更に続きです。
米中貿易戦争で急激に経済が悪化している中国ですけれども、国有企業の負債もとんでもない規模に膨れ上がっています。
アジアタイムズは、2017年末の速報ベースで国有企業の負債総額はGDPの159%に達したと伝えています。
中国の2017年の名目GDPは12兆0146.1億ドル、その159%は19兆1033億ドル、日本円でおよそ1986兆円。とんでもない額です。
金融ジャーナリストのディニー・マクマホン氏によると、2008年の世界金融危機以降、中国の経済成長は輸出への依存度が減り、国内投資の比率を増やしてきました。
ところがその国内投資の殆どは建設に向けられ、長い建設ブームを引き起こしました。その結果生まれたのが空き部屋だらけのゴースト都市でした。マクマホン氏はこのようなゴースト都市を50ヶ所あると集計しています。
マクマホン氏は、中国の負債総額のうちの60%が国有企業のものであると指摘し、長期にわたって景気刺激的な政策を続けた結果、不良債権が積み上がり、経済に巨大な不均衡が生み出されていると警告しています。
評論家の宮崎正弘氏によると、中国共産党指導者達は、米中貿易戦争を口実に、負債を抱える国有企業を切り捨て始めたのだそうです。
なんでも、今現在、中国当局は企業が抱える債務を株式化することで、貸借対照表にある負債を資産に替えてしまうという、所謂デットエクイティスワップを進めているそうです。
この手法を適用する企業を巨額負債を抱える国有企業には適用しないことで、選別をするとしています。
すでに約2100社が倒産したと伝えられ、石炭と鉄鋼産業においては大量のレイオフが実施されているそうです。
このまま推移すれば、2019年度までに、あと600万人の国有企業従業員を解雇し、そのための失業手当を230億ドルにも上ると見積もっているとのことです。
大量の失業者が街に溢れることは社会不安の原因ともなります。
宮崎氏はそうした失業者や過剰在庫の捌け口として、「一帯一路」構想が行われるのだと指摘しています。
なるほど、これなら、中国資本が請け負った海外プロジェクトで、資材も人材もみんな中国から持ってくるばかりで、現地で雇用せず、金を落さないと批判される訳です。
実際、一帯一路プロジェクトを推進している国々の受注先を見ると、実に89%が融資をしている中国企業の受注で、7.6%が当該国の企業、3.4%がその他外国企業の受注です。
けれども、それらプロジェクトが実際に上手く進んでいるかといえば、必ずしもそうとは限りません。
インドネシアのジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道計画は、総事業費60億7000万ドルのうち75%を中国の国家開発銀行の融資で賄うことになっているのですけれども、2015年に中国企業が受注して以来、ずっとほったらかしにされ、つい先日、全面着工の見通しだと伝えられたばかりです。
また、フィリピンは、自国の鉄道、港湾、採鉱、エネルギーのインフラ整備や中国農作物の輸入再開および貿易や投資の拡大で、総額240億ドルの支援を2016年に中国から取り付けたのですけれども、その後今に至るまで投資プロジェクトは殆ど実行されていません。
例えば、中国の電力グループとフィリピンのエネルギー会社と共同で水力発電所を建設する総工費10億ドルプロジェクトは、中国側の再三に渡る延期により計画は中止に追い込まれ、ラテライトニッケル鉱石の探査、採掘を手掛けるGlobal Ferronickel社も中国側と7億ドルに上る工場建設計画を策定したものの、進展はありませんでした。
唯一進んだのは、水利整備計画の7300万ドルのローン貸付と2基の架橋建設計画の合計7500万ドル。当初ぶち上げた240億ドルには遠く及びません。
こんなことをしていれば、現地での評判は落ちるばかりですし、実際、7月にフィリピンで1200人の成人を対象に行われた世論調査では、中国への信頼度は2016年4月以降、最低水準を記録したそうです。
中国バブルが弾けるとしても、その弾け方によっては、周辺国のみならず世界経済全体へ波及することだって考えられなくもありません。
話は逸れますけれども、安倍総理は2019年10月の消費税増税について、リーマン・ショック級の事態が起こらない限り予定通り引き上げていく」と事ある事に発言しています。
けれども筆者が引っかかるのは、安倍総理は必ず「リーマン・ショック級の事態が起こらない限り」と枕詞をつけている事なんですね。
まるで、中国発のリーマン・ショック級の経済危機が消費増税前までに起こると安倍総理が予測しているのではないかと勘ぐってしまいます。
リーマン・ショック級の経済危機が起こらないに越したことはありませんけれども、米中貿易戦争によって、その確率は確実に高まっていると見て備えをした方がよいのではないかと思いますね。
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