今日はこの話題です。



9月21日、ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国政府が来週後半に再開される予定だったアメリカとの貿易閣僚級協議を取りやめると報じました。

これは、トランプ政権が中国に第三弾の追加制裁を行うと表明したことを受けてのものですけれども、米中貿易戦争は益々激しさを増してきました。

けれどもアメリカは平然と更なる圧力を強めています。

9月20日、アメリカ国務省は、対ロシア制裁法に違反したとして中国共産党中央軍事委員会で装備調達を担う装備発展部と、李尚福部長に対して、アメリカの金融機関との取引の禁止や、国内の資産を凍結するなどの制裁を科すと発表しました。更に、国務省はロシアの国防や情報機関に関する33の個人と団体を新たに制裁対象に加え、S400の導入を検討しているインドやトルコを念頭に、ロシアからの兵器の購入などを避けるよう警告しました。

国務省によると、軍事委の装備発展部は2017年にロシア製の最新鋭戦闘機「スホイ35」10機。18年に地対空ミサイルシステム「S400」に関連する装備をそれぞれ購入したとしています。

対ロシア制裁法とは8月2日に成立した法律で、以下に概要一覧の図を記しますけれども、従来ロシアに対して課していた経済制裁を強化および新規追加、そしてその解除が更に困難になるという厳しいものです。

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対ロシア制裁法では、ロシアの軍事・情報部門との取引を制裁対象に定めるとの条項があり、今回の制裁はこの条項に基づくものです。

これにより、装備発展部はアメリカの金融システムから排除。銀行口座が凍結され、金融取引ができなくなります。また、李尚福部長はアメリカ国内の試算が凍結されます。

装備発展部は中央軍事委員会の直属機関で、中国人民解放軍の装備部門を一元管理する機関です。その口座が凍結されるということは、人民解放軍の装備・武器調達に著しく支障をきたすことが予想されます。

アメリカ国務省は「ロシアに対する制裁を強めるためであり、ほかの国の軍隊の能力を損なう意図はない」と説明していますけれども、中国の喉元にナイフを突きつけるような手並みは流石です。

この措置に中国は反発。

21日、中国外務省の耿爽報道官は「中国はアメリカの無礼なやり方に強い憤慨を表明する……アメリカのやり方は、国際関係の基本的なルールに違反しており、米中関係と軍どうしの関係を大きく損ねた……直ちに誤りを正し、制裁を撤回するよう強く求める。さもなければ、悪影響の責任はアメリカが負うことになる」と制裁の撤回を求めました。

更に、耿爽報道官は「中国は今後もロシアとともに、両国の指導者の共通認識を実行に移し、戦略的な協力をさらに高いレベルへと発展させていく」と、ロシアとの軍事協力を今後も進めていく考えを示していますから、この通りであれば、制裁は簡単に解除されないであろうと思われます。

アメリカが貿易だけでなく、軍事に関わる金融でも締め付けを始めました。本気ですね。

最近のワシントンでは官民、保守リベラル問わず、中国との対決がコンセンサスとなってきたとも伝えられています。

9月上旬、ワシントンのシンクタンク「ウィルソン・センター」が、全米25の主要大学を対象として1年以上の調査を行った結果「アメリカの主要大学は長年、中国政府工作員によって中国に関する教育や研究の自由を侵害され、学問の独立への深刻な脅威を受けてきた」とする学術報告書を発表しています。その骨子は次のとおり。
・中国政府の意を受けた在米中国外交官や留学生は事実上の工作員として米国の各大学に圧力をかけ、教科の内容などを変えさせてきた。

 ・各大学での中国の人権弾圧、台湾、チベット自治区、新疆(しんきょう)ウイグル自治区などに関する講義や研究の内容に対してとくに圧力をかけてきた。

 ・その工作は抗議、威嚇、報復、懐柔など多様で、米側大学への中国との交流打ち切りや個々の学者への中国入国拒否などを武器として使う。
この報告書作成の中心である若手の女性アメリカ人学者、アナスタシャ・ロイドダムジャノビク氏はこうした工作の結果、 アメリカの大学や学者が中国の反発を恐れて「自己検閲」をすることの危険をとくに強調していたそうです。

米海軍大学教授として長年、米中関係を研究してきた日系アメリカ人学者のトシ・ヨシハラ氏は「これまで考えられなかったことが実際に考えられる状態となりました」 と語っているそうですけれども、こうした実態が公式の学術報告書として発表されるようになったこと自体、今のアメリカ政界の空気をよく表していると思います。

事実、今の対中貿易関税制裁については、はトランプ政権以上にアメリカ議会が強硬な措置を望んでいますからね。少なくとも彼らが納得する収まり処を見つけない限り、米中貿易戦争は中々収まらないと思いますね。
 
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