今日はこの話題です。
7月23日、ラオス南東部アッタプー県で、建設中の水力発電用のダムが決壊し、少なくとも26人が死亡し、131人の行方がわからなくなっていると報じられています。
このダムの決壊により、複数の村が浸水し、6000人以上が家を失ったようですけれども、報道されている映像を見る限り、村が完全に水没したといっていい程の被害であり、先日の西日本豪雨災害を彷彿とさせます。
このダムは、ラオス、タイ、韓国の企業が出資する合弁会社セピアン・セナムノイ電力会社(Xe Pian-Xe Namnoy Power Company:PNPC)が、2013年から建設を進めてきた一大水力発電プロジェクトの中の一つで、きたもので、ラオスの首都ビエンチャンの約550km南東にあるBolaven高原に位置しています。
完成すれば、年間約1860GWhの年間発電量を生産する予定でした。
このプロジェクトには、メコン河沿いのホアイマッカンダム、セピアン(Xe Pian)ダム、セナムノイ(Xe-Namnoy)ダムの3棟の建設と、5つの補助サドルダムがあり、セナムノイ川の大型貯水池、地下トンネル、シャフト水路、4つの発電ユニットを備えた屋外発電所で構成されています。
今回決壊したのは5つある補助サドルダムのうちの一つで、「サドルダムD」と呼ばれるものです。「サドルダムD」は幅8メートル、長さ770メートル、高さ16メートルで、近くの貯水池に水を迂回させるよう設計されていたようです。
ダムにはいくつかの種類があるのですけれども、決壊した「サドルダムD」は、普通イメージするようなコンクリートの壁で構築するダムではなく、岩石や土砂を積み上げて建設する「ロックフィルダム」と呼ばれる形式のものでした。
ロックフィルダムは水をせき止める土を芯とし、水の力を受け止める岩を配置したもので、一見、とても裾の広い堤に見えます。基礎面積が広いために軟弱な地盤でも建設可能なダムです。
決壊したダムについて、施工を請け負ったSK建設は「崩壊というのは完全になくなったことを意味するものだが、水がオーバーフローして、一部が失われたのだろうと推定される」と、「崩壊」したのではなく、大雨による「氾濫」だと主張しているのですけれども、共同受注会社の韓国西部発電は20日の時点で、すでにダムの中央部が11�pほど沈下して亀裂がどんどん広がっていたと報告。「緊急に回収装置を手配するなどの処理方法を模索していましたが、7月22日日曜日には沈下が10箇所以上にもなった」とコメントしています。
ダムの専門家によると「沈下が発生したら、とにかくすぐに水位を下げるものだ」というのが対処法だそうなのですけれども、事前に決壊の兆候があったにも関わらず、有効な措置が取れなかったのは残念と言う他ありません。
それ以前に、完成前に沈下や亀裂が入るような建設に問題はなかったのか。
なんでも工事を担当したSK建設は、当初の計画から4ケ月も前倒しして建設してボーナスを貰っていたようですけれども、大規模な土木工事で月単位で前倒しできるものかどうか不思議でなりません。
今回の事故について早くも現地では「天災」ではなく「人災」ではないかとの声も上がっているようですけれども、まずは被災者の救援と原状復帰を終えてから、きちんとした検証と原因究明を望みたいですね。
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