今日はこの話題です。
8月16日、全米の350を超える新聞社が、報道の自由を訴える社説を一斉に掲載しました。
これは、自身に批判的な記事を「フェイクニュース」と非難し、一部メディアを「国民の敵」と断じたトランプ大統領に抗議するために、ボストン・グローブ紙が全米の新聞社に呼びかけて実現したものです。
各紙は共通して報道の自由の必要性を主張。ニューヨーク・タイムズ紙は「誤った報道を正すことはわれわれの仕事の核心部分にある。ただ、気にくわない真実をフェイクニュースと主張し、記者を国民の敵と咎めるのは民主主義にとって危険だ」と批判しています。
トランプ大統領が口にした「国民の敵」という表現は昔から使っていました。
2017年2月には「フェイクニュースメディア(失敗しているニューヨーク・タイムズやNBC、ABC、CNN、CBS)は僕の敵ではなく、アメリカ国民の敵だ!」とツイートしていますし、今年6月には「なぜFBIはフェイクニュースのメディアにたくさん情報を流しているんだ。FBIはそんなことするべきではないし、国民の敵のフェイクニュースのことだ、話をいいようにねじ曲げる。やつらに真実は関係ないんだ!」とツイートしています。
また、7月の米ロ首脳会談の際も「実際、ほとんどのニュースメディアは国民の敵だ」、「ロシアとの首脳会談は大成功だった。そう言わないのは、本当の国民の敵、フェイクニュースメディアだけだ」とツイートしています。
これらに対してアメリカの新聞社が一斉に反論記事を載せたという訳です。
けれども、それ以前にもアメリカのメディアはトランプ大統領に直接苦情をしていました。
7月20日、ニューヨークタイムズのサルツバーガー社主は、ホワイトハウスに招待されて大統領を訪問し、非公式に会談しました。
サルツバーガー社主は会談で、"フェイクニュース"という表現は、事実に反し有害だが、それよりも「ジャーナリストに『国民の敵』とレッテルを貼っていることの方がはるかに問題だ」と伝え「こうした言葉遣いは火種になり得る。ジャーナリストを今まで以上に脅かし、暴力につながる」と警告したそうです。
更に、サルツバーガー社主は、「他の独裁政権がトランプ大統領の物言いをジャーナリスト弾圧に利用している……命を危険にさらし、米国の民主主義の理想を破壊し、発言の自由と報道の自由という米国の特に偉大な輸出品を損なっている」と大統領に伝えたようです。
サルツバーガー社主のこれら発言は正論でありますけれども、重要な点を見過ごしてはならないと思います。
それは、ジャーナリストを弾圧しているのは独裁政権であり、トランプ政権ではないということです。トランプ政権が法を無視して、放送免許を剥奪したり、軍を投入して放送設備を差し押さえ、あるいは封鎖するならば、それは言論弾圧です。けれども、そうではなく、トランプ大統領は同じ言論の自由の土俵の上で、メディアを批判しているのですね。
トランプ大統領のツイッター上の発言は何かと物議を醸したりしていますけれども、重要な点がもう一つあります。それは、ツイッターを手にした大統領はマスメディアの一種でもあるということです。
5000万を超えるフォロアーを抱えるトランプ大統領のツイッターはそれだけでマスメディアに等しい影響力を持っているといえます。
その意味では、ネットもそうですけれども、オールド・マスメディアは、言論ツールを手にしたネットユーザーと、影響力のある大統領というメディアから挑戦を受け、メディア競争の時代に入ったのではないかと思うんですね。
言論の自由の土俵の上で戦う限りにおいて、言論弾圧は起こり得ません。自由と自由がぶつかった結果民衆がどれがよいか投票という形で判断を下す。それが民主国家です。
既に、メディアの信用低下も加速しています。アメリカの調査機関ピュー・リサーチ・センターの昨年6月の調査によると、メディアが自国にマイナスの影響を与えていると答えた共和党支持者は85%と、2010年の68%から大幅に増えています。
それにトランプ大統領自身の発言をよく聞いてみると、全てのメディアを十羽一絡げに「国民の敵」だと言っている訳ではありません。
上記の、FoxBusinessが報じている、トランプ大統領の演説では「I’m not against the media, I’m not against the press, But I am only against the fake news media or press.…… I’m against the people that make up stories and make up sources. 」と、所謂一般のメディアも記者も自分は敵にしていない。敵にしているのはフェイクニュースメディアとフェイクニュース記者だけだ、と分けて発言しています。
トランプ大統領のツイートをマスメディアの報道と捉えた場合、「全てのメディアは国民の敵だ」というのは、それこそフェイクニュースでしょう。真実を報道するメディアも記者も記事もないということですから。
けれどもトランプ大統領はそこを区別して発言している。
ならば、何がフェイクで何がフェイクでないのかを具体的に事例を挙げ、事実を積み上げて論じてみせることこそが言論の自由というものだと思いますね。
当然同じ話は日本のメディアについてもいえます。
今年3月30日、4月1日の両日に一般社団法人「放送法遵守を求める視聴者の会」がテレビ報道について、全国18歳以上の男女を対象に調査を行ったところ、「それなりにあると思う」が48%、次いで「たくさんあると思う」が25.7%と実に7割以上が「偏向報道がある」と答え、報道に不満を抱いていることが明らかになりました。
日本の安倍総理はトランプ大統領程ツイートしませんし、トランプ大統領ほど、特定の記事について反論はしない実に穏やかな対応に終始していますけれども、トランプ大統領のやり方は、世界的にもジワジワと浸透していく感じが個人的にはしますね。
先日、報道ステーションでトランプ大統領の演説で「私はメディアを国民の敵と呼ぶことにした」との字幕を付けたことがネットで騒ぎになっています。
というのもトランプ大統領の発言原文は「I call the fake news the enemy of the people」であり、フェイクニュースを国民の敵だ、としていたからです。
ネットでは、「日本国民全員が英語が聞き取れないと馬鹿にしているのか」とか、「だからフェイクニュースだといわれるんだ」などど炎上しています。
この字幕など、英語でやったなら、トランプ大統領から「フェイクニュースだ」と名指しで反論されるに違いありません。
いい加減、日本のオールドメディアも目を醒ます時が来ているのではないかと思いますね。
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