今日はこの話題です。



8月24日、自民党総裁選挙への出馬を表明している石破元幹事長は「地方創生、日本創生ということを実現する。これこそが日本国にとって最も必要なことで、わたしの政策の中心にこれを据える所存です……大都市や大企業が果実を生み出す、波及させるのではなくて、地方や中小企業が果実を生み出すことが肝要だ」と地方発の地方創生を政策の中心に据えると表明しました。

そして、訪日外国人について、2030年に年間8000万人を目指すとしたほか、中央省庁の地方移転を推進するとも付け加えました。

政策の中心が地方創生とは、国家ビジョンとしては器が小さすぎるように思います。

というのも、安倍政権は、数々の政策の一つとして、既に地方創生に取り組んでいるからです。

2015年、安倍政権は内閣官房に「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げ、地方創生を進めています。

具体的な政策としては、地方への「特区」の設置や、財政支援、政府関係機関の地方移転などを掲げています。

石破氏は、政策として「中央省庁の地方移転を推進する」としていますけれども、既に進めているのですね。その進捗はこちらで公開されていますけれども、文化庁、消費者庁など7庁を対象に進んでいるようです。

ただ、"庁"は移転できたとしても"省"まで移転できるかというと疑問が残ります。国会対応は勿論のこと、議員との折衝もあるでしょうから、皆が皆地方に移れるとも思えません。

まぁ、石破氏は地方創生担当相も経験していましたから、或いはその延長線上での政策をイメージしているのかもしれません。

けれども、地方創生といっても内政の話です。国家ビジョンとしては、それだけでは不十分だと思いますね。

では、その他の政策について何があるのか。

2017年3月、石破氏は国際政治学者の三浦瑠麗氏と対談し、外交・安保から経済政策まで思うところを述べています

そこで、外交安保について石破氏は、トランプ大統領になったことで、今までにないほど「損得」の概念がかなり強く出てくるだろうとし、集団的自衛権をどのように行使するかは、国家安全保障基本法で厳しく節度を持って定めるべきもので、憲法上の制約ではない、としています。

これは日本の安保は国家安全保障基本法でコントロールすればよく、憲法改正まで必要ない、ただ、トランプ大統領が国防費用の負担増を求めてくることには対応せねばならない。というものです。要するに今の枠組みのまま何とかする、というものですね。

また、経済政策については、永田町や霞が関からは地方の実態は見えない。ジャストフィットした政策でなければ効果は上がらない、としながらも、大胆な金融政策も機動的な財政出動もいつまでも続くものではないから、その間に体質改善(財政再建)を進めるべきだ。日本の経済価値は市場が決める。という考えのようです。

これも、今ある枠組みの中で何とかしようとする発想です。確かに金利や円レートは最終的には市場で決まりますけれども、経済全体を大きくするために政治が財政再建だけしかしないでは、日本経済を成長させるドライブには力不足でしょう。

先に述べた「まち・ひと・しごと創生本部」が打ち出した「長期ビジョン」を見ても、2060年を視野に据えたビジョンが「人口減少問題の克服」と「成長力の確保」です。

成長という言葉こそありますけれども、「成長力」を確保するとしているだけで、「成長する」とは言ってない。目標が2050年代にGDP成長率を年1.5%~2%を"維持"ですからね。確かに成長するとはいえないレベルです。しかも"人口安定化、生産性向上が実現した場合"と御丁寧に注釈までついています。本当に実現するのか、今ひとつ不安になってきます。

それでも、地方創生の為の一政策であり、国家を支える柱の一本に過ぎない、という位置づけであればまだ分かります。実際安倍政権では、その扱いですね。

けれども、石破氏はこれを政策の中心に置くという。やはり国家ビジョンとしては小さいと言わざるを得ません。

もしかしたら、総裁選で地方票を集めるための、単なる石破氏のリップサービスかもしれないという穿った見方も出来なくもありませんけれども、寧ろそう願いたいくらいです。

では、政策における石破氏の本心が何処にあるのか。

これについて、先に触れた、石破氏と三浦瑠麗氏との対談で、次の総理が目指すべき旗印は何かを問われ、石破氏は次のように答えています。
「私はサステナビリティ、持続可能性と、独立性だと思います。この国が50年先、100年先にも豊かで平和で存在しているために何をしますか、ってことです」
一言でいえば、"現状維持"です。その為の方法は、これまでの対談の内容からいけば、憲法や安保の枠組みを維持したままの財政再建、経済成長は市場にお任せ、といった考えのように見えます。

前にも触れた"戦略の階層"でみれば、やはり、今ある資産を付け替えてなんとかしようという"軍事戦略"、良く行っても"大戦略"レベルの発想にしかみえません。世界観、政策がない。

それに、"現状維持"したいといっても、世界情勢といった外部環境が激変する中では、これまで通りなどという考えでは、その"現状維持"すら出来ません。

今の日本が"現状維持"出来ているとするならば、それは安倍政権がビジョンと政策を出して日本をドライブしているからです。

トランプ大統領との良好な関係を背景に日米安保強化をしつつ、ダイヤモンドセキュリティ、自由で開かれたインド太平洋戦略を描き、アメリカを巻き込んでいます。

安倍総理は、トランプ大統領のアドバイザー的立ち位置を確保している数少ない国家首脳ですし、経済もアベノミクスで引っ張っています。少なくとも石破氏のいう"市場任せ"ではありません。

けれども、ここまでやっても経済成長率は1%か2%そこらなのですね。安倍総理くらいやって、ようやく"現状維持"できるのが今の日本が置かれている立場です。

21日、菅官房長官が札幌市内での講演で、日本の大手携帯事業者には競争が働いていないと指摘し、携帯電話の料金は今より4割程度下げる余地があると発言した途端、大手携帯電話事業者の株は急落しました。

政府要人の発言はそれだけ重いのですね。これは逆に言えば、ちゃんとした国家成長戦略を打ち出せば、いくらも経済成長する余地があるということです。

それを考えれば、石破氏のいう最初から"現状維持"を目標とし、結果は"市場任せ"では、現状維持など夢のまた夢、停滞どころか衰退に向かうのではないかと心配でなりません。

残念ながら、現時点で石破氏を日本国総理にするのは難しい。例え、石破氏が次の次を考えていたとしても、今の考えを変えないのであれば、筆者は賛成することは出来ないですね。
 

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