今日はこの話題です。



ラオスのダム決壊の被害が日々拡大しています。

8月8日、ラオス国営のビエンチャン・タイムズは、死者が34人、行方不明者は約100人、家を失った人は数千人に上ると報じました

この日の朝、NHKの取材班がラオス軍の許可を得て、被災地に入ったのですけれども、ダムから約40キロも離れた村でさえ、殆どの住宅が流されるなどの壊滅的な被害を受けているそうです。

現地では、多くの遺体が泥に埋まっている有様で、6日の国連の報告書は「泥と洪水のため、被災地へのアクセスはいまだに難しい。一部の地域にはヘリコプターでないと近づくことができない」と惨状を伝えています。

農業への影響も相当なもので、被害の大きかったカムムアン県では35000ヘクタール以上の水田に被害がおよび、サワンナケート県では27500ヘクタール以上の農地が水没したようです。

ビエンチャン・タイムズは、ラオス政府は水力発電用ダム計画を再検討し、当面、新規のダム建設への投資を見合わせると報じていますけれども、これでラオス政府が進める電力開発事業も停滞を余儀なくされました。

ラオスが水力発電を進めてきたのは、国土の90%がメコン川水系に含まれ、豊富な水資源を有するという、水力発電に適した自然環境を有していたこともありますけれども、近隣諸国のタイやベトナムの電力需要の増加も後押ししています。

更に、ラオス自身の急速な経済発展によって世帯電化率は、2005年の48%から、2015年には91%に上昇。ピーク時の電力需要も2005年の313メガワットから760メガワットと2倍以上に伸びています。

ラオスの民間電力会社は、急増する国内需要を満たすため、渇水期にタイや中国、ベトナムから電力を輸入する程なのだそうです。

ラオス政府は、電力不足の解消の為、新規のダム建設を進めるのみならず、既設ダムの堤体に穴を開け発電所を増設するリニューアル事業をも行っていますけれども、新規ダム建設が見直されるとなるとこうしたリニューアル事業にも少なからず影響が出る可能性もあります。

今回の決壊事故について、ラオスのソンサイ・シーパンドン副首相は「洪水はダムにできた亀裂が原因で発生したもので、被害者への補償も一般的な自然災害とは違う形になるべきだ」と、「特別補償」を求める方針を示しています。

また、事故原因を調査する委員会の設置準備も進められていて、世界銀行などの第三者も入る見込みだそうです。

今回の決壊事故は、やはり人災の面が強いと思いますけれども、ラオスのダム建設計画そのものも杜撰な面があったとの指摘もあります。

ラオスの水資源の開発・管理は、水と水資源法に基づき、2011年に新設された天然資源環境省(MONRE)が管轄しています。天然資源環境省は国内の国家水資源政策や行動計画を策定しているのですけれども、ラオスで建設されるダムに対し、ラオスの法律や政策を遵守させる責任を負っているのが、天然資源環境省内にある水資源環境庁(WREA)です。

ところが、水資源環境庁(WREA)は、建設および運転段階でダム事業を監視する予算や要員が欠如しており、更には「事業を許可しない」という権限も持っていません。

畢竟、ダム建設業者は往々にしてこれら規則を守らず、ダム建設にあたって影響を被る付近住民達への補償や緩和対策が不十分なまま次々とダムが建設されていくという実情があるようです。

水の流れが緩やかなラオスでは、1つのダムを建設するために広大な面積を水没させなければならないのですけれども、不十分な環境調査のため、貯水池の貯水量を維持するためだけにダムを建設したという事例も報告されています。

今回の決壊事故について、ラオス国内に事務所を置く日本企業関係者によると、現地では「ダムの建設のクオリティーが悪すぎて、こういう事態に対応できなかった」とみられており、ラオス政府が『設計の失敗』などの情報を集めているようなのですけれども、事故調査委員会に世界銀行などの第三者も入るのであれば、施工不良等の建設段階のミスのみならず、ラオス政府側のダム事業監視体制の不備についても指摘があるかもしれませんね。

ただ、それでも、韓国SK建設が主張するような、ダム決壊が天災というのは無理があり、莫大な補償を要求される可能性は大きいと思いますね。
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