今日はこの話題です。
9月7日、アメリカのトランプ大統領は対中制裁関税の第3弾について「早期に発動する可能性がある」と記者団に語りました。
対中制裁第3弾は、年間輸入額2000億ドル相当の中国製品を対象に25%の追加関税を課すというものなのですけれども、既に国内の手続きを終え、トランプ大統領の決断待ちの状態です。
ただ、トランプ大統領は、制裁について「中国次第になる」と、様子を見る姿勢を示しながらも、同時に「私が望めば、さらなる2670億ドルの発動も短期間で準備できる」と第4弾となる中国からの全輸入品を制裁関税の対象にする考えにも言及しています。がっつりディール(取引)してますね。
加熱する米中貿易戦争ですけれども、統計にも数値として表れてきました。
9月8日、中国税関総署が発表した8月のアメリカからの輸入は、前年同月比2%増どまりの133億ドル(約1.5兆円)と、伸び率は7月の11%から大幅に鈍化しました。ところが、対米輸出は前年同月比13%増の443億ドル。対米貿易収支も310億ドルの黒字と前年同月比19%拡大し、単月として過去最大となりました。
トランプ大統領が目指す貿易赤字解消に逆行しています。
その理由として、第3弾の通貨関税を前に駆け込み輸出が広がった影響だとみられています。
米中は互いに7月6日から340億ドル分、8月23日から160億ドル分の製品に25%の関税を上乗せしました。中国は既にアメリカからの輸入の3分の1に追加関税をかけていて、車などの輸入が減っているようです。
中国の8月の対米黒字が駆け込み需要のせいなのだとしたら、もしトランプ大統領が今月以降に第3弾の制裁関税を発動すれば、その黒字も大きく圧縮を余儀なくされると予想されます。
アメリカは9月6日までに、第3弾となる2000億ドル分の輸入品への追加関税について、産業界からの意見公募を行っています。
その結果、4100件を超える意見が寄せられ、課税対象となる照明機器や鞄、自転車、果物など消費財を扱う企業や業界団体が「コストが上がる」と、こぞって反対を表明しているのですけれども、その中には、アップルとインテルも含まれています。
アップルは「提案された追加関税は幅広いアップル製品に影響する」と主張。例として腕時計型端末「アップルウオッチ」、イヤホン「エアポッズ」、小型コンピュータ「マックミニ」などを挙げ、インテルは「デジタルプロセッシングユニット、通信機器、プリント回線基板、ルーター、光学ケーブル」などに害が及ぶと指摘。部品が調達できなくなれば「第5世代の通信規格など我々の次世代技術の発展を抑えかねない」と懸念を示しています。
中国は世界に消費財を売って儲けていることはいうに及びませんけれども、アメリカも対中制裁関税の対象品を広げれば、これら消費財にも掛かることになります。
現在発動している対中制裁関税500億ドルの輸入品のうち消費財の比率は2%しかありません。けれども、第3弾の2000億ドル分が発動すれば、消費財の割合は33%、第4弾以降の残り全輸入品が対象になれば、その比率は60%にもなります。
ここまでくるとアメリカとて無傷ではいられません。アメリカ国内の消費者の家計を直撃します。
けれども、トランプ大統領は強気の姿勢を崩しません。
9月8日、トランプ大統領は第3弾の追加関税の対象にアップルの製品が含まれたことについて「無関税にする簡単な方法がある。中国ではなくアメリカで生産することだ……いますぐ新工場の建設に着手せよ」とアメリカ国内での生産を強く迫りました。
けれども、生産側にしてみれば新工場をつくればそれで、生産移管が完了するかというとそんな簡単な話ではありません。必要な部品の調達や輸送の問題は勿論のこと、同じ品質で作る為にはそれなりの準備と調整期間が必要です。
インテルは反対意見書の中で「関税の影響を受ける製品や部品は中国以外で調達できず、調達先を別の場所に移すのはコストがかかりすぎる」とし、アップルは「貿易収支は製品をどこで組み立てたかで計算している。製品に組み込んだアップルが生み出した価値を反映していない」と反論していますけれども、まぁそうでしょうね。
アメリカが第3弾、第4弾の対中制裁関税を発動し、中国がそれに報復関税を掛けるとすると、その辺りから本格的な我慢比べが始まると思います。輸出入額からいけばアメリカの優位は動きませんけれども、アメリカの世論がどこまで我慢してくれるのか。中間選挙を間近に控え微妙な舵取りが要求されそうですね。
コメント