今日はこの話題です。
8月10日と13日の両日、スイスのジュネーブで開かれた国連の人種差別撤廃委員会で、中国の人権状況について議論が行われました。
この中で委員の1人が「新疆ウイグル自治区で、少数民族のウイグル族が100万人以上、中国政府によって収容施設に不当に拘束されているという情報がある」と指摘して中国側に説明を求めたのに対し、中国の代表は「自治区では過激派の取締りと再教育に取り組んでいるが、指摘されたような収容施設は存在しない。中国の分裂を狙った根拠のない中傷だ」と強く反発しました。
中国は根拠がないと反発していますけれども、根拠もなくこんな話が出てくる訳がありません。
欧州文化神学学院のエイドリアン・ゼンツ研究員は、過去この強制収容所に収容されていた人に話を聞き、政府が公示した募集要項、政府招聘通知、建設入札、地域の予算編成書などの政府発表の資料から、強制収容所に数10万人から100万人強のウイグル族が収容されていると推定しています。
また、カナダのブリティッシュコロンビア大学で法学を学ぶ張肖恩さんは、衛星で撮影した画像を分析し、新疆ウイグル自治区にある21の収容所と疑われる施設を発見したとカナダ紙グローブアンドメールが報じています。
この発見について、新疆地域を研究するアメリカ・ワシントン大学ダレン・バイラー人類学教授は施設には公安の監視所や休養施設、広場などがあることから、現地政府が急務に対応したものではなく、中央当局が組織的に計画性をもって建設していると推察しているそうです。
収容所に収監された人達はウイグル文化、言語、信仰の放棄と同時に、共産党に従うよう指導を受けているとされています。
拘束された人の中からは「イスラム教を信じるべきではない。中国共産党と習近平国家主席を信じるべきだ、と言わされた」とか「足を吊り上げて、4日間、一睡もさせなかった」とか信じがたい証言も出ているようです。
ここまでくると思想弾圧ではなく、洗脳というほうが近いでしょうね
なぜここまでのことが行われながら、あまり話題にならなかったのかというと、やはり中国が徹底的に情報を遮断していたというのがその理由のようです。
中国現代史が専門で、ウイグル族の現状に詳しい中央大学の水谷尚子講師は、NHKの特番でこの件について問われ、「まさかここまでのことをしているとは国際的にも、あと裏がなかなか取れない話であったということもあって、人権団体も初めは、にわかに信じられなかったというのが1つだと思います。あと、やはり情報が相当遮断されていますので、今、新疆ウイグル自治区の状況を、例えば『ラジオ・フリー・アジア』などが一生懸命放送をしようとしても、今は中国では声紋で特定のアナウンサーなどの声などが分かるので、その『ラジオ・フリー・アジア』の方が中国国内に電話をかけたら、それでシャットアウトして取材を妨害するとか、いろいろしていまして、なかなか正確な情報が国外に出ていかなかったというのが1つの原因ですね」とコメントしています。
中国は、新彊ウイグル自治区での取り締まりに加え、より多くの政府機関が関与する「宗教中国化」キャンペーンや少数民族中国化キャンペーンも行っていて、共産党幹部による新彊ウイグル自治区の家庭への「ホームステイ」や夜間に自宅に帰ることを許可した軽犯罪者向けの「オープン」収容所など、共産主義思想を教え込むためにさまざまな手段が講じられているようです。
これらは新彊ウイグル自治区のイスラム教徒だけではなく、イスラム教徒が大半を占める回族も対象となっていて、アラビア文字やイスラム的な内装の使用が禁止されているそうですから、宗教弾圧をもしているとも言えます。
こちらの記事では、新疆ウイグル自治区のカシュガル市での中国当局による監視社会が綴られていますけれども、ヒゲを生やりたり、子供に「ムハンマド」や「メディナ」と名づけると警察に通報される可能性があるなどと、信じられないような記載で始まっています。
まるで、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」の世界です。
国連の人種差別撤廃委員会は、今回の件について、今月下旬までに報告書をまとめたうえで、条約に反する状況があると判断した場合には改善に取り組むよう勧告することにしているとのことですけれども、中国は無視するのではないかと思いますね。
こうした中国の人権状況については、昔から問題を指摘されてきました。EUは1996年から中国との人権対話を行い、人権問題を改善するよう訴えていたのですけれども、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは年々対話自体が形骸化してきているとしています。
実際、去年6月、中国の人権侵害を批判する国連でのEU声明が、ギリシャの反対で加盟28ヶ国の満場一致ができず声明が見送られています。
その理由として、EU各国は中国に経済援助を受けているから批判しにくいのだという指摘もされていますけれども、そうだとすると、中国のEUに対する影響度合いによって批判のトーンも変わって来るということになります。
今回の国連人種差別撤廃委員会の議論が、どこまで有効なものになるのか。少なくとも世界にこの事実を知らせることは必要だと思いますね。
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