今日はこの話題です。



6月12日、台湾に米国在台協会(AIT:American Institute in Taiwan)の新オフィスビルがオープンしました。

台北で最も開発が進む内湖区の高級エリアに建てられた新オフィスは、2億5000万ドルが投じられた立派なもので、500人近くいる職員の大半は米国の外交官です。

米国在台湾協会は、アメリカが台湾に設置した実務関係処理のための窓口機関で、ビザの発給業務などを行います。

トランプ政権はここを警備するために海軍兵士の派遣を検討していると伝えられています。

警備のためにアメリカ海軍を派遣するのは、世界各国にあるアメリカ大使館だけ。つまり、米国在台湾協会は実質的には大使館扱いだということです。それはすなわち、台湾を"国"扱いしているともいえるわけです。

トランプ大統領は台湾旅行法の成立や14億ドル相当の武器売却など進めてきましたけれども、今回の米国在台協会の新ビル建設と台湾への肩入れの度を増しています。

「一つの中国」を標榜する中国を明らかに刺激するにも関わらず、です。これは筆者には非常に戦略的な動きに見えます。

無論、対中国を睨んだ戦略です。

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以前のエントリーでも述べたように記憶しているのですけれども、トランプ大統領は敵対する相手を攻撃する時には、真正面からガチンコを仕掛ける前に、背後の補給線を断つことから始める傾向があるように見えます。

少し前なら、北朝鮮に対する対応がそうでした。中国を持ち上げながら北朝鮮への援助ルートを一つづつ切っていって、最後には金正恩をシンガポールにまで引きずり出して見せました。

そして、米朝首脳会談が終わったと思えば、今度は米中貿易摩擦の激化です。

ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、米朝首脳会談が行われた6日後の18日、トランプ大統領が中国に対する2000億ドル規模の追加制裁関税の検討を発表したのは、金正恩委員長が会談で「非核化」を明言したのを受けて、「正恩氏とは直接、話ができる。それなら、もう中国に遠慮する必要はない」と判断したためだ、と述べています。

これが本当であれば、トランプ大統領は、北朝鮮を自分の懐に引き込んだと考えているのだとも解釈できます。

そして更には7月16日の米露首脳会談です。

欧米のリベラル系メディアは、米露首脳会談は「大失敗だった」と批判の大合唱をしているようですけれども、トランプ大統領は、どこ吹く風とばかり、カナダでのG7首脳会議で、「ロシアのG8復帰」と「制裁解除」を仄めかせ、プーチン大統領をホワイトハウスに招待するとまで発言しました。

これも筆者には中国からロシアを引き剥がし、中国を孤立化させる戦略の一環ではないかと思いますね。

評論家の宮崎正弘氏は、このトランプ大統領の対露融和の動きについて、「ロシアの孤立を救い、対中封じ込め戦略の仲間に迎えよう」とする長期的戦略だと指摘していますけれども、筆者もその通りだと思いますね。

筆者は3月19日のエントリー「トランプは台湾旅行法という大きな楔を打ち込んだ」で、「まぁ実現可能性は非常に低いでしょうけれども、北朝鮮がアメリカと平和条約を結んでしまうとか、あるいは、台湾がアメリカと独自の条約を次々と締結するようなことがあれば、中国の影響力はぐっと落ちますし、太平洋をアメリカと二分する野望も大きく後退することになりますね。」と述べたことがありますけれども、今になって振り返ってみれば、意外とこの線もあるのではないかとも思えてきました。

もしも、トランプ大統領が、中国包囲網、あるいは中国の孤立化という大戦略を描いているのであれば、次にEUと中国との繋がり、またはアフリカと中国との繋がりを切ってくることも考えられます。或いは、中国と中東の関係を切ってくることも有り得ます。

既に、ペンス副大統領が、ウイグル族を弾圧していると発言し、揺さぶりを掛けています。

今はトランプ大統領はEUと喧嘩しているように見えますけれども、中国との繋がりが切れるとみるや急に仲良くなり出すかもしれません。

その意味で筆者は、ドイツとの関係に注目しています。

共倒れの危機にある中国とドイツ銀行」のエントリーで述べましたけれども、中国とドイツは共依存の関係にあります。

つまり、米中貿易戦争で中国が苦境に陥れば、ドイツも共倒れになる、そのタイミングを見計らって、アメリカがドイツに手を差し伸べて、中国からドイツを引き剥がす可能性があるのではないかと思うのですね。

トランプ大統領は全地球的規模で、非常に戦略的に動いていると思いますね。
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