対してやれるのかという気もしないでもないのですけれども、やったらタダでは済みそうにありません。中国に進出しているアメリカ企業は少なからずダメージを受けるでしょうね。

尤も、トランプ大統領の強気な態度は、中国を交渉のテーブルに引きずり出すための戦略ではないかという見方もあります。

アメリカの調査会社アクション・エコノミクスのチーフエコノミスト、マイク・エングルンド氏は「トランプ政権の目的は、中国と貿易問題でディールを結ぶこと。アメリカの企業は貿易戦争を支持しておらず、もし交渉に失敗しても、高関税を支払う能力も意志もない。トランプはその状況を、逆にアメリカが強硬姿勢に出て中国とのディールを果たす稀なチャンスと見ている」と述べています。

米中貿易戦争も人民元安で対応できるうちは、対決色が薄まることはないかもしれませんね。

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