今日はこの話題です。



9月22日、西アフリカのナイジェリア沖でスイスの貨物船「MVグラールス(MV Glarus)」が海賊に襲撃され、船員12人が拉致されました。

貨物船は、ナイジェリアの商業都市ラゴス(Lagos)から南部の産油都市ポートハーコート(Port Harcourt)に小麦を運搬していたところ、ボニー(Bonny)島の南西およそ45カイリの水域で海賊に襲撃されたとのことです。

船を操業するスイス海運「マッセル・シッピング(Massoel Shipping)」によると、海賊達は長い梯子をよじ登り、有刺鉄線を切断して貨物船に侵入。船内の通信をほとんど全て破壊した後、乗組員19人のうち12人を拉致したということです。

マッセル・シッピング社は関係当局に海賊襲撃を通報し、拉致された船員らの安全かつ迅速な解放に向けて専門家を招集したと説明しています。

また、スイスの外務省報道官は、CNNの取材に対し、襲撃された船の乗員にスイス人はおらず、国籍については現時点で確認できていないとしています。

海賊といえば、ソマリア沖の海賊が知られていますけれども、世界の海賊関連情報を収集・発表している IMBは、近年国際機関と各国が海軍等の武力を用いて海賊対策を行ってきたことが功を奏し、ソマリア沖・アデン湾の海賊活動が減少していると報告しています。

一方、海賊達は警備の強化された海域を避けてその他海域へと活動範囲を広げ、ナイジェリア沖のギニア湾での海賊被害が増加。昨年は60人超の船員が拉致されたとされています。

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ネットでは、よりによって、重武装"中立"国家であるスイスを襲うとはどういう積りだという書き込みがありますけれども、内陸国であるスイスには正式な海軍というものはありません。

その代り、陸軍の中に船舶部隊というものがあり、主に国境をなすレマン湖とコンスタンス湖に配置されています。その主力は10から20隻の哨戒艇であり、大掛かりな戦力ではないのですけれども、有事の際はライン川を遡行する大型商船を徴用し、武装することになっています。

こちらのサイトにスイスの軍事力について簡単に説明されていますけれども、軍人の数は予備役を含めると、その数はスイス国民の約10%に達します。

兵役は、20才で 21週間の基本訓練、21才から 26才まで毎年4週間の再訓練、合計280日が軍務期間です。予備役は現在27才から30才までですけれども、1962 年までは60才、1995 年までは50才でした。

また、全てのスイス軍人は小銃を自宅に保管しています。金曜日の夕方、週末を自宅で過ごす多数の兵士は、迷彩服に背嚢を背負い、戦闘用自動小銃をむき出しのまま持っているそうです。

もちろん銃は電車内にもそのまま持ち込んで、座席に立てかけるのですが、他の乗客はそれを気にも止めなそうですから、どれほど軍が生活の一部として溶け込んでいるのか分かるというものです。

更に兵役義務者は予備役終了後、個人装備一式を軍に返さなければならないのですけれども、この時、代金を払えば銃を持ち帰ることも可能。十年ほど前では、制式銃は日本円に換算し約1万円、拳銃は約5千円だったそうです。これがいわゆる民間銃で、国内に約140万丁あり、兵役中の若者が家庭保管してある軍用銃が更に50万丁あります。

とんでもない武装国家です。

スイスはこうした民兵制を取っている関係上、軍の最高幹部、空軍を除いて専門の軍人がいません。将校も志願制となっています。志願者はより長期の再訓練を繰り返し受け、訓練のための休職期間は会社が給料を払うそうです。

その反面、民兵制度では、軍で組織運営を学ぶことができるという利点もありました。例えば銀行員、あるいは一般企業の幹部になろうとする者はみな志願で将校となり、組織運営を習うそうです。

また、そうした軍隊経験を通じて、退役後も異なる企業にあっても軍隊仲間がお互いに助け合ったり、会社設立や幹部のポストが空席になった際に仲間を招いたりします。

スイスの元連邦司法・警察大臣のクリストフ・ブロッハー氏は高射砲隊大佐出身です。彼が司法大臣になったとき、その官房長として軍隊で彼の下士官であったエーベルレを任命しています。

スイスの新聞では、人間関係を示すのによく軍隊時代の両者の出会いと階級とが記されるそうですから、民間であっても、軍隊を軸とした強固な人間関係が維持されている国だともいえます。

そんな国の貨物船を襲撃された。スイス外務省は、襲撃された船にスイス人はいないとしていますけれども、国籍確認は出来ていないようですし、放置することはないと思われますし、強固な人脈を元になんらかの措置を行うのではないかと思いますね。

続報を待ちたいと思います。
 
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