今日はこの話題です。
8月21日、韓国政府が開城工業団地の南北共同連絡事務所の開設のために、精油製品約80トンを北朝鮮に搬出していたことが明らかになりました。
自由韓国党の鄭亮碩議員が関税庁などから入手した資料によると、6~7月に石油と軽油8万2918キログラムが北朝鮮に搬出されたとしています。
中央日報によると、北朝鮮に持ち込まれた石油と軽油は、電力を生産するための発電機の運転に使われ、その発電機も北朝鮮に搬入されたようです。
現在、北朝鮮への原油輸出については国連安保理決議によって「全ての石油精製品の直接又は間接の供給、販売又は移転を禁止する」となっています。発電機も対象になっています。
この制裁について、「30日ごとに北朝鮮に提供した石油の総量を国連に報告する」、「石油の提供に当たってはこれまでの国連安保理決議で禁止された当事者が関わっていないこと」、「民生品に限定されていて、かつ、年間の総供給量が50万バレル以内であること」の条件が揃った場合のみ、制裁対象から外れることになっています。
それ以外には、南北間の軍通信線の復元、離散家族面会所修理目的については制裁免除となっています。けれども、中央日報によると、北朝鮮に搬出した製油製品のうち、離散家族面会所用は180キログラムだけで、残りはすべて開城に運ばれたようです。
石油80トンは約580バレル相当ですけれども、アメリカ等は今年上半期だけで、北朝鮮が制裁上限を超える石油を入手したと見ているとしています。
南北共同連絡事務所については、6月1日に行われた、南北高官級会談で、近い内に開城工業地域に当局者が常駐する共同連絡事務所を設置すると合意していますから、それを口実に石油を搬出したということでしょう。
鄭亮碩議員の指摘に対して、韓国政府当局者はこれに対して「開城に送られた物資は、北朝鮮に滞在するわれわれ韓国側の人員が使用するので制裁対象ではない。北朝鮮へ経済的利益は与えない」と答えていますけれども、鄭亮碩議員は「韓国側の人員が使うとしても、連絡事務所が北朝鮮にあるので問題だ……制裁関連の協議が終わる前に、執行を先走ったものだ」と批判しています。
確かに事務所を設置するだけなら未だしも、その費用を韓国が持つ道理はありません。設置に関わる物資が制裁対象に引っかかることがあり得るからです。実際、今回は事務所設置を口実に、石油が北朝鮮に持ち込まれている訳です。
当然、この事はアメリカが問題視しています。
8月19日、アメリカ国務省は「南北関係の改善は、必ず非核化の進展と正確に歩調を合わせて行わなければならない」と警告、更に23日には国務省のヘザー・ナウアート報道官が定例ブリーフィングで「韓国は北朝鮮側に物資やエネルギーなどを提供しているが、北朝鮮制裁違反か」という質問を受け「それら全てに目を通したい」と回答しています。
消息筋は、「南北間で合意した事業は共同連絡事務所だけではなく、道路・鉄道の連結など幾つかあるため、ナウアート報道官の言葉には『それら全てを注視したい』という意味も込められている」と指摘していますけれども、アメリカは韓国の独断専行を快くは思っていないことが分かります。
実際、アメリカ国務省は7月23日に「北朝鮮への制裁と執行措置に関する勧告:North Korea Sanctions & Enforcement Actions Advisory」を出して警告しています。しかも御丁寧に韓国語版も用意しているという徹底ぶり。付け加えれば翻訳版には、中国語、ロシア語、フランス語、スペイン語もあります。
中国語、ロシア語までついているということは、これらの国に対する警告の意味合いも含んでいるかもしれません。
実際、8月4日、ポンペオ国務長官はASEAN関連会議に出席するために訪問したシンガポールで「中国とロシアについて北朝鮮に対する国連安保理制裁に違反している」と非難し、「北朝鮮が核兵器を放棄するまで北朝鮮に対する圧力を緩和すべきでない」とする見解を述べていますからね。それだけ周辺国の制裁破りには警戒しているということです。
韓国が対北朝鮮制裁の足並みを乱し続けるならば、アメリカとていつまでも警告だけで済ませるとは考えない方がよいかと思いますね。
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