今日はこの話題です。
9月19日、イギリスの小型衛星開発企業サリー・サテライト・テクノロジー(SSTL:Surrey Satellite Technology)は、衛星軌道上に存在するロケットや人工衛星の残骸「スペースデブリ」を軌道から取り除く為のデブリ捕獲実験に成功したと発表しました。
これは、ESA(欧州宇宙機関)が進めている、最大8トンの宇宙のゴミ撤去を目指す「クリーン・スペース・プロジェクト」の一環の実験で、イギリス・サリー宇宙センターが主導する企業や研究機関などの共同体が実施しました。この団体には航空宇宙大手エアバスやフランスのアリアングループなどが参加しています。
実験には、欧州連合によりスペースデブリ除去実験用としてナノラックスが開発した「リムーブデブリス」衛星が使用されました。この「リムーブデブリス」は、親機となる100キログラムほどの人工衛星に、捕獲実験用の2機のターゲット超小型衛星、網式捕獲装置、銛式捕獲装置、デブリ落下促進のための帆を搭載しています。
「リムーブデブリス」は2018年4月にスペースXのドラゴン14号機に搭載され、国際宇宙ステーションに運ばれ、6月20日に国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」から宇宙空間へ放出されました。
最初の実験は9月16日に実施されました。まず、親衛星が捕獲ターゲットとなる超小型衛星「DS-1」を放出。「DS-1」はバルーンを膨らませてサイズを拡大します。
その後2~3秒後、「DS-1」が親衛星から7メートル離れたタイミングで、親衛星が網を放出し、ターゲット衛星を包みます。網の端にはおもりが取り付けられていて、モーター駆動のリールが作動することで網が閉られます。
網で包まれたターゲット衛星「DS-1」はそのまま速度を落とし、地球に落下して大気圏で燃え尽きるという寸法です。
ターゲット衛星を網で包む一連の動作は、親衛星から撮影されていて、ターゲット衛星に向かって展開した網が巻き付き、回転しながら包み込む様子が捉えられています。
網によるデブリの捕獲は世界初で、イギリス・サリー大学・サリー宇宙センター(SSC)のグリエルモ・ アギレッティ所長は「網の仕組みは単純に聞こえるかもしれませんが、宇宙ごみのかけらを宇宙空間でつかまえるために網を使うことは複雑で、計画や設計、調整に多数の年月を要しました」と述べています。
網を使ってスペースデブリを回収する方法については、2012年1月のエントリー「プラネテスに舞うテザー」で紹介したことがありますけれども、JAXAが昨年1月に宇宙ステーション補給機「こうのとり6号機」を使ったスペースデブリ回収実験を行っています。
残念ながら実験は、宇宙ごみを模擬した重さ20キロの円筒形の装置「エンドマス」が放出できず、失敗に終わりました。ただ、電界放出型電子源(FEC)から電子を放出し、「こうのとり」機体で電子を収集することには成功しています。
今回、サリー・サテライト・テクノロジー社が実験に成功したのは、JAXAの「導電性テザー方式」ではなく、網で包んで重くして自由落下させる方式ですけれども、スペースデブリ回収の一つの方法を成功させたという意味では大きな一歩だと思います。
サリー・サテライト・テクノロジー社は、今後、2番目の実験としてターゲット超小型衛星「DS-2」を放出してLIDAR(レーザー測距装置)とカメラによるナビゲーション実証を行い、更に、親機からアームを展開して銛を突き刺す実験を行うとしています。
一連の実験後は、親機から帆を展開して速度を落とし、リムーブデブリス衛星もろとも大気圏に再突入して燃え尽きる予定になっています。ISSへの打ち上げから最大で1年半ほどでミッション終了としていますから、あと1年くらいは実験が続くことになっています。
最後の実験まで成功を収めてくれることを希望します。
コメント