昨日の続きです。



7月24日、東アジアオリンピック委員会(EAOC)は来年8月に台中市で開催予定だった東アジアユースゲームズの中止を発表しました。

東アジアユースゲームズとは、東アジア競技大会を前身とし、青少年選手が競技経験を積み重ねる事を目的として2013年5月に、当時の東アジア競技大会連合によって開催が決まったものです。

2014年10月に北京で開催された東アジアオリンピック委員会において、台湾の台中市が第一回の東アジアユースゲームズの開催権を得ると、台湾の各政府機関と民間企業、台湾社会と協力し、4年間で約6億7000万台湾ドル(約24億円)を投じ、準備を進めていました。

ところが、先月24日に開かれた東アジアオリンピック委員会の臨時理事会で、台湾一部の民間団体が「台湾」の名義で2020年東京オリンピックの参加を目指す署名活動をしていることを理由に、東アジアユースゲームズのボイコットを宣言。更には大会の中止を提案したのですね。

理事会には台湾、中国、日本、香港、マカオ、韓国、北朝鮮、モンゴル、そして、オブザーバーのグアムを含めた9ヶ国・地域が参加していたのですけれども、中国、香港、マカオ、モンゴル、北朝鮮、韓国の6か国・地域と委員会主席の劉鵬(中国籍)が提案に賛成票を投じ。反対票は台湾の一票。日本は「非常事態に関わり、会議の延期再議が必要だ」と棄権しました。

結果、賛成多数で可決され中止が決まったのですけれども、そもそも賛成した国の面々をみると、ただでさえ中国色が強い上に、香港と中国籍の委員会主席がそれぞれ一票持っているなど、初期設定の段階で中国の意向が働く構成です。従って、中国の提案をひっくり返すのは最初から厳しかったであろうと思われます。

この中止決定に対して、台湾総統府は「スポーツに対する粗暴な政治介入だ」と非難する声明を出し、台中市の林佳龍市長は、東アジアオリンピック委員会に対し、決定の取り消しを求める申請を行っています。

決定の取り消しが為されることを期待したいところではありますけれども、実際は難しいと思われます。

ただ、台湾では、日本が投票を棄権したことについて、ネットで「大国の中国を前に反対することはできなくても、棄権という方法で抗議を示してくれた」、「棄権してくれた日本に感謝する」などといった「感動」の声が多く挙がっているようです。

ここ最近になって、アメリカのトランプ政権の台湾接近と軌を一にするかのように日本もまた台湾との距離と縮めてきています。

2016年5月、江口克彦・参議院議員が「日台関係及び『日台関係基本法』の制定に関する質問主意書」を提出し、同月20日、安倍総理が答弁書で回答しています。

この「日台関係基本法」というのは、アメリカの台湾関係法になぞらえて「日本版・台湾関係法」とも呼ばれるもので、2013年に「日本李登輝友の会」が政策提言として政府に提出したものです。

この提言は、安全保障が含まれず不安定な日台関係の改善と台湾と安全保障を含む緊密な関係を維持しているアメリカの政策との整合性を図る上で、その裏づけとなる法案を整備するという目的の元に作成されました。

江口‌参院議員の質問は「日本版・台湾関係法」の制定について、「政府がそうした政策提言を受け取った事実はあるか」や「政策提言を受け取った事実があるのであれば、その概要を明らかにされたい」というものだったのですけれども、安倍総理は「政策提言は受け取った」と明言した上で、「その概要については、政府としてお答えする立場にない」と詳細について避けています。

ただ、「我が国と台湾との関係及び我が国の台湾に対するスタンスについて、現在の政府の見解を明らかにされたい」という質問については「我が国との間で緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーである台湾との間においてこのような実務関係が着実に発展していくことを期待している」と、台湾を「重要なパートナー」と位置づける政府見解を明らかにしました。

そして、2017年3月、赤間二郎総務副大臣が、日本台湾交流協会が主催する台北の食品・観光イベントの開幕式へ出席。1972年の断交以来、副大臣が始めて"公務"として台湾を訪問しています。

それ以前には2006年に農水省の宮腰副大臣が訪台していますけれども、この時は非公式であり、公務ではありませんでした。

2006年は小泉政権でしたけれども、あれから10年経って、明らかに台湾に対する日本のスタンスに変化が見られます。

昨年12月、自民党の鈴木馨祐衆院議員は台北市内で開かれた「台米日三者安全保障対話シンポジウム」に出席し、自民党内の有志議員で策定を目指している「日本版・台湾関係法」について、内容について協議しており、今後2~3年以内に進展の可能性があると明らかにしています。

ただ、2013年の政策提言が台湾の安全保障も視野にいれた「日本版・台湾関係法」であったのに対し、自民党内有志が進めているそれには安全保障に関わる内容について、盛り込まれる可能性はないようです。

ただ、それでも「日本版・台湾関係法」が成立すれば、日台関係を確固たるものにする第一歩となるのはいうまでもありません。

トランプ政権が台湾に接近している今、台湾を日本の側にぐっと引き寄せる最大のチャンスが訪れているといえるでしょうね。
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コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. ぱかっと
    • 2018年08月04日 03:52
    • 確かに人口や国土は大陸の方が大きいですが
       人権と民主主義の実現度では
      圧倒的に台湾の方がまともな国家であって
       大陸はオウムに支配されたような恐怖政治地域です
      日米印豪など大陸包囲網国家群は協力して
       台湾を支えていきたいものです
    • 0
      kotobukibune_bot

      kotobukibune_bo

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