今日は感想エントリーです。



9月27日、訪米中の安倍総理は、ニューヨークで記者会見を行い、日米首脳会談で合意した2国間による「日米物品貿易協定(TAG)」締結交渉に関し、「この協議が行われている間は合意の精神に反する行動をとらない。日本の自動車に対して232条に基づく追加関税が科されることはないことを確認した」と述べました。

これで、TAG協議中はアメリカ政府による自動車関税の日本への発動は回避される見通しとなりました。

「日米物品貿易協定(TAG:Trade Agreement on Goods)」とは、モノの貿易を拡大するため、関税の撤廃・削減などを目指す協定のことで、FTAのような電子商取引や知的財産の保護といった経済ルール、サービスの自由化は含まず、モノの貿易に絞った協定です。安倍総理も「TAGは包括的なFTAとは異なる」としています。

日米物品貿易協定の締結までどれくらい時間が掛かるのかは分かりませんけれども、まぁ、ぶっちゃけえれば時間稼ぎが出来たというところでしょうね。

今回の合意について、財界は概ね好意的に受け取っています。

経団連の中西会長は「協定交渉の開始や、協議の間は日米共同声明の精神に反する行動を取らないことで一致したことを歓迎する。また、WTO改革やグローバルなルール形成に向けた協力の強化でも合意した意義は大きい。経団連としては継続的なミッションの派遣などを含め、アメリカとのコミュニケーションのチャンネルを拡大・深化させ、日米経済関係の強化に引き続き精力的に取り組む」とコメントしています。

また経済同友会の小林代表幹事は「アメリカ側の説明を見ると解釈が違う所もあり、合意には玉虫色の部分も若干残っているかもしれない。今後、まだまだせめぎ合いは続くだろうが、今回の結果は前向きに評価したい……自動車の関税が引き上げられた場合の影響の緩和や、国内の農産品の競争力をつけるという点でも、今回十分時間稼ぎはできたと思う」と、こちらははっきりと"時間稼ぎ"と述べています。

日米物品貿易協定が結ばれた場合、気になる物品の一つに農産品が挙げられるかと思いますけれども、現在、日本のアメリカ産牛肉に対する関税は38.5%ですから、これは引き下げの対象になることは避けられないでしょう。

ただ、既に、オーストラリアなどTPP加盟国の牛肉は最終的に9%まで下げることが決まっていますから、いずれは対応しなければならない案件ですし、安倍総理は「過去の経済連携協定で約束した内容が最大限であり、この日本の立場を今後の交渉で米国が尊重することをしっかりと確認した」と、TPPで日本政府が認めた水準までしか関税を引き下げない方針を示していますから、こちらにも成果があったということですね。

今回の協議は日本にとって悪くない結果だと思います。安倍総理の外交力は評価されえしかるべきですし、トランプ大統領との個人的な信頼関係も交渉の大きな力になったようです。

なんでも、会談で安倍総理はトランプ大統領に日本車の関税を当面上乗せしないよう直談判したところ、トランプ大統領は一瞬困った表情をした上で「シンゾーは信頼できるからやらない。他の国だったらやるけど」と答えたそうで、関係者は濃厚な「安倍・トランプ関係」だから得られた成果としています。

去年の1月のエントリー「トランプの素顔」でも触れましたけれども、トランプ大統領は意外と気配りする人物ですし、粗暴なように見せて、計算づくの駆け引きをやっていると思います。

特に今は、対中貿易戦争の真っ只中ですからね。無闇に敵を作って二正面作戦をするような真似は下策でしょう。ターゲットの相手以外は取りこんで、相手の補給路を断っていく。非常に戦略的な考えで動いていると思いますね。

トランプ大統領は26日の国連総会を締めくくる記者会見で「安倍首相と会ってきた。我々は日本と貿易交渉を開始している。日本は長年、貿易の議論をしたがらなかったが、今はやる気になった……私が『日本は我々の思いを受け入れなければならない。巨額の貿易赤字は嫌だ』と言うと、日本はすごい量の防衛装備品を買うことになった」と日米会談の成果を語っていますけれども、現時点では二国間交渉に日本を引き込んだことでよしとしているようです。

また、トランプ大統領との"友人関係"の濃さが関税交渉に結び付くかのように世界に見せつけたことも、地味に見逃せないことだと思いますね。

トランプ大統領は国連総会後の記者会見で中国の習主席とは今でも友人かと問われ、「たぶんもう友人ではないだろう」と答え、対中貿易関税について「あすにでも彼に電話して『やあ元気か。毎月数十億ドルの関税を払ってもらうが、気にしないよな』と言おう」と述べています。煽ってますね。

これはトランプ大統領が友人と認めたら優遇され、友人でなくなればどうなるか分からない、という印象を与えることになります。

対中貿易関税にしても、実際は議会からの突き上げの方が強く、強硬です。それでも、トランプ大統領は第三弾の貿易関税をあえて10%に"抑えて"みせている程です。

トランプ大統領の「友人ではない」発言は、非常に意味深です。中国お得意のロビー活動は先刻見破られ、ツイッターで反撃される始末ですからね。

習近平主席は焦っているかもしれません。今後の中国の出方には注目ですね。
 

コメント

 コメント一覧 (1)

    • 1. ものには順序あり
    • 2018年09月29日 13:01
    • トランプは一貫してます。就任演説かインタビューかは忘れましたが、「どの国も自国第一なのはわかるけど、世界の皆さん、アメリカをよろしく、アメリカをたてろよ、そしてみんなで仲良く一緒に発展していこう」というようなことを言っていたと思います。露骨な挑戦者が現れれば「かかって来なさい、とことんやろうぜ」となるのは当然です。
      安倍総理はトランプとの個人的なシンパシーもあると思いますが、トランプの考えを正確に分析し慎重に外交をしていると思います。
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